【川崎市】日本一空気が汚い場所と言われる川崎区「産業道路」を歩く(2009年)

川崎市川崎区

川崎市臨海部のガチなコリアタウン「おおひん地区」とその周辺。今度はセメント通り西側の浜町商店街界隈から産業道路沿いの道を再度散歩してみることにする。この界隈は地元出身HIPHOPグループ「BAD HOP」のメンバー達も「日本一空気が汚い場所」だと自称するほどだ。

川崎のコリアタウンの中心的存在「桜本商店街」からNPOアリランの家を通り過ぎてハナ信組の前の道に出ると、セメント通りには入らずそのまま道沿いに産業道路方向へ歩く。池上町群電前もそうだったが、この界隈は不法投棄を注意する看板がやたら多い。

浜町商店街のある路地へ入るが、一向に商店街らしい風情を見せない。寂れた焼肉屋や韓国風居酒屋なんぞがあちらこちらにぽつんとある程度の殺風景な街並みが続く。

産業道路に近づくといよいよ板金工場も姿を現し、ブルーカラーの街・川崎らしい風情を見せる。

結局商店街らしさを見せるものは、数店舗程度残る古びた個人商店、魚屋や喫茶店ばかりに留まり、あとは「HAMACHO」と書かれたネオンサインのゲートしかなかった。

ふと視線を挙げると、目の前のビルの屋上に「世界人類が平和でありますように」と書かれたでかい看板が掲げられている。静岡県富士宮市に巨大な本拠地を置く宗教法人「白光真宏会」の看板。ある意味キリスト看板並みに繁殖力が高い。

工業地帯という特殊性が人々の心に何らかの影響を与えてしまうのかも知れないがいろんなものを見すぎてくらくらしてきたので脇道にそれてみると、そこもまた薄気味の悪い半廃墟状態の路地裏だった。

何かの事務所なのか民家の廃墟なのか知らぬが朽ち果てて崩れそうな鉄の階段。敷地は草ボーボーである。

向かいの家もすっかり廃墟化してしまったのか生活物資が散乱するなど放置っぷりが凄まじい。

ぎっしり詰め込まれた郵便ポストを見てもここが廃屋であることは間違いないようだ。もっとも倉庫に転用されているだけで、地主は近くにいるのかも知れないが。昼間に来ても気味の悪さが拭えないが、夜になったらどんな雰囲気になるんでしょう。あー怖い怖い。

その近くにはどこかに通じているであろう謎の獣道もある。多分裏の民家に繋がっているだけだと思うがこんな場所柄だけあって何か得体の知れない空気が漂っている。

近隣の住宅地図を見て建設会社があったのに気づいたが、この路地裏の一部が資材置き場として使われているのが分かる。

この後にも延々と繰り返す工業地帯の中の住宅地。空き地と駐車場ばかりが目立つ殺伐とした光景が続く。老朽化で取り壊された民家や工場の敷地に結局何も建たずに草ボーボーの空き地になってしまっているようである。やはり寂しい街である。

今なお排気ガス臭で満ちる産業道路の南側に渡り、浜川崎駅方面に向けて歩いていく。すぐ隣には貨物線と、旧日本鋼管・JFEスチールの広大な敷地が広がるが、ここではひたすら何もない道が続く。脇では雑草伸び放題の状態で放置された「公園らしきもの」がある。

ふと、その「公園らしきもの」に足を踏み入れてみた。雑草に取り囲まれていてもはやどうにもならない場所だが、奥の方にブルーテントがあるのが見えた。

ここは産業道路側から見ると雑草で隠されている空間になっている。中央は獣道のようになっていて人や自転車が行き来している跡がある。ブルーテントのある方向に近づくとそこにはやはりホームレスの小屋があった。

確かにここまで放置されまくった場所ならいくら小屋掛けして勝手に住み始めても誰も文句を言わないかも知れない。環境最悪なはずの場所だが生きる為には場所を選んでいられないわけだ。

結構一つ一つが大きめの「川崎産業道路ホームレス村」のお宅。昔から川崎はホームレスが多い土地だが、六郷橋や多摩川沿いなどと同じように不法に建てられた小屋がずらりと並ぶフリーダムな光景が続く。

不法投棄が相次ぐ、この界隈の事情もホームレス生活の追い風となっていることが想像できる。行政がこうしてゴミを捨てるなと看板を立ててはいるのだが、不法投棄の裏で廃品回収業という仕事が出てくるものだから、なんだかんだ言っても社会の循環はうまく出来ている。

僅かな家財道具を守る意思を感じさせる、どこぞの廃材を拾って自作された玄関ドア。そこにはチェーン錠が括り付けられている。

「公園らしきもの」から産業道路へ出る道沿いには幾重もの自転車のタイヤ痕がびっしり付いている。彼らの「出勤」の痕跡だ。

この「川崎産業道路ホームレス村」では池上町群電前の終点、桜堀運河付近から鋼管通り交差点手前までの500メートル程度の幅にわたって続いている。およそ「20世帯」が住んでいるという情報がある。

かつては首都圏最悪の公害地帯だった川崎臨海工業地帯のど真ん中で排ガスに塗れながら逞しく生きようとする人間の姿もある。これからも彼らは行政や社会から孤立したまま誰にも知られず生涯を閉じるのだろうか。いくら綺麗事を言っても命の価値は人によって違うものだ。それが現実。

浜町交差点からさらに500メートル程歩くとJR南武支線浜川崎駅に行ける。産業道路に沿って歩くと途中の道の中央分離帯などに大量のゴミが投げ捨てられているのが目に付く。DQNドライバーの残した弁当の食い散らかしなどがどんどん山積みになっていくのだ。

一体いつのものか分からない、川崎市によるゴミ捨てマナー向上を訴える看板。

「好きです。きれいな川崎。」

きれいな川崎か…きれいなジャイアンくらいにあり得ない。


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