【美女木の美女はフィリピーナ】知られざる埼玉のリトルマニラ「戸田市美女木」で喰らうガチなフィリピン料理

戸田市

東京都内から荒川一つ挟んだすぐ隣にある「埼玉県戸田市」。都心からの距離に対して土地の値段がお安く、昭和60(1985)年の埼京線開通後、初めて鉄道駅が市内に開業した事で後発的に発展をしてきた街である。埼京線一本で池袋から約15分、新宿から20分で来れる(戸田公園駅からの場合)という地の利の良さで人口急増地帯になっている訳だが、満員痴漢列車の悪評高い埼京線に毎日乗って都内に通うという事はそれだけでも治安上のリスクを伴う。

都心からも比較的近い戸田市には、家賃の高い都内に住めないビミョーな人種がこぞって移り住んだ結果、隣接する川口・蕨両市と並ぶ「埼玉貧民トライアングル」の一角を形成しており、1990年の入管法改正後、川口や蕨と同じく戸田にも外国人労働者が多く流入している。それで、市内北部の外れにある「美女木」にも、ちょっとしたフィリピン人街があるらしい。

戸田市北部という事で一応ながらの最寄り駅である埼京線北戸田駅で降りるが、ここから美女木の中心エリアへ行くには片道2キロ、30分近く掛かるので徒歩では厳しい。隣の武蔵浦和駅まで快速または通勤快速で行って、路線バスに乗る方が楽に行けるが、どのみち自家用車がないとキツい。

美女木に美女はいませんがフィリピンクラブならありました

先日「首都圏で最もコスパの良い街」として槍玉に挙げた戸田市美女木。鉄道駅からも遠いこの一帯にもびっしりと賃貸マンション・アパートが連なっており、満遍なくベッドタウン化が進んでいるが、この地域の幹線道路となっている新大宮バイパス(国道17号)沿いは都内からはじき出されたように工業地帯や倉庫街が密集していて、ブルーカラー臭が半端ない。

美女木という風変わりな地名ながら、美女どころかオッサンの溜まり場になりそうな店しか見かける事のない乾いた街並みに早速クラクラ来てしまいましたが、そんな美女木の新大宮バイパス沿いを歩けばドカチンオヤジの溜まり場となっていそうなフィリピンクラブ「セピア」のご立派な店舗がデデーン。ロヂャース戸田店の斜向かいあたりにありますね。

えー、これはもしかして「美女木の美女はフィリピーナ」というオチなのでしょうか。戸田では割と有名な盛り場のようで、ググってみると案の定社会の底辺御用達ネット掲示板「爆サイ.com」のスレが出てきて評判があれこれ書かれている始末。

2014年の時点で「おかげさまで10周年」と銘打って大感謝祭を開催していたので、今年2017年で13周年、つまり2004年にオープンした店っちゅうことでしょうかね。しかしここに来るにも往復のタクシーは必須のはず。鉄道駅の近い西川口の盛り場とは勝手が違う。

戸田市美女木で年中フィリピン料理が食える店があると聞きまして

そんな大箱ピンパブがロードサイドに鎮座する街、戸田市美女木には「フィリピン料理専門店」が存在している。都内で(土着的な)フィリピン料理専門店を探してもなかなか見つからない中、隣の埼玉には平然とあるわけだ。やっぱり凄いね埼玉。新大宮バイパス美女木交差点から北戸田駅方向に向かう県道79号沿いにある。

フィリピンには膨大な数がある個人経営のコンビニエンスストア的存在「サリサリストア」、東京のリトルマニラたる竹ノ塚や草加、金町といった街にも同様の店があるが、これだけ駅から離れた場所にぽつんとこの手の店が存在しようとは、ここに来るまで気づかなかった。

「アナスサリサリストア」に併設されたフィリピンレストラン「アナスカリンデリア」(Ana’s Carinderia)というのがここの店の名前である。

車が無ければ不便な場所柄だけあって店の駐車場もきちんと完備されている。しかし完全に英語表記しかなく日本人はまるで相手にされていない感丸出し。

とりあえずフィリピン飯が食いたい場合でも、サリサリストアの玄関から一旦中に入る事になる。店内に入ればのっけからフィリピン人の大好物である豚の皮を揚げたおやつ「チチャロン」の袋がびっしり山積みになっていた。フィリピンでも英語が使われるものの、タガログ語混じりなので「With SUKA」と書かれていてもスカって何だよと思うんですが、フィリピンでお酢の事をSUKAと呼ぶのだそうで、フィリピン人はとにかく酸っぱいもの好きなのである。

サリサリストアの店内には夥しい種類のフィリピン食材や日用品、惣菜パンなんかも売られている。同じくフィリピン人の大好物である孵化しかけのアヒルの卵・バロットなんかも当然ある。これだけ種類豊富なら利用する客も多いのだろう。

ちなみに埼玉県にいる在留外国人数は中国に次いで多いのがフィリピン人。約1万8千人が県内に暮らしている。この多くが戸田や川口、草加など埼玉県南部に多く住んでいるのだろう。先程の「クラブセピア」で働くピーナのお姉さんもそうだが、戸田市の工場地帯で働くフィリピン人が非常に多く、戸田市美女木あたりが埼玉の「リトルマニラ」になってしまっている。

そんな店内の奥にフィリピンレストランが。もっと現地感漂うものを想像していたが割と小綺麗になっていて、客も厨房のコックも全員フィリピン人。ウエイトレスはサリサリストアのレジ係の姉ちゃんが兼業している。壁に掛かったテレビから流れるのは恐らくインターネットラジオのフィリピン音楽か。

メニュー表を開けてみても英語表記しかないので、日本語しか分からない人間はここでお手上げとなる。タガログ語の独特な表記も混じっていて、事前にフィリピン料理の知識がないと楽しめないだろう。厨房のコックの兄さんは日本語が話せるが、ウエイトレス兼レジの姉さんは英語しか話せなかった。

とりあえずフィリピン料理らしいコッテリしたものを食おうとオーダーしたのは「シシグ」(Sisig)という豚肉(内臓肉含む)や脂身やら野菜やらを細かく刻んでその上から生卵を落として鉄板焼きにした料理である。やはり全体的に茶色い料理が多いのと、内臓肉が出て来る頻度が高いのがフィリピン料理の特徴。まさに土着民のザ・ソウルフードである。

それから「パンシット」(Pancit)と呼ばれるビーフンを用いたフィリピンでは定番の麺料理も一つ。パンシットも色々あるらしいですがこれは「パンシット・パラボック」(Pancit Palabok)という種類のもの。カレーのようなペースト状の黄色いソースと共にゆで卵やエビなどが具材として載るが、先程サリサリストアに山積みになっていたチチャロンや揚げ玉葱や刻みネギなんかも載る。混ぜて食うのがオススメとコックの兄さんに言われました。見た目もそうだが、味も割としつこくない。

で、食後のデザートは別腹でしょ?とばかりに店がオススメするフィリピン風かき氷「ハロハロ」も販売中。タガログ語で「混ぜこぜ」という意味。ミニストップにあるハロハロはこのフィリピンデザートから来ている。スペシャルバージョンは千円と随分強気な価格設定だが…

勢い余ってハロハロスペシャルをオーダーしたら食いきれない量でやってきました。甘納豆や小豆っぽいものから色の付いた寒天のようなもの、ドリアンのような果実、アイスクリームなんぞが適当にモリモリ盛られている。ああ、腹いっぱいだ。

フィリピン料理レストランは脂っこいと不人気ですが…

フィリピン人は相当な人口が日本に暮らしているにも関わらず、フィリピンレストランの数が滅法少ないのは、ひたすら炭水化物と肉と油しかなく野菜の少ない「意識低い系」の食生活と、そもそも脂っこくクセの強いフィリピン料理が日本人の舌に馴染まないからだろうと思っているんですが、都内にはそんな日本人向けに洒落た感じにアレンジしたフィリピンレストランがちらほらと錦糸町や西荻窪あたりにあるものの、現地人向けではない時点で「なんか違う」んですよ。

昔、武蔵小山の駅前飲食街りゅえるにあったガチな現地人向けのフィリピンレストラン「クシーナ」も再開発で姿を消してしまい、めっきり都内でガチなフィリピン料理を食える機会が無くなってしまった。

ところが戸田市美女木にある、こちら「アナス」は完全に土着的な味付けで徹底されてました。これは間違いなくフィリピンの庶民が食う「故郷の味」でしょう。これからは本場のエスニック料理は東京ではなく埼玉でしか味わえない時代が来るのかも知れない。

武蔵小山にあったクシーナ同様、ここでも日曜日限定で一人千円の食べ放題メニューもやっていて、フィリピン料理の知識に自信が無ければこの日に食べに来た方が面白そうだ。

Ana’s Carinderia

営業時間 [月-日]11:00-20:00 年中無休
埼玉県戸田市美女木2-1-12
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