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吉見百穴に隣接する遺構「巌窟ホテル・高壮館」

埼玉県の中心部にあたる比企郡吉見町は、謎の古代墳墓「吉見百穴」に怪しさ満点の「百穴温泉」など何気にヤバげな施設がてんこ盛りな訳であるが、その吉見百穴に隣接する山肌にまるで秘密基地か要塞のごとく佇む建造物の遺構が存在する。
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今では閉鎖されて入る事すらままならない状態だが、姿形は辛うじて僅かに残っていた。
ここはかつて「巌窟ホテル・高壮館」と呼ばれた場所。近所の農民である幕末生まれの高橋峯吉氏なる人物がたった一人で明治37(1904)年6月から大正14(1925)年7月までの21年の歳月を掛けてノミとツルハシだけで掘り抜いたという驚くべき建造物の遺構なのだ。


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長年の経年劣化により建造物の外壁部分の装飾は剥がれ落ちて無くなっているが、窓や玄関にあたる洞穴だけが残った形になっている。残念なのは完全封鎖されている為に中の様子を拝めない事。
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外側から見える部分には2階にあたる窓の手すりが残っているのが確認出来る程度である。
巌窟ホテルとは言うものの、建物を掘り抜いた高橋峯吉氏自身は「高壮館」と名付けている上にそもそもホテルとして作られた訳でもないのだが、峯吉氏が一人で岩盤をノミで掘っている姿を村人が見かけて「巌窟掘ってる、巌窟掘ってる」と言うようになったのが転訛して「巌窟ホテル」と呼ばれるようになったらしい。
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在りし日の巌窟ホテルの姿は、外観は中東の洞窟寺院を思わせる造りで、中に入ると西洋風の宮殿風の内装が特徴的な建物だったそうだ(→詳細)峯吉氏はこの岩肌が建築資材にも使われる丈夫な凝灰岩で出来ている事に目をつけて建物を掘り抜いて作っちゃおうと考えたんだそうだ。昔の人のイマジネーションは凄いもんだな。
さらに内部にはテーブルや花瓶といったインテリアまでもが岩盤から掘り抜いて作られたという。しかし今では肉眼で確かめられる事も出来ない。
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巌窟ホテルの前の空き地に遊具の残骸などが置かれている。昔は児童公園でもあったのだろうか。
巌窟ホテルの歴史は隣り合う吉見百穴とともにある。明治時代に本格的に発掘調査が始められた吉見百穴が眼前にあったという事は、峯吉氏の情熱に火を灯すのに充分なモチベーションであっただろう。
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フェンスの前には「立ち入り禁止」の張り紙が掲示されている。今でもこの土地は峯吉氏の子孫が所有している。
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大正14(1925)年に峯吉氏が死没した後も、婿入りした二代目が巌窟ホテルの改修を引き継ぎ、昭和の終わりまでは観光施設としても現役で頑張っていたそうだが、2度にわたり大規模な落盤が起きて外壁の大部分が崩落、やむなく閉鎖されたという。
その後二代目も死没してしまい虚しく放置される事に。
今では侵入者を寄せ付けないフェンスが建物の周りを高く覆っていてご覧の有様である。
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封鎖されているフェンスの右側に回り込むと今でも「巌窟ホテル 巌窟売店 専用駐車場」と書かれた看板が残っている。
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「巌窟売店」は今でもひっそり営業しているらしく傍らには自動販売機もずらりと並べられていた。峯吉氏の子孫が経営している。残念ながらタイミングが悪かったのかシャッターが降りたままだった。ここで昔の巌窟ホテルの写真なんぞも見られるそうだが。
ちなみに1995年に放送された「探偵ナイトスクープ」で巌窟ホテルの内部に潜入した時の映像があった。それをたまたま見ていたので巌窟ホテルの存在は知っていたのだが…
売店を経営する地主にマスコミ等が「中を見たい」と依頼しても随分前から全部お断りされてしまうようになったので、ナイトスクープの映像が最後になったっぽい。今更やっぱりどう頑張っても見る事は出来ないだろう。
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それにしてもこの辺の土産物屋と思しき建物とかは末期的な状況になっている。川向こうの東松山の田舎ヤンキーがマーキングしていたりして見苦しい限り。
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しまいには川沿いのガードレールにまで…埼玉のヤンキーオソロシス。こいつらには巌窟ホテルを掘った峯吉氏の情熱の片鱗すらないのだろうか。平成日本、情熱を忘れた世を我々は生きている。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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