サラリーマンとホームレスの楽園・新宿中央公園 (2)

東京都庁の目と鼻の先、サラリーマンとホームレスの楽園・新宿中央公園からの日常風景を観察すべく、公園内を引き続き散歩していくとしよう。
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新宿中央公園の土地は元は西新宿副都心と同じく淀橋浄水場の跡地の一部と、隣接している十二社熊野神社の境内地の一部を都市計画として公園に作り替えたものだ。1968年に東京都立の公園として開園し、75年に新宿区に移管されている。


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公園には意味不明なモニュメントも置かれていてさぞかし文化的な佇まいを装っているが、少し公園内を見回すと必ずどこかにホームレスの姿がある。ホームレス率の高さでは東京でもトップクラスの公園なのだ。
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ホームレスと見間違えそうになったが違った。江戸城を築城した太田道灌の山吹伝説に基づいて作られた久遠の像だ。なぜ新宿中央公園にあるのかは不明。
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誕生して40年少々の公園だが、それにしては森が鬱蒼としていて目の前にそびえる都庁の建物を覆い隠しそうな勢いである。夏でも暑さが和らいでいて、ホームレスにもサラリーマンにも絶好の休憩場所だ。
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生活のために必要な水が比較的楽に確保出来る新宿中央公園では、ホームレスのオッサンが森の樹木にロープをかけて堂々と洗濯物を干している光景を拝む事が出来る。これぞまさに我が物顔だが、文句を言う人間もいないし、行政もいたちごっこの現状に諦めて何も言わないようだ。
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東京のど真ん中、新宿の森に潜む大自然の一軒家。土地の高い東京ではある意味最高の贅沢である。恥を忍びさえすれば、ワーキングプアだので苦しんでいる月収20万そこそこのくせに家賃8万も9万もするワンルームうさぎ小屋に住んでいる独身男よりも、よほどお気楽極楽な生活かも知れない。
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新宿ナイアガラの滝の裏側は「新宿白糸の滝」。豪快な水しぶきを挙げる「ナイアガラの滝」とは対照的に静かに水が降り注ぐ。溢れる水は命の源。ホームレスもサラリーマンも別け隔てなくその生命を潤す。
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そしてどこからともなくやってきて繁殖したであろう亀の生命をも潤し続けていた。この白糸の滝に10匹程の亀が生息しているが「カメデス」と甲羅に書かれた亀は当然居なかった。
日向ぼっこしようとブロックの上に登ろうとする亀は何度も一生懸命に腕を立てるが、自らの重みに堪え切れず再び池に嵌ってしまう。まるで人の生き様を見ているようでならない。
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亀もサラリーマンもホームレスも、毎日与えられた日常を淡々とこなしているだけに過ぎない。ふと穴の開いた昼下がりのひとときに思い思いの時間を過ごす人々。みな一人一人違う仕事を持ち違う運命を辿るが、ここで眺める限りは亀と人間との違いがよく分からない。
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新宿ナイアガラの滝の脇には、ホームレス達の集めた膨大な量の空き缶が山積みになっている。一見ホームレスも好き勝手やっているように見えるが、彼らの生活も仕事も厳然とルールが存在し、互いの縄張りを冒してはならない等、殊の外こういう場所の暮らしも気楽ではないのである。
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そんな訳で、色んな人種が集まる新宿中央公園は昼下がりの人間観察にももってこいの場所だ。この広い東京砂漠、人間だけは腐る程いるのだから、いざ失う物がないくらい何もかも失くしたとしても、人間観察を生き甲斐にすればまた何か立ち直れる事があるかも知れない。

東京都新宿区
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