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【台東区】東京最古のコリアタウンらしい「東上野キムチ横丁」、火事で一部焼失していた件

広い東京中探しても戦前、もしくは戦後間近の頃から発生し、現存する「コリアタウン」というのは数えるほどしかない。目立つところだけを挙げれば江東区枝川一丁目、荒川区三河島、足立区西新井、台東区浅草、そして台東区東上野の「キムチ横丁」くらいだろうか。ネット上では東上野のコリアタウンは“東京最古の”と記されている事が多いが、これらの中でどこが本当に最古なのかは甲乙つけ難いものがある。

上野駅から歩いて5分も掛からない駅チカな立地ながら「知る人ぞ知る」的なキョーレツな佇まいで現代日本に生き残る奇跡的昭和遺産、それがキムチ横丁である。我々が初めて訪れた2008年の頃と比べると随分周りが真新しいオフィスビルやマンションに取り囲まれ、様子が変わってきた。

東上野のコリアタウンの歴史的経緯について説明しておく。戦後に発生したアメ横周辺の「御徒町商店街」の露天商が東京都による強制退去を受け、仕事の場を無くした朝鮮人露天商の一部によって昭和23(1948)年に当地を借地し移転「国際親善マーケット」としてスタートしたのが始まりとされている。つまり今年で70年もの歴史を歩んできた事になる。

このキムチ横丁の一画を取り囲むように在日コリアン産業の一つとなっているパチンコメーカーやパチンコ関連企業のオフィスが密集する通称「パチンコ村」が形成されており、東上野はまさに東京における在日コリアン社会の縮図が見られるリアルな土地として健在である。

東上野キムチ横丁の一部の焼肉店が火災で営業休止中

東上野二丁目15番地のほんの狭い一画に十数軒もの焼肉店や韓国料理店、韓国食材店が密集するこの一画、古い木造の建物がぎっしり集まっている中で昔ながらのガスコンロで焼くタイプの焼肉屋ばかりで、いつか火災が起きてしまうのでは…と危惧していた中、今年9月12日に本当に火災が起きてしまっていた。

それもキムチ横丁の数ある店舗の中で最も味わい深い店構えを誇る、こちら「京城苑」が火事による被害で長期休業を余儀なくされている。これはショックである。しかし建物の外観自体は辛うじて無事。店内が焼けてしまったという事らしい。

我々が訪れた時にはちょうどリフォーム業者が内装工事の最中だった。京城苑の玄関口に貼り付けられた紙には「近隣の火災により」という一言が付けられていた。どうも火元はここではなく、すぐ裏側に隣り合っている「富士吉」からの延焼でやられてしまったらしい。

店の横には京城苑の再開を願うファンからの寄せ書き…と思ったら「株式会社マルハン 京城苑を応援する会一同」と書かれていた。マルハン…ああ、お察しでしたね。ここはパチンコ村・東上野ですから。

建物外側だけは残っているものの中身が丸焼けになってしまっているせいで内装のリフォームが完成するにはまだ結構時間が掛かるように思える。建物を壊して再建するという選択肢は無かったのだろうかね。いずれにしても今年中に再開できるかどうか…と判断する。

で、京城苑の脇の路地から奥に入っていくとその裏手にある「富士吉」…ここも完全に営業休止中になっている。どうやらここが火元と思われるのだが、客に対するメッセージが書かれた貼り紙の類は見当たらず。ここも再開の予定が立つ気配が見られない。

そして富士吉のすぐ右隣にあるのが「東京苑」、ここも京城苑と並ぶ凄まじい佇まいのレトロ焼肉屋だが、ここは延焼の被害がそれほどでもなかったようで、割と早い時期に営業を再開した模様だ。

逆に言えばびっしり可燃物だらけのキムチ横丁の路地で火事があって、よくこれだけの被害で済んだもんだなと感心する他ない。もし9月ではなく乾燥する冬場だったらさらに厳しかったのではなかろうか。

この路地裏の両側も隙間は2メートルあるかどうかといったところ。これは建築基準法的に建て替えも難しいのでは。真向かいもクソでかいオフィスビルに建て変わっているし、ひょんなきっかけでこの土地もいつか無くなってしまうかもと考えそうになる。

キムチ横丁の西隣のコインパーキングだった空き地は「上野イーストタワー」という25階建てのオフィスビルがそびえ、その上層階はホテルとなっている他、オフィスには日立グループが入居している。さらにキムチ横丁のすぐ南側にあった「松涛園」という焼肉屋の建物も取り壊され、真新しいマンションに生まれ変わっているのだ。

その気になれば住めるらしい「東上野キムチ横丁」

新宿の思い出横丁だって3分の1が丸焼けになる火災を経験しているし、こういう戦後のドサクサ的昭和空間がこの先も生き続けられるかどうかは未知数である。こう見えて、ちょいちょい個人宅が混じっているところが凄い。

しかもこの路地裏、アパートとして普通に貸し出されている箇所があって驚いた。いくら駅チカでもこのロケーションで家賃65,000円、保証金5ヶ月分はかなり強気な設定に思える。しかもトイレ無し物件…そこの共同便所を使えってか…

路地の突き当たりの韓国食材店?の事務所脇から伸びる狭い階段のところに「ゲストハウス」の貼り紙があった。ここの建物の4階が外国人バックパッカー向けの安宿になっているようだ。まさか、ここで民泊やってるんですか…最近小綺麗になった西成のドヤよりもエクストリームな環境である。

すっかり焼肉屋と韓国料理屋しかないと思っていたキムチ横丁だが、もう一方の路地の中程には「琴瑟館」というお好み焼き屋もある。ここも普通にお好み焼きやもんじゃが喰えるだけではなくコリアン系の食い物が色々出てくるらしい。「琴瑟」の読みは“きんしつ”のはずだが、なぜか平仮名で“きんひつかん”と振られている。質屋を「ヒチヤ」と読む関西っぽい言語感覚なのが気になる。

さて、今回の東上野キムチ横丁での昼飯は「馬山館」のカルビ山盛り定食(1900円)である。上質な中落ち牛カルビに食欲をそそる濃いめの焼肉タレが絡んでいる。小皿にはキムチやナムルが5種類とわかめスープ。白飯はおかわり自由。

やはりここもガスコンロでジュージュー焼くオールドスタイル焼肉。食い終わった頃には服の袖口が焼肉臭まみれになる。しかしこういう昔気質な焼肉屋が一番美味いと思うのは何故だろう。店内はパチンコ村に勤務するサラリーマンで満席になっていた。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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