川崎と言えばガラの悪い街だという印象は相変わらず強い訳だが、駅前の繁華街を見ている限りは綺麗に整備されていて表向きはそれほど酷くもないように見える。しかし、中心繁華街の二ヶ所に堀之内・南町という一大悪所を擁し、東田町は市役所の真ん前にも関わらずどこの国の街なのかも分からない猥雑な繁華街で当たり前のようにアウトローがのさばるような土地柄。やっぱり川崎はそういう街なのだ。
しかしこれから向かう南町という所は街中に平然と暴力団事務所があったりしてかなりヤバイ街だと聞いていたが、かつて明治時代に宿場町沿いから強制移転させられた川崎遊郭(小土呂新地)が存在していた場所でもあるというので見に行く事にした。駅前から人通りの多い銀柳街を抜け、場所柄に合わずやけにオシャレなチネチッタ通りにそのままなだれこむ。
川崎駅最寄りにある「ラ・チッタデッラ」という日本人だと思わず舌を噛みそうな名前の施設。シネマコンプレックス・チネチッタを中心とした複合アミューズメントタウンとも呼べる街並みは銀柳街から続く川崎の中心繁華街の主要スポットの一つとして扱われていて、非常に活気を呈している。
夜ともなるとなかなか良いイキフンでございます。意識の高そうなスターバックスコーヒーまであって川崎地元民のデートにはうってつけ。ここだけ見ていると、従来の殺伐とした関東の修羅の国・川崎のイメージとはかけ離れていてシュールだ。
しかし、そんなチネチッタ通りから外れると従来通りのグダグダとした川崎らしい風景が残っている。「名画通り名店会」の一画である。ここいらもゴチャゴチャした飲食店が密集している。
長屋の商店群に紛れて「川崎万民教会」なる、いかにも韓国系だと匂わせるキリスト教会が。店先には牧師の説教らしき文章が書かれた機関誌が張られた看板がある。
教会関係者と思われる人が手書きで書いた聖書の一節。人種のキムチ壺のような川崎の街並みはチネチッタで見られる映画よりも奇なり。
裏手の路地もこんな感じの飲み屋街となっており雰囲気が良い。今回の目的の「南町」はチネチッタ通りや名画通りのある小川町のすぐ南隣に位置している。周辺は雑居ビルに加えて、安価で微妙な雰囲気のビジネスホテルの類が多い。ドヤ街・日進町に近いからだろうか。
そして道路を跨いでいよいよ南町に入ると、やけに高級車が路上駐車をしている怪しげなゾーンが目に入る。そこには強面のお兄さんが慌ただしく街を行き来している。もう説明するまでもない。現在もなお、南町というのはそういう場所なのだ。
堀之内同様、南町にもちょんの間が存在していたというが、やはりこちらも警察の摘発を受けて壊滅してしまっている。元赤線時代から続く建物があちらこちらに残っている。角地には煉瓦積みの玄関口が印象的な小料理屋「福吉」。
「女性募集 委細面談」らしいです、福吉さん。
その建物前が乱雑にゴミが積まれた集積所となっている。だいたいゴミ捨て場にどういうゴミがどう捨てられているか見れば、その地域にどんな人種が住んでいるか予測できる。普通の人はあまり住んでいないだろう。
こちらも艶めかしさ全開な建物。二店舗が背中合わせにくっついているが、これも赤線地帯の頃からのものだろうか。相当の年月が過ぎていて建物の劣化具合が激しい。
飲食店の軒先にはいわくありげな「女性求む」と書かれた板が貼りつけられたままになっている。その上の「みんなの力で暴力追放」のスローガンは場所柄を考えるとどう見てもギャグとしか思えない。