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【川崎市】川崎の隠れたドヤ街「日進町」を歩く

川崎市や隣の東京都大田区はホームレスが多い事でもとても有名だが、実は寿町や山谷と同じような「ドヤ街」が存在することをあまり知られていない。それは川崎駅の隣、京急八丁畷駅近くに位置している。

京急八丁畷駅を降りた北側、東京への人口一極集中を受けて川崎市内であるこの街にも次々新しい高層マンションが建設されて風景が一変してしまっているが、東側に目をやると何やら怪しげな建物が視界に入る。あれが「日進町」の簡易宿泊所の一つである。

このドヤ街はこれまで見てきた「西成釜ヶ崎」や「山谷」、「寿町」と比べても明らかに違う特徴がある。ドヤが周囲のマンション開発でどんどん追いやられている様子を見られることだ。日進町はとても狭い範囲に30軒程度のドヤが密集し営業を続けているが、中には高層マンションが目の前にそびえるドヤもあって、見た目に奇妙である。

日進町界隈では、寿町のように労務者風のオッチャンがそちらこちらに歩いていたり、地区内に日雇い労働者向けの職業安定所的施設があるわけでもない。ただ普通の住宅地に昔ながらの「民宿風」の簡易宿泊所が並んでいるだけという、ある意味拍子抜けするような空間が広がっている。

日進町内にある、まるでゲートボール場にでも使ってるかのような「福祉センターグランド」の敷地に立てかけられた看板に、かろうじてこの場所がドヤ街であることを匂わせるものがある。

「福祉事務所より飲酒等による迷惑行為をしないよう注意があり気をつけましょう」

と書かれた「お願い」には「川崎ビジネス旅館組合」の署名がある。おそらく日進町のドヤの経営者による組合だろうか。

肝心のドヤなのだが、だいたいが木造三階建て程度のこじんまりした民宿レベルのものが多い。それに比較的見た目も清潔で、我々が西成等に持つようなドヤ街ならではのイメージとは全く懸け離れている。

しかし中にはそこそこ年季を漂わせるドヤの存在もあり。「全室テレビ付」の看板があるのはいかにも昭和っぽい。

出かけたのが祝日だったからかも知れないが道行く人も少なく街はひたすら閑散としている。他のドヤ街同様、住人の高齢化が激しく福祉アパート化しているという話もやはり耳にする。

日進町における典型的なドヤの価格帯は1600~2000円だが、中には比較的建築年度の浅い、ちょっとしたビジネスホテル的なものもあり、そういう所だと3500~4500円あたりの価格帯にまで上昇する。

もはやドヤ街という定義すら失われつつあるように、パッと見てもここが普通の住宅街としか思えない感覚に捕われてしまう。

日進町の発端は戦後に川崎駅前にあったドヤ街をスラムクリアランスでこの場所に移したとも言われており「日進月歩の発展を願って」というありきたりな縁起担ぎが町名の由来である。

日進町内にはドヤ一覧を網羅した地区案内図があちらこちらに設置されていて、どこに何があるのか様子が一目で理解できる。京急の線路南側にも若干数あるようだが、殆どのドヤが同じ地区に固まっている。

ドヤというドヤの窓が開け放たれているのは、部屋に冷房が置かれていないからなのか、単に換気のために開けているだけなのか。中から見える洗濯物は全て独居男性のものであると確認できる。

もっとも近年の大不況とやらで、神奈川県内をはじめとする工業地帯から「派遣切り」に遭って家賃を払えなくなったワーキングプアが日進町に流入しているという話もニュース記事に出ている。社会の目に付きにくい場所から確実に貧困の影が忍び寄っているのだ。ドヤ街の目の前を京急快特列車が猛スピードで疾走していく。この車窓から見える日進町の姿はほんの一瞬のことでしかない。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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