渋谷駅近くにある宮下公園、東京五輪後の昭和41年に全面改修されて現在の2階建ての公園となったが、駅に近い場所にも関わらずホームレスが占拠する公園だというイメージで公園を訪れる人々の姿もなく、ただただひっそりしている。
幾度となくこの公園ではホームレス排除に動く行政とプロ市民との小競り合いが繰り広げられてきた。公園内では現在もホームレスの小屋掛けを退けるフェンスが至る所に張り巡らされ、異様な雰囲気を放っている。
かつてこのスペースでホームレスが暮らしてきた痕跡であろうか、フェンスの内側には大量の生活ゴミが放置され酷い有様である。
渋谷区はこの公園のネーミングライツをナイキに売却し、ナイキの出資で公園を再整備、オシャレなスポーツパークとして再起させる手筈になっているが、企業の公園私物化は許さない、ホームレス排除は許さないなどと主張するプロ市民によって妨害され、2010年4月の開設予定も頓挫、膠着状態は今なお続いている。
公園の一画にはホームレスが建てた小屋とは別に「仲間の荷物置き場」などと張り紙が貼られた妙な小屋が建てられていた。
「野宿の仲間の荷物置き場としてお使いください」と書かれた小屋は、宮下公園に住むホームレスを支援しているプロ市民団体が置いたもの。ホームレスを「仲間」と表現するのは彼ららしい。西成や山谷あたりに居る団体のお仲間でしょうかね。
公園内には彼ら「支援団体」とやらが書き残した謎のイラストなど、プロ市民臭漂うアイテムがそこかしこに置かれていた。宮下公園はナイキやホームレスにではなく、実際のところプロ市民に私物化されていた訳ですね。
ホームレス排除の口実として整備されたフットサルコートも、わずか5年足らずで閉鎖、見るも無残な荒れっぷりを見せていた。ナイキパーク造成予定に合わせて閉鎖されたようだが、現在公園は誰の為のものでもなく、ただの廃墟と化していたのだ。
公園の南北を横断する歩道橋の上に出ると、目の前にはJRの高架橋と、沢山の通勤客を載せる電車が頻繁に往来する。その向こうは宇田川町だの神南だのといった渋谷の繁華街が広がる。都心の中の都心、渋谷のど真ん中にありながら、この殺伐とした風情はあまりに異端的。
ホームレスに占拠される公園で例を挙げると、大阪の天王寺公園の場合は公園の周囲をフェンスで囲んで入場有料化・夜間閉鎖という強硬手段を取るようなケースもあるし、東京でも上野公園の場合は公園があまりにでか過ぎるのでホームレスも一般ピープルも仲良く共存している。
しかし宮下公園は近所に代々木公園という巨大公園を抱えている為か、世間の注目度は無いに等しい。ひたすら熱くなっているのはこの公園をデモ活動の集合地点として使ったりホームレスを利用してアジテーションを行う一部のプロ市民だけという罠。
そして宮下公園はつい最近になって管理者の渋谷区によって出入口が完全に閉鎖されてしまったのだ。ホームレスというよりはプロ市民団体の不法占拠に対する処置という事で渋谷区側も業を煮やして行政代執行に出る事となった。(→詳細)
この全面封鎖はおそらく公園の改修が済むまでは解除されない事だろう。渋谷に残る最後のカオスゾーンも、いよいよ見納めとなる時が近づいてきたようだ。そう考えると一抹の寂しさを覚えるような気がしなくもない。