新大久保という地名を聞いて「コリアタウン」「韓流の街」だとか言うのは既に一般的にも認知されるようになり、もはや何の意外性も無くなった感がある。しかし新大久保は別に韓国人だけの街ではないという事は何度かこの街を歩くと気が付くであろう。
イスラム教を信仰する諸国の外国人が集まる一画がこの街に存在するのだ。
JR新大久保駅前の大久保通りに面した北側に「百人町文化通り」と呼ばれる商店街がある。この場所が「イスラム横丁」と呼ばれていて、「ハラルフード」の表記がなされたイスラム圏諸国の食材を扱う店がここだけ軒を連ねていて、一種雰囲気が独特なのである。
特に商店街をちょっと入った所にある角の付近が外国人だらけでわっさわっさしていて見た目にもかなりエスニックでヤバイ。軒先でケバブを焼く匂いが食欲をそそる「GREEN NASCO」はハラール食材を専門に扱う食料品店の一つ。
それに隣接する形で同系列の「Nasco Food Coart」があり、ハラールフードであるビリヤニやらバーベキュー串やらあれこれ食える寸法になっている。ざっと見たところ客の半分以上は外国人だな。
NASCOの隣には「Barahi Foods & Spice Center」。やはり同様にハラール食材専門店である。さっきからスパイス臭が半端無く、すぐ隣に餃子の王将があっても存在感がまるで無いという事態に。
ここはネパール人が経営しているらしく、店の表にはヒマラヤ山脈やネパール国旗があちこちに掲げられていてお国をアピールしている。掲示板に書かれているのはネパール語らしいんですが、さっぱり読めませんね…
「Barahi」が入居する雑居ビルの中にはネパール料理店やインドネシア料理店もあり、これらも当然イスラム圏諸国独特のハラール認証済。インドネシアも多民族国家だけどイスラム教徒多いですからね。
さっきからやたらと食欲をくすぐって止まない「GREEN NASCO」のケバブ屋台。ケバブサンド、ケバブ丼、ケバブラップの3種類、肉はチキンとビーフ、両方のミックスから選べて、さらにソースは4種類。なかなか飽きそうにない組み合わせの多さである。350円か400円というお値段の安さも魅力的。
NASCOのケバブ屋台の向かいにある「新宿八百屋」の前も買い物客の姿で溢れている。ここもよく見てみよう。店の看板は英語、韓国語、中国語で併記されてるわ、買い物客自体も外国人がとても多い。普通の八百屋ではないのは一目瞭然。
この新宿八百屋は24時間営業で、とにかく野菜の扱いが多い他、それほど広くはない店内にも外国人向けの食材や調味料が多数置かれている。新大久保に集まる外国人の暮らしを年中無休で支えている八百屋なのである。
新宿八百屋の隣にももう一軒「The Jannat Halal Food」という食材店が。香辛料関係に強いようですが冷凍魚類やら国際電話カードの取り扱いもある。オーナーはバングラデシュ人らしい。ローラのパパの母国ですね、はい。
NASCOと新宿八百屋の間の路地を入ると、NASCOが入居する雑居ビルの入口があり、その玄関付近にも「ローズファミリーストア」というハラール食材店の看板が見かけられる。
雑居ビルは階段のみで4階まであり、2階にローズファミリーストア、3階には韓国人が経営する美容室やマッサージ店、そして4階にまで上がるとムスリムの礼拝所「モスク」があるというのだ…
「ローズファミリーストア」は新大久保の他にも隣のミャンマー人街・高田馬場にも店舗があり、看板にミャンマー語併記があることから、恐らくここはミャンマー人の経営か。ちなみにミャンマーは仏教国だが、少数派ながらもイスラム教徒がいる。
その店先の壁には夥しい貼り紙の数々が。食品の入荷情報ばかりでなくスマホの売買情報やら何やらあれこれ多言語で書かれていて興味深い。
確かに4階まで登るとアラビア語とミャンマー語らしき2つの言語で何か書かれているのだが生粋の日本人には読めません。東京各所にイスラムのモスクは存在するが、新大久保でモスクと言えばこの場所になるらしい。
小さな雑居ビルのアパートの一室のようなモスクだが、ちゃんと入口は男性と女性で別々に分かれている。信仰に集中できる環境としてはあまり良いとは言えない場所なのだろうが、それでも現地人にとっては数少ない心の拠り所なのであろう。
新大久保の街全体に言える事だが、この付近の日常風景もまるで日本国内のものとは思えない。中国語、韓国語、アラビア語、様々な国の言葉が飛び交い、乱雑に洗濯物が干された外国の路地にあるかのようなマンションの下にもまだまだ外国食材店があり、従業員のあんちゃんが何やら外国の言葉でまくしたてながらそこら中にダンボールを散らかしつつ仕事に励んでいる。
ここらで腹が減ったので、ケバブサンドなんぞを食ってから隣のネパール食材店が入居する雑居ビルを登ると、ここにもネパール料理居酒屋「モモ」という店があり、現地人と日本人が入り乱れてエスニックな風情満載。食欲がみなぎってきたので、ここでも食っちゃいますかね…
ところが、いざ入店すると「客が多いから」という理由で別室に案内されてしまった。誰も居ない、場末のスナックどころか病院の待合室のような殺風景な空間。うぐいす色一色の壁がなんか病院っぽいっすね。
店名にもなっているネパール式小籠包「モモ」をつまみながらパスポートのいらない外国の風情に浸りましょう。どう見ても中国の小籠包と見た目が変わらないのがちょっとアレな感じですが…ともかく新大久保は韓流だけではない!という事を全力で体感できました。