主に多摩区や麻生区といった川崎市北部は、川崎区や幸区などの南部と比べて治安は良い方だという論調がまかり通っている。同じ川崎でも北部と南部じゃ別世界だと。しかしその論理を根拠に何となく安穏としていた感のある川崎北部民が衝撃を受けたのが、先のカリタス小学校の生徒を狙った登戸での「無差別殺傷事件」だ。
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養父母に育てられたものの長期引きこもりで自暴自棄になった末、51歳という高齢で、一方的な感情から養父母の実子が通っていた学校の、何の関係もない生徒やその保護者を次々と襲撃した末に自らの命を絶った身勝手な男の起こした事件。その生徒が通っていたカリタス小学校のある「カリタス学園」は、南武線中野島駅に程近い多摩川沿いのビミョーな土地に立地している。昭和36(1961)年からこの土地にあるというのだが、しかしまたなんでこんな所にあるんですか…
元関東連合・伊藤リオンも通ったカリタス小学校の真裏にある「市営住宅」
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登戸駅からカリタス学園行きのバスが往来する車道沿いを歩く。カリタス学園というのはカナダ・ケベック修道女会に端を発するキリスト教系の教育機関であり、幼稚園・小学校こそは共学だが中学・高校・短大は全て女子校。
日本の公立学校に外国人は馴染めない、そんな事情からハーフ・クオーターの生徒が比較的多く、ケベックというお土地柄もあってか特に英語・フランス語の語学教育に力を入れている、という話である。そもそも幼稚園の時点で子供の自主性を重んじる「モンテッソーリ教育実践園」である旨をアピールしている通り、規律と調和を何より重んじる日本的な横並び教育とは一線を画した教育方針である。ここの有名出身者にはタレントの中山エミリと、元関東連合の伊藤リオンがいる。
![いびつな絆 関東連合の真実 (宝島SUGOI文庫)](https://i0.wp.com/images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41q%2BTMrG4UL.jpg?w=1256&ssl=1)
伊藤リオンと言えば杉並区宮前じゃなかったのかよと思うのだが、元々は川崎に縁があったようで、サッカーチーム・ヴェルディ川崎(当時)のユースチームに所属していた事とか、カリタス小学校に通っていたという話が出てくる。杉並区というのは母方の家がある関係で、小学校時代までは生活環境も良かったというが、両親の離婚後に杉並の公立中学校に入るようになってから荒れ始めたのだろう。
パナマ人の父の血縁から肌の色が違うという点も本人を苦しめる理由になったのだろうが、そもそも私立進学率の高い地域で公立中に入らざるを得ない事情があったというのは、やはりその後の人生を狂わせる要素が大いにあるのだろう。その点では今回の事件の犯人である岩崎隆一との共通点を感じる。
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しかし今回お届けするのはあくまで川崎市多摩区中野島という辺境の地にある、とある団地のお話。あの無差別殺傷事件の直後、警察官が常に張り込んでいてピリピリと警戒感が立ち込めるカリタス小学校からすぐ真裏の場所に、かなり大きめの「市営住宅」が存在している。
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「市営中野島多摩川住宅」という川崎市の市営住宅である。多摩区中野島五丁目の多摩川沿いに14もの中高層棟が集まる、結構な規模の団地だ。よく見ると多摩川を挟んだ向かいの調布市・狛江市に跨る一帯にも「多摩川住宅」というドデカい団地があるんですが、ここいら、さしずめ多摩川リバーサイド団地ゾーンですね。
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中野島多摩川住宅は総戸数は883戸、川崎市北部地域では有数の市営住宅と言っても良い。ここに加えて西側の六丁目にある「市営中野島住宅」の268戸を合わせると、かなり凄みが出てくる。
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当方が「市営住宅出身者」として申し上げると、これだけ団地だらけなら小中学校が荒れたりしないものかとつい危惧しそうになる。ちなみに中野島多摩川住宅の住民の子は市立中野島小へ、中野島住宅の場合は市立下布田小に通う事になるようだが、中学校は全て市立中野島中学校に進学する。
カリタス学園よりも古くからある中野島の「市営住宅」
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中野島の市営住宅に住んでいるのはほとんど高齢者ばかりのようだが、14棟の住宅の建築年度は1987~1995年までである。めちゃくちゃ古い、とまでは言えない、中途半端な築年数である。東京に通う中産階級が暮らすような「ベッドタウン」とも呼べない、これまた中途半端な地域になぜこれだけの市営住宅があるのだろうか…
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そこで気になって、国土地理院のサイトから昔の航空写真を引っ張り出してみると、昭和54(1979)年時点で相当な数の棟割長屋風の建物が縦横びっちり広がっている様子が分かる。明らかにここの市営住宅群の前身である。カリタス学園がこの地に開校した昭和36(1961)年にまで遡ってもその建物が確認できたので、この市営住宅はカリタス学園よりも歴史が長いということがわかった。
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ちなみに「中野島 団地 事件」といった不穏なキーワードを並べて検索してみると、2013年1月に9号棟1階で親子3人が無理心中をした事件と、2006年3月に近接する分譲マンションの15階から小学3年生の男子児童が当時41歳の男に投げ落とされて殺害されるという事件がヒットする。特に後者の「男児投げ落とし事件」は発生当初動機不明だった事もあり世間に衝撃を与え、かなり騒がれていた事もあって事件や犯人像への考察を行うネット記事がいくつも出てくる。犯人の男は無期懲役刑となり今なお塀の中だ。まあ、いずれにしても陰気臭くてかなわん土地だ…
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東西に分かれた中野島多摩川住宅の中央に位置する児童公園「中野島児童公園」には割と多くの子供達が遊んでいる姿を見かけた。公立校ではなく、目の前のカリタス学園に通う団地の子はどのくらいいるのかも気掛かりであるが、令和の時代を逞しく生きる川崎ノースサイド・団地キッズはどんな人生を歩むのだろうか。
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団地の東側には川崎市の保健福祉局「多摩老人福祉センター」の建物もある。ここの前に市バスのバス停があって、登戸駅方面に出る事ができる。
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団地住民に寄り添う、街の医療の拠点「中野島診療所」。川崎の北の外れで、なおかつ多摩川を都県境にした当地で、近所にはまともな総合病院もない中で、住民の健康を守るには必要不可欠な場所である。
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かれこれ半世紀以上はこの場所に市営住宅があって、かなりの世帯の人間が暮らしているはずなのに、団地とメインストリートであるバス通りを結ぶ道がまともじゃあない件も気掛かりだ。こんなクソ狭い田んぼとマンションの間の細道をチャリンコで颯爽と駆け抜けていく地元のおばさんに遭遇。
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そんな、色々と虐げられている感のある中野島の市営住宅住民にとっては悲願だったであろう、スーパー「いなげや川崎登戸店」が2015年4月に団地の東側に華々しくオープン、激安衣料チェーン「しまむら」付きという、なんとも貧乏暮らしが捗る展開に。まあ、中野島と言えば昔から「ジェーソン中野島店」がありますけどね…