エーダンモール深沢の西側は商店街のエリアから外れるが、相変わらず古びた小さな低層住宅が密集する区画が連なっている。
横道に入ると車も入れないくらいの細道も残っていてなかなかスリリングである。そこに建つはトタン葺きの壁が印象的な狭隘な住宅ばかり。目の前には洗濯物が干され、下町ならではの営みが垣間見られる。
こんな街の風景が世田谷区の、それも深沢に残っているというのが意外だ。どう見ても上野か浅草あたりの風情である。
おしなべて古く狭い住宅街は、東京東側の下町ゾーンで見かけるものとことごとく共通してはいるが、ここの路地は特に強烈な印象を覚えた。
路地に密集する民家は軒先同士が非常に密接していて、生活臭がとりわけ強く感じられる。目の前で洗濯物が干されていたり台所から家事の音が聞こえてきたり。しかし同時にガラクタが乱雑に置かれていて独特の雰囲気だ。
よく見るとガラクタというには少々危なかっかしい塗料の一斗缶や建築資材の余り物のようなものが大量に捨てられて悪臭を放っている場所まである。これはちょっと普通の状態ではない。
この付近には未だにバラック状態の家屋が残っている。恐らく仮設住宅だったであろう戦後に建設された団地が取り壊された後も、またバラックが建ってしまったという経緯なのだろうか?
エーダンモール深沢西側の住宅のごく一部では、見ての通りスラムと呼んでも差し支えないような状態の場所が残っている。既に空き家になっていそうではあるが。
家の軒先にふと目を置くと、そこには見慣れた三色旗が飾られていた。そうかそうか。やはり下町だけあっての事だろう。
軒先で三色旗を見かけるだけにこの界隈の公明党ポスター率の半端なく高いのだが、この界隈で熱心な信者さんが沢山住まれているという事はよそ者の目から見てもよく分かる。
廃屋同然になった2階建て民家の玄関横にももう一枚。
この付近の住宅地を見回すと、まさに我が物顔のように街中に公明党ポスターが貼られている光景を目にする。
そんな下町全開な住宅地と世田谷らしいお上品な住宅地とを隔てる境界のごとく、緩やかながらも階段で結ばれている。実に不思議な街である。
「エーダンモール深沢」に決して華やかさは無いが、世田谷にも残る下町の原型の一つがこの界隈には存在している。自由が丘や駒沢公園を訪れた折には、ちょっと足を伸ばして街の様子を見に来ても良いだろう。
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