東京を代表する巨大ドヤ街「山谷」の歩き方 (2010年)

台東区

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ドヤ街・山谷を抱える浅草の北側一帯は、製靴業などの皮革産業の集積地帯でもある。靴やベルト、カバンといった革製品の加工場や革漉き工場などが下町の住宅地に紛れて点在している。

そんな山谷の一角にある「玉姫稲荷神社」では毎年4月と11月の最終土曜・日曜に「靴のめぐみ祭り市」が開催される。玉姫稲荷神社は靴の神様として地元民に信仰されている神社だが、そのすぐ隣にはホームレスの野営場と化し、周辺には早朝から泥棒市が立つというアングラ感満載の玉姫公園がある。

普段はヤバイ雰囲気で一般ピープルが近づくのにはちょっと躊躇いがちになりそうな場所だが、この祭りの時期だけは別。神社の境内や周囲で靴やカバンなどの革製品が割安で販売されるために沢山の買い物客が訪れるからだ。

ホームレスのオッサンやオバハンがたむろしているこの付近の街並みも、祭りの時期には普通に家族連れなどでいっぱいになる。ここぞとばかり激安価格で革靴やカバンを買い求める客が獲物を狙う獣のような目で品定めをしている。

神社の境内に入ると革製品を販売する業者のテントと買い物客でごった返して大変なことになっている。あたり一面靴の入った箱だらけ。皮の匂いがたちこめ、なんとも靴祭りらしい。

革製品の販売に留まらず、足の健康相談などを無料で行うスペースなんかもあり、健康がとても気になる爺さん婆さんが行列を作っていたりする。

しかし笑えるのがオリジナルの「靴神輿」が作られている事である。すこぶるでかい革靴と地球儀。これは神輿なのかどうか怪しいけど、ある意味とてもわかりやすいです。

革靴と地球儀が男神輿だったら、女神輿にはでかい王冠の中にシンデレラの靴ときた。無駄に豪華である。この二つの靴神輿が街中を練り歩くらしい。やっぱり変な神輿だと思うけどきっと凄く真面目に作っている。だって靴の神様だもん。

他にも境内で歌を披露する謎のアイドルグループ「巫女ガールズ」の告知看板も。本当、無駄に気合が入りまくっている。

「玉姫神社に祈りを込めて」…というオリジナルソングまで用意しているらしい。堂々の新曲発表。

この広い東京の中でも山谷の玉姫神社だけのために結成されたというある意味超レアなアイドルグループだったりする訳だが、それも年に二回の祭りの時しか見られない。3人のプロフィールには年齢が書かれておりません。近所のおばちゃんとかそういう手抜きではなくちゃんとどっかの芸能事務所から呼んでるみたい。

ライブイベントを見ようかと思ったけどタイミングが悪かったので結局見ずに帰ったけどちょっと後悔。こんな感じだったらしい(→詳細

境内の一番奥には古靴供養行事の会場が置かれている。ここが玉姫稲荷神社の祭りにおいて最も特徴的な場所。参拝者が履き古した靴を持ってきてこの場でお焚き上げしてもらうのである。

古靴お焚き上げ会場は既にスタンバイOKの状態。神棚の手前には既にお焚き上げの炎が猛々と上がっている。

会場の隅の方に目をやると…物凄い数の古靴がうず高く積まれているではないか。何人分あるのか数え切れません。

この靴の山はアウシュビッツ収容所ではない。これだけの靴だらけの光景を見ると匂いが凄まじそうだが、この後は丁重にお焚き上げされて灰になりましたとさ。

普段はアングラ感の強い山谷界隈だが、11月最終土日の「靴のめぐみ祭り市」の他、ほぼ同じ日にいろは会商店街でも「あしたのジョーのふるさと祭り」が開催される。山谷の街がにわかに熱くなりそう。

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