茶畑に囲まれた住宅地の中にある知られざるアーケード街!狭山市北入曽「中原商店街」が渋い

狭山市

埼玉県狭山市…西武線で新宿から片道50分、池袋から片道約40分の距離にあり、周辺の入間市などと並んで首都圏屈指の茶どころ、狭山茶の一大生産地であると知られる街だが、香ばしい事件好きな当取材班の中ではひたすら狭山事件の印象が…(以下省略)

狭山市 入曽

やってきたのは西武新宿線で狭山市駅の一つ手前にある「入曽駅」。かつて都心から埼玉の農家の為に肥料となる糞尿を積載した「黄金列車」が走っていた事でも知られる西武鉄道だが、この辺に運搬してたんでしょうかねえ…ともかく所沢から先は田舎臭全開で、特にこの入曽駅周辺あたりは茶畑も多く、アグリカルチャーな雰囲気が満載である。

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入曽駅近くにある自販機の側面には「色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす」と書かれていてのっけからお茶の街のテンションが高い。狭山産緑茶ペットボトルを買って飲んだがどう「とどめさす」なのかが分からん。こんなのどかな地域に何をしに来たというと、駅から離れた住宅地にぽつんとレトロなアーケード商店街があると聞いていたからだ。

狭山市 入曽

通常アーケード商店街と言えば「駅前」もしくは「大規模団地に近接」という条件が何となくあるものだが、今回目指す商店街はそのどちらにも当てはまらない。「中原商店街」といい、入曽駅から北東方向に1キロ少々離れた場所に位置している。ひとまずそちらへ向けて歩くと途中で「広沢製茶」という業者の茶畑がある交差点の前を通るので、ここを左折。

狭山市 入曽

茶畑を除くと殆どが住宅地ばかりで、とりわけ見るようなものもない。本当にこんな場所にアーケード商店街なんかがあるのかと不安にもなる。人口の多い団地などが近くにある訳でもない。狭山台団地というのが北側にあるが、そこからわざわざ買い物に来るほど近距離でもない。

狭山市 入曽

狭山事件の現場にも関わりが深い「不老川」(としとらずがわ)を渡った先の路地を右へ。この道をひたすら進んでいけば良いらしいが、車のすれ違いも気を遣うような細道しかなく、さらに不安になる。左手には一面の茶畑。なかなか凄い光景だと思うが、そこが埼玉というだけで見向きもされない。不遇だ…

狭山市 入曽

住所は狭山市北入曽。ひたすら一軒家しか続かないローカルな路地を進み続ける。これまで東京近郊で訪れた寂れアーケード街の中でも別格のわかりにくさがあると思う。しかし、その商店街は確かにこの道沿いに存在していたのだ。

狭山市 入曽

最後の角を曲がって500メートルちょいの所で、右手に駐車場が開けて左手には「長寿庵」という蕎麦屋、その先にアーケード街の入口が見えてくる。これか…

狭山市 入曽

それにしても、先日行った保土ヶ谷のチベット笹山商店街のアーケード街も、入口左側が蕎麦屋の「長寿庵」だったな。何か法則性でもあるのか?

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これが狭山市北入曽に存在する「中原商店街」である。確かにアーケード街となっているが、全長は50メートルもない。「虹のひろば」とサブタイトルが付けられているが、虹のような華やかさは微塵もない。分かりづらい道中といい駅からの距離といい、完全に地元民向けのそれである。

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ただ、アーケード街に掛けられていたのは虹ではなく、これまた商店街の古めかしさを盛りたてるようにびっしりと張り巡らされた万国旗だった。寂れた商店街に万国旗はよくあるパターンであるが、このようなあまりにローカル過ぎて周辺半径1キロ圏内の客しか相手にしなさそうな激ローカルな空間で万国旗をやられるとギャップが凄い。

狭山市 入曽

商店街の入口から近い側の蕎麦屋、婦人洋品・手芸店、それから酒屋あたりは現役で営業していて、昔ながらの個人商店の佇まいを残している。

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しかし商店街の奥の方まで入っていくと、かなり廃業した店が目立っていて、半分以上はシャッターを下ろした状態。看板だけ残っているので何屋さんかくらいは分かるが、八百屋と肉屋、中華料理屋あたりはもうやってなさげだな…

狭山市 入曽

ここも営業しているのかしてないのか不明な焼鳥&中華料理店。「今日も一日お疲れさま」で始まる手書きのセリフも場末の空間に一輪の花を添える。持ち帰り用カウンターの目隠し蓋に探偵事務所の張り紙がベタッと貼り付いているんですが…

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鮮やかな万国旗とは裏腹に右肩下がり感が尋常ではない昭和の商店街。そんな中でただ一軒だけやたらとテンションが違う床屋がある。「理容室ちくま」である。街の散髪屋の割には店の玄関周りがアーティスティックな置物で囲まれていて、ちょっと異様。

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「とこやのミニ見にギャラリー」と銘打って、場末の街の寂れた商店街の一画に、現代芸術の息吹が吹きこまれているのである。

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古タイヤと擬石で塗り固められた怪しげな盆栽風オブジェもあって、そのこだわりっぷりは床屋のそれとは思えないテンション。まあ、弄れる客の頭が無ければ、他のものも弄りたくなるのが人情というやつでしょうか。

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自作のポストには毎日配達に来る郵便局員さんに心のこもった感謝のセリフが書かれていて、どこぞの電波住宅の刺々しさとは真逆のアットホームさを感じさせてくれます。

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…と思ったら「ほうちょうのとぎ いたします お持ち下さい。」との一文が。散髪もアートも包丁研ぎもこなす街の何でも屋さんと化そうとしているのだろうか。これは引き続き経過観察する必要がありそうだ。

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このアーティスティックな床屋の看板は中原商店街入口向かいの駐車場にも置かれている。これだけ個性的な床屋なら面白そうだと思って一瞬中に入ろうとしたが、そもそも切るだけの髪の毛も無さそうなので、やめた。

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…という訳で、こんなに駅から離れているのにしっかり生きてるアーケード街「虹のひろば 中原商店街」。そもそも狭山市に来る用事も思いつかない…とか言ってる場合じゃありませんよ。いつもと違う散歩道に入曽の街は如何でしょう。駅から徒歩20分です。



 

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