止まらない東京一極集中。地方は過疎化が止まらず、東京とその周辺地域でのみ人口が増加している昨今、その内訳は別に元来の日本人だけとは限らない。日本に出稼ぎや留学、或いは政治難民として逃れてきた身分の不確かな外国人世帯もまた増えている。それらの新住民が寄り集まるのが、東京都心に電車で1時間以内で行ける郊外地域で、とりわけ都心からの距離の近さと反して地価が安い埼玉県南部には数多くの外国人コミュニティがある。
その中でもトルコ系クルド人が数多く住んでいるのが埼玉県蕨市とその周辺の川口市で、ここが「ワラビスタン」と呼ばれている事は当サイトでも過去に何度もお伝えしてきた事である。しかし埼玉の懐の深さは尋常ではない。八潮市にもパキスタン人が大勢住んでいて、こちらもまた「ヤシオスタン」と呼ばれているらしい。
埼玉県八潮市=ヤシオスタン
埼玉県八潮市はすぐ隣に「東京の掃き溜め」足立区と境を接しており人口は約8万6千人。2005年につくばエクスプレス八潮駅が開業してからは駅周辺の土地にポコポコとマンションが建っているが、同時に地価の安さ故に隣の足立区からはみ出た産廃業者やスクラップ工場、アウトローやオウム真理教まで流れ込んでくる物騒な田園地帯となっていて、ごく最近では山口組と神戸山口組との抗争で市内に住む暴力団幹部の自宅を標的とした発砲事件が起きている。そういう土地だ。
八潮駅北1キロ程の位置に八潮市役所や一応ながらの街の中心となっている「八潮市中央」地区があり、この市役所に近い一帯に何故かパキスタン料理レストランが3軒も近接している。とりあえず中心商店街っぽい所に来ましたが…とても23区の隣とは思えない閑散ぶり。北関東あたりの乾いた空気すら漂う。ちなみに公共交通機関で来るとなるとTX八潮駅もしくは草加駅東口からバスという事になるが、自家用車がないと正直暮らすのは厳しいです。
商店街にはちらほら食い物屋もあるっちゃあるが現地民向けのドカチンっぷり極まるラーメン屋や定食屋、弁当屋がある程度です。大学進学率を赤(高い)と青(低い)で色付けした市町村別学歴マップを見ると隣の足立区以上に真っ青になっているのが八潮市なので致し方ありません。ご確認ください。
道端の野良広告で八潮の土地が売りに出されているのを見かけますが坪単価は40万くらいで、その気になればサラリーマンの給料でマイホームに手が届くレベルとなっているのですがTX沿線でも一向に人気がない土地が八潮市なのです。秋葉原まで20分以内で出られるのに…
八潮市役所と隣接する八潮中央公園のあたりが最も盛り場らしい一画になっていて北関東風情漂う居酒屋やスナックがちらほらと見かけられるが…
そこに通り掛かるのは地元の年寄りとパキスタン人ばかり。おお、いるいる。これがヤシオスタンか。パキスタン人は敬虔なイスラム教徒でもあるので、特徴的な民族衣装に身を包んでいる男性をよく見かける訳だが、ここ八潮に関しては普通の格好をしている人も多い。
ただ道端で姿を見かけるパキスタン人は男性ばかり。女性は必要時以外は一切外出しないのだ。パキスタンがイスラム教に厳格なあまり女性の人権が無いに等しいのはよく知られた話。本国じゃ女性の無断外出や不倫などを理由に名誉殺人が行われている現状がある。頭をタリバンに撃ち抜かれても女性の人権の為に若くして戦うマララ・ユスフザイさんを輩出するような、女性には超絶厳しいお土地柄なのでお察し下さい。
八潮中央公園前に早速「アルカラム」というパキスタン料理店を見かけた。どう見ても現地人向けの店構えだが、こう見えても八潮のパキスタン料理店は色々と雑誌でも紹介されているらしく、食べログの口コミ情報だけはやたらと多い。
店の近くにある同店舗の看板。創業は1997年かららしい。なぜ八潮にパキスタン人が多いのかというと、八潮という土地は中古車販売が盛んで、その中でも中古車輸出業に多くのパキスタン人が関わっている事が理由だ。日本の中古車輸出はパキスタン人が牛耳っていると言われる程だというのだ。同じ埼玉だと戸田にもパキスタン人が多いし、中古車輸出が盛んな富山県伏木港近くの射水市もまたパキスタン人コミュニティがある。あと最近は大阪市西淀川区にもパキスタン人コミュニティが出来ている。
アルカラムの目と鼻の先にもう一軒、パキスタン料理店「カラチの空」がある。こちらはかなりド派手な佇まい。パスポートの要らないパキスタン領土はこちらですが、どちらの店舗も女性客が顔を隠さなければならないとか、そういう堅苦しいルールはないのでそのまま入りましょう。
店の表に「インドパーク料理」と書いてあったのが気になったが、パークというのはパキスタンを意味するらしい。インドとパキスタン、隣り合っている両国が核実験をやり合って威嚇し合うなど超絶仲が悪いのは知っての事だが、やはり日本で「パキスタン」と言ってもピンと来ない人向けに「インド」の国名を入れたりしているのだろうか。それにネパール料理店も大体「インド・ネパール料理」と入れるし、バングラデシュ料理店も同じだよな。
店を訪れたのは昼過ぎだったが、広々とした店内の割には我々の他に全く客が居ない。あまつさえ店のテレビはインドの衛星放送チャンネル「Zing」で放送しているインドではお馴染みのミュージカル風音楽PVが流れている。インドの女性ダンサーの妖艶な踊りはパキスタンのテレビでは絶対見られないものだろう。そんな音楽PVを眺めているうちに、店内のテーブル席はぞろぞろとパキスタン人男性客のグループで埋め尽くされていった。
しばらくするとテーブルに運ばれてきたのはマトンビリヤニとナン、それにパキスタンではメジャーな肉シチュー「ハリーム」等など。ミニサラダ付きなのはいいですが殆ど炭水化物ばっかりですね。ちなみにパキスタンは先進国でもないのに何故か患者数が世界10位以内に入る糖尿病大国。さもありなんといった所だ。しかしスパイスが大量に使われていて食が進む進む。あっという間に平らげてしまいましたよ。
さらに少し離れた八潮中学校西側の住宅地にも「シャージ」というパキスタンレストランとハラルフード専門店を兼ねた建物がある。先述した「アルカラム」「カラチの空」に加えてこちらが三軒目。ちなみに戸田にもパキスタン人が集まるモスクがあるが、八潮のパキスタン人はどこで礼拝しているのかと近隣を見回したが、この辺ではなく同市南部の浮塚地区に「ジャミアマスジド八潮」という施設があり、そちらで礼拝しているようだ。
カラチの空
営業時間 11:30-23:30 無休
埼玉県八潮市中央1-7-11
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