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昭和の団地遺産「都営鷺の宮アパート」(2009年)

東京の地価について調べてみると、どうしても人気の高い西側に地価の高騰が見られる傾向にあるが、同じ西側でも東急線や小田急線、中央線といった路線とは一線を画するのが西武線沿線の街だ。

特に地下鉄線との乗り入れもない西武新宿線の存在はすこぶる地味であり、西武新宿駅が各線新宿駅の集まる場所から北に300メートル離れており「歌舞伎町駅」とも呼べる状況から、西武新宿線住民の事実上のターミナル駅は高田馬場駅になっている。

そういう事情もあって、西武新宿線沿線の家賃相場は中央線と比べてもかなり安い。それに併せて各駅前の風情もどこか垢抜けないのが特徴だ。

西武新宿線の急行電車に乗って高田馬場の次に止まる「鷺ノ宮駅」で降りた。南口に来てみたが、見ての通り駅前らしさが全くない。ちなみに駅前からは阿佐ヶ谷駅と中村橋駅を結ぶ関東バスの路線もある。

中野駅からはかなり離れているが一応この界隈は中野区に属する。西武線沿線を知らない人間にはこのへんもひっくるめて全部練馬区だと勘違いされるそうだが断じて違う。

鷺ノ宮駅周辺は単純に住宅地しか立ち並んでいないが、自動制御機器メーカーの鷺宮製作所がある場所として機械業界の人には知られている。

駅南口を降りると目の前を流れているのは妙正寺川。コンクリートでガチガチに固められた味気のない川だが、2005年9月の豪雨時には川が氾濫して駅前の大部分が水没したりもしている。侮れない暴れ川だ。(→詳細

この妙正寺川沿いに昭和の高度経済成長期に建設された団地群が並んでいる。

鷺ノ宮駅から南に徒歩5分程度歩くと「都営鷺宮アパート」が存在する。建築時期は昭和34年~39年と相当古い。給水塔の作りも建物自体もかなり老朽化が目立っている。

妙正寺川沿いに約15棟の団地が並ぶ。築50年近くになる団地の一部では既に建て替え工事も始まっている。

年季の入った団地にはありがちな事だが、この鷺宮アパートの周辺も高齢者ばかりが目立つ。継ぎ接ぎ状の塗装がいかにもオールドタウンといった感じで素敵。

団地の一角には阿佐ヶ谷住宅のようなテラスハウス式のものもある。おおよそ現在の東京における人口過密化では想像も付かないようなゆとりある間取りの住宅でありこんな所に住めている住人がたいそうウラヤマシス。

古びて朽ちていく団地には色褪せてくすんだ避妊具の自動販売機が似合う。高齢者しか住まなくなってしまっては明るい家族計画もクソもないがいかがなものか。新しい世代はよりオシャレでトレンディな郊外の新天地へと巣立ってしまい、古い世代だけが微妙なオールドタウンの住民として残るのみ。

こうした街の酒屋は老人の愚痴ばかり聞かされて鬱になるのか知らんが裏の倉庫もビール箱が乱雑に置かれて随分投げやりな状態になっている。世代の隔絶の歪みが街の至る所に現れている。

団地から妙正寺川を挟んだ向かいがかつて賑わっていたであろう商店群。電気屋やら八百屋、酒屋など一通り生活物資が賄える場所だったようだが現在では見る影もなく朽ち果てている。

古びて朽ちていく商店街には色褪せてくすんだ政党ポスターが似合う。挙句の果てにはキリスト看板まで置かれているではないか。

団地の側には「白鷺湯」という銭湯もある。鷺宮アパートの建設時期からして風呂なし物件の割合も多く、地元住民に常用されているようだ。

実はこの鷺宮団地のある場所から自転車で10分もしないうちに中央線の阿佐ヶ谷駅前に出る事ができる。人身事故で止まりまくりのくせにどの駅も発展しまくりの中央線とは何がどう違うのか知らないがこの落差は異常。

<追記>都営鷺の宮アパートは現在建て替えられ新たな高層団地に生まれ変わっており、この風景が見られなくなってしまいました。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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