東京都中央区というと都心のど真ん中としか思い浮かばないようなエリアだが、それでも目を凝らせば昔のまま残った下町があちこちに残っていて意外に奥深い。
日比谷線とJR京葉線の駅がある、八丁堀駅で降りた。殆どがオフィス街のような場所で、休日の昼間に来ると人通りが全然無い、閑散とした駅だ。
八丁堀駅の南側、中央区湊の住宅地が再開発計画のせいで街が虫食いだらけになっていて非常にヤバイという話を聞きつけてやってきた。しかしこの辺り、モロに都心にあるくせに全く存在感のない界隈だ。
駅を離れると途端に下町全開の風景が現れる。平日ならサラリーマンが闊歩するオフィス街だということだが、土日となってはゴーストタウン同然。
オフィスビルに囲まれて残る、いつの時代からやっているのかわからないレトロな雀荘。店舗兼住宅で、普通に人が暮らしている。
これも狭い土地で暮らす東京下町の知恵なのか、まるまる木造住宅の二階に上げられてしまった「今村幸稲荷神社」。鳥居の真正面がシャッター、位置関係がシュールである。
駅からしばらく歩くと中央区立女性センターの建物がある。「ブーケ21」という愛称のついたいかにもフェミ臭が漂うありがちな男女共同参画モノの箱物かと素通りしそうになるが、よく見ると建物内に「桜川屋上公園入口」と看板が掛かっているではないか。
女性センター脇の階段を登っていくと、確かにそこには公園が広がっていた。ビルの3階部分にあって、人工池や日本庭園、ゲートボール場まで整備されている。「桜川」とあるが、明治時代以前に地名のもとである八丁堀と呼ばれていた川だ。昭和40年代に埋め立てられている。
休日の晴れた日であるにも関わらず、ホームレス風のオッサンが日向ぼっこしているだけという寂しい公園。区立女性センターと桜橋第二ポンプ所の建物が繋がっている屋上部分を使った公園は、夜になると閉鎖され入る事ができない。
中央区湊の一帯はマンションやオフィスビルが目立つ一方で現在も純然たる下町だ。ビルインタイプだが銭湯もちゃっかり残っている。
その正面の民家もなかなか年季が入った代物である。
表通りは閑散としているが、区立中央小学校の前には児童公園があって、その付近だけは子供が遊んでいたりして、わずかに人の生活の息吹を感じる。
小学校付近まで来ると、古い工場兼住宅が見受けられる。この付近は辛うじて戦災を免れているので、戦前建築の木造住宅が至る所に残っているようだ。現在も印刷工場を中心に紙業関係の町工場が点在していて、独特の風景がある。