町工場と古い民家が未だに残り地味な下町風情が漂う中央区湊界隈。最寄りは日比谷線八丁堀駅か有楽町線新富町駅。どちらもすこぶる地味過ぎる駅だ。
区立中央小学校、鉄砲洲児童公園に隣接して建つ鉄砲洲稲荷神社。鎮座1170周年を誇る古社で、5月に奉祝大祭が予定されている。
児童公園から神社を見ると物々しい説教が書かれていて目をひく。
「生命は親様から来たのだ 御先祖を供養するのだ」
バカボンのパパなのだ、と脳内で声が反芻するならもれなくオッサン世代。
境内の手水舎にも説教が。普段の暮らしでついつい忘れてしまいそうになる心の平穏。威張るのも欲張るのも妬むのも怒るのも良くないと。世間では公共の電波に乗って真っ黒な感情が渦巻いていますが皆様如何お過ごしでしょうか。
鉄砲洲稲荷神社の境内は非常にこじんまりとしている。かつての江戸湊の入口に鎮座し長年信仰を集めてきた神社。年始には境内で寒中水浴が行われ、その年一年の無病息災を願い沢山のフンドシ姿の男が寒空の下で湯気を立てて発奮するのだ。
拝殿の右奥にこっそりと浅間神社へ続く道が隠れている。
ビルに囲まれた境内の一番奥に立派な富士塚が置かれている。こうした富士塚は富士山から持ってきた溶岩を積み上げて作られる事が多いそうな。江戸時代から盛んに行われてきた山岳信仰だ。
富士信仰は関東の神社では比較的馴染み深いが、富士塚の上から富士山が見られなくなったりして年々衰退傾向にある。
鉄砲洲稲荷神社の正面の商店群は由緒ある古社の門前にしては寂れ方が激しい。
児童公園を挟んだ向かいには都バスの「湊三丁目」バス停がある。深川車庫前から東京駅八重洲口へ直通の路線が走っている。バス停の正面の家も相当古いが、どう見ても使われていない廃墟物件。
廃墟なのをいいことに公明党がポスター貼りまくり。待合のための善意の椅子が並べられているが、中にはドサクサ紛れに投棄したようなオフィスチェアも混ざっていててんでんばらばら。
「粋な下町鉄砲洲」と書かれた一軒の酒屋、その向こうには不自然な空き地と駐車場が広がっている。
地上げ屋にやられてしまったのか、その光景は傍から見てもかなり異様である。ここが「虫食いだらけでヤバイ」と聞いていた中央区湊二丁目の再開発計画地。一体この界隈はどうなってしまったのか。地区を訪ね歩く事にした。