日本最大の歓楽街・新宿歌舞伎町、風俗店やホストクラブが密集する歌舞伎町でも最も怪しい中心地帯…目印はヤクザとホストしか周りに居ない「風林会館ビル」のすぐ南西、あまりにも薄汚い路地裏の奥に、中国上海の国家特級厨師を持ったシェフが居るという超穴場的上海料理店「上海小吃」がある。
戦後の焼け野原の時代から、血で血を洗うマフィア抗争は日本・韓国・台湾・中国と国境を跨いでこの歌舞伎町の中心地で延々と繰り広げられてきた。そんな物騒な街の路地裏にまたしても足を踏み入れる事になろうとは何の因果か。一歩中に入ると、そこは歌舞伎町の九龍城砦。
使われているかどうかも分からない廃屋のような佇まいを見せる店舗の入口、その周辺には配線がむき出しになったままぶら下がっている。配電盤には幾重にも張り付けられたビラと某かの意味を込めたタギング。
一応の法治国家日本にもこのようなカオスは厳然として存在する。
前回「新宿センター街・思い出の抜け道」と看板が掛かっている場所があったが、この路地裏は表通りと抜け道の間の一画にあたる。面積はさほど大きくないが密集率が半端ではない。恐らく戦後のドサクサが今でも続いている場所の一つなのだろう。
戦後の新宿には非公然で売春行為が行われていた「青線」が数カ所存在していた。その一ヶ所は有名な「新宿ゴールデン街」なのだが、最盛期にはゴールデン街の青線が道路向かいの風林会館近くまで伸びていたと言われる。その延長線上にあるのがこの怪しげな一画だ。
ビルの谷間の路地裏を見上げるといつ建てられたのか分からないくすんだコンクリートの雑居ビルから明かりが漏れている。完全に時代から取り残されたような佇まいを見せる一帯。そこに華やかさは微塵もない。
目的の中華料理店「上海小吃」とは別にもう一軒「叙楽苑」という店もある。こちらも真っ赤な階段と提灯を見るなり中国系の店である事は明白だ。こんな裏寂れた路地裏の奥に二軒も本格中華料理店がひしめいている様は、大陸からの有象無象を飲み込んで膨れ上がった歌舞伎町の歴史そのものである。
「上海小吃」の看板がある玄関口から店内が見える。しかしどうやら入り口はここではない模様だ。というか、店自体がこのへんの小さな雑居ビルの部屋を複数持っていて、来客の多い少ないに応じて各部屋に割り当てているようだ。
で、店員や厨房が常駐しているのは路地の中程の辺りの一室となる。見た目が厨房の裏手から入るような形になるが大陸の人々はそんな細かいこと無問題アルネ。早速お邪魔するアルヨ。
ちなみにこの店に限っては予約の電話を入れても殆ど意味がないので注意しよう。電話を掛けても片言の日本語で適当にあしらわれるだけなので、早い時間であればぶっつけ本番で行っても構わない。中国人はとにかく大雑把だ。
狭苦しい店内とは裏腹に、国家特級シェフがいるだけあって、メニューの数も600種類以上あるというとんてもない店だが、以下は我々が食べたメニューのごく一部。
豆腐の細切り・香菜拌干絲アルネ。豆腐とは思えないプニプニ感。味付けが素晴らしい。
牛筋牛鞭。牛スジとペニスの煮込み。箸で持ち上げてもらっているものは牛のちんこである。しかしグツグツに煮込まれて完全にただの海綿体となっており食感はゼラチンそのものなのであった。
四本足はテーブル以外なら何でも食べるのが中華クオリティ。それが見事に体現されている。
鳩。日本では平和の象徴だかなんだか言われる鳥でおおよそ食料にはならないが、中国人なら何でも食べるアルネ。そのまんま残った頭とくちばしが妙にリアルであるが、現政権の将来を暗示しているような気がしてなりません。鳩が友愛…w
そしてメインディッシュに上海蟹。食べるのには根気が要ります。蟹にがっつきながら青島ビールを喉に流し込みます。
ちなみに上海小吃オリジナルの書き下ろし漫画が店のトイレやホームページでも見られるので要チェックである。自虐的で笑えた。
実は映画「不夜城」のロケにも使われているし結構メジャーな店だったりする。
やたら下町風味な店構えだが、普通に飲み食いすると4~5000円程度の予算が必要である。そこは特級シェフの技術料もあってのことか。しかしまあ、ここまで容赦ない本格中華はなかなかそこらの店で食える代物ではない。鳩や牛のちんこに限らず蛙や犬やサソリなど食える食材の豊富さも類を見ない。
東京の中国人文化を知るのであれば一度は訪れてみるべきだ。朝の6時までやってるし。