【小平市】小金井と聞いていたのでてっきり中央線と思っていたら…西武新宿線「花小金井」駅前を観察する

小平市

首都圏の地価は東京五輪終了後まで値上がり傾向が続くという事らしく、東京湾岸部や武蔵小杉あたりのタワーマンションがアホみたいなボッタクリ価格になっているのを見るにつけ、このタイミングで不動産に手を出すのは正直どうなのかと思う節もある。しかし広い首都圏、まだまだ探せば穴場というものはあって、新宿まで電車で一本で行ける割には不人気極まりない「西武新宿線」の沿線は割安感が強い。

それで今回やってきたのは、西武新宿駅から急行で片道23分の「花小金井」駅。ここは駅名や周辺の地名に「小金井」とついていて、土地勘に詳しくない上京民がパッと見ると「小金井=中央線の街」とてっきり勘違いしてしまう。しかし花小金井はれっきとした西武新宿線の駅でもあり、むしろ小金井市ですらない。住所は「小平市花小金井」だ。

花小金井もまた「中央線面できる西武新宿線の街」だった

田無までは各停電車の始発が行き来するので本数もかなり多いが、花小金井から先は準急も急行も各駅停車になってしまう。駅舎も1998年に建てられた橋上駅舎となっていて昔の西武線の古臭いイメージとは無縁だが改札口にビアードパパのシュークリームの店があって年がら年中バター臭いのが問題点か。最近は西武線まで駅ナカがスイーツ臭いんですが大丈夫でしょうか。

全体的にもっさり感の強い駅前風景がデフォになっている西武新宿線沿線だが、さすがに花小金井あたりまでやってくると郊外のベッドタウンらしい趣きに変わってくる。特に南口はこれまで開発が遅れていた反動か、2000年代になってから駅前ロータリーと小金井街道から伸びる片側二車線路が中途半端に整備されたり、築浅マンションがボコボコ建ち始めている。それにしてもなんだよ、コンセプト不明なこの銅像は。

とりあえず駅前ロータリーに立ち並ぶ地元小平市をアピールする看板の数々が、ここが中央線沿線で小金井市ではないという事を示している。小平市ねえ…個人的には「鷹の台」の創価学園と朝鮮大学校、ふれあい下水道館のイメージしかありません。

そして何気に小平市の自慢である「ブルーベリー栽培発祥の地」の看板。国産ブルーベリーは小平市花小金井南町で生まれたそうです。開発度の面でも中央線より遅れを取っている西武新宿線沿線、昔ながらの武蔵野のアグリカルチャー感も残しているわけで、これを「良し」とするか「ダサい」「イモい」「ほぼ埼玉」とするかでこの沿線への評価は分かれる。

花小金井駅南口には「多摩湖自転車道」というサイクリングロードが東西に伸びている。武蔵野市の境浄水場と多摩湖の間を結ぶ水道道路上に整備された道で、ここも武蔵野の情緒を思わせる風景の一つである。西武線ならではのもっさり感もこの並木道一つあるだけで幾分和らぐものだ。花小金井の地名も、玉川上水沿いなど周囲一帯の「小金井桜」の並木道がその昔景勝地として、明治天皇も花見に訪れたほどの場所だったのが由来とされる。

駅の西側を南北に走る「小金井街道」沿いにはJR中央線武蔵小金井駅行きのバスも頻繁に往来している。この通り、住所の上では小平市だが、街の風情は隣の小金井市のそれに近く、小金井公園なんかも生活圏にある事から「武蔵小金井の下位互換」的な不動産需要も増している。宅地の不動産価格も隣の小平駅より花小金井駅周辺の方が若干高い。

大手デベロッパーがティッシュ入りチラシを配りまくる街・花小金井

とりあえず駅前ロータリーをひと目見てやたらと目立つのは大手デベロッパー各社のティッシュ配りがあちこちにいる事。南口と北口で合計3人くらい居たんですがマンションを売るためにみんな必死すぎる。不人気路線であるはずの西武新宿線のこんな街でもマンションの建設ラッシュに湧いているらしい。

現実的にサラリーマンの収入で手が届く新築マンションというのは、この場所まで来ないと無い、とも言える。東京五輪に向けて地価上昇が続く中、23区内の特に西側では西武線沿線は有力な選択肢となる。それにいくらコスパが良くて通勤至便でもガラの悪い23区東側に拒否感を示す人間は少なくない。いまや中堅世帯の「東京の西側」への住宅需要を満たす事のできる数少ないエリアの一つになっている。もし中央線で同じ価格帯で駅近の新築マンションを買うとすると、立川の向こうまで行かなければならない。

花小金井駅周辺に建設中の大型物件「シティテラス小金井公園」は3LDK70㎡超で3600万円台からと駅徒歩10分圏内でも割安感が強い。小金井公園に隣接している事を猛烈アピールしているが、ここも住所は小平市。マンションの公式ページを見ると「中央線武蔵小金井駅からマンション専用無料シャトルバス運行予定」と大々的に宣伝していて、むしろ「西武新宿線花小金井駅」よりも手前に書いている。

駅南口には大手デベロッパーのマンションギャラリーも置かれ、まだまだ発展途上のエリアである事を如実に示している。ともかく、練馬区立野町や関町、上石神井あたりに住んでいるのに吉祥寺がホームタウンですとか言っている人がいるように、この界隈の物件を選ぶ人間も「中央線民面」したいのである。

まだまだ発展途上の街ですね

既に開発され始めている駅南口の片側二車線路沿いには高層マンションがずらずら立ち並んで真新しい街並みが形成されている。やはり発展度合いは西武池袋線のひばりヶ丘あたりよりも遅れている印象があり、少し駅から離れるとブルーベリー園や田んぼが連なる昔ながらの「武蔵野の田舎」の風景も残る。

今度は駅北口に出てみるも、こちらも同様にここ十数年くらいで建ったような築浅マンションばかりで真新しい印象を受ける。スーパーは北口にいなげやと西友、南口にピーコックストアがあり、普段の買い物をする上では困らない程度に揃っている。完全にニュータウンの様相を呈している。

都バス最長路線「梅70」系統・青梅車庫行が発着する花小金井駅北口

あと花小金井駅北口には、23区民は全く知らないであろう都営バスの「梅70系統」が1時間に1本のペースで発着している。都営バス青梅支所に所属する八王子ナンバーの車両が青梅街道をチンタラ走ってやってくるのである。小平市、東大和市内を通り、さらに鉄道不毛地域である武蔵村山市などを通って八高線箱根ヶ崎駅を経由し青梅市内に入る。

かつては西武柳沢駅前から出ていた梅70系統、2015年4月1日からは出発地点が花小金井駅北口に変更されている。片道1時間40分、運賃560円で東京の奥座敷、青梅駅近くまでバス一本で行ける。全線通しで乗る客はマニアくらいしか居ない。あくまで鉄道不毛地域の不便さを埋め合わせる路線である事には変わりない。

北口にほんの気持ち程度に栄えている小さな商店街があるくらいだが、いつもの「ザ・西武線」的な昭和でやさぐれた街並みは駅の東側に残っているだけで、パチンコ屋も東側に二軒ある。DEEP案内的な見どころはやっぱりそっち側なんですが、レポートが長くなりそうなのでまた次回ということで。


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