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浦安「沖の百万坪」の痕跡を探す

浦安市郷土博物館で浦安の漁村の歴史を色々と見てきた訳だが、「沖の百万坪」と呼ばれた広大な干潟がことごとく埋め立てられた後に作られた新浦安のマンション街の最果てには、やはり海が広がっている。
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浦安市のメインストリート「やなぎ通り」、東京から来ると葛西橋通りから浦安橋を渡った延長線上にある場所だが、そこから浦安駅前を通って、さらに新浦安駅前を経て突き当たりまでずんずん突き進むと、そこはもう既にハワイかどっかのリゾート都市のような風情の「浦安市総合公園」となる。


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目の前に広がる東京湾と青々と透き通った空、そしてどこまでも続く埋立地。東京都心の隣接地にここまで広大な土地が残っているとは。
ちなみにこの総合公園までは浦安駅、新浦安駅からバスで直接来る事が出来る。バス会社も千葉県のくせに「東京ベイシティバス」だったりして笑える。
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もっとも海岸線は完全にコンクリート護岸でブロックされているため、リゾート気分で海水浴という訳にはいかない。晴れた日には東京湾を挟んだ向かいの幕張新都心あたりがはっきり見渡せる。
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浦安市総合公園から見た新浦安のマンション街。まるで日本の都市らしくない。ウメタテーゼかマリナーゼか知らぬが、この風景に憧れて住んでしまうスイーツ女子の気持ちが、少し分からないでもない気がしてきた。
しかしこの都市風景も広大な干潟地帯を潰して、浦安の漁師の生活を犠牲にした上で成り立っている。当然漁業権放棄に対する補償を受け取った訳だが、これまで海苔やアサリを採る事だけに人生を捧げてきた浦安の漁師達がそう簡単に自らの生き様を捨てる事が出来ないという事を、この先目にすることになる。
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総合公園の端までやってきた。そこはかつて堀江村と猫実村の境を流れていた境川の河口。対岸は高洲海浜公園となる。
埋め立ての影響で境川河口は沖へ沖へ伸びていった訳だが、よく見ると河口付近で腰の高さまで海水に使ったまま、何か作業を続けている人々の姿がある。
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よく見ると彼らは貝採りをしているのだ。道具の数々を傍らに置いて、ひたすら海中の貝を採取したり、はたまた摂った貝をふるいに掛けたり。浅黒い肌と野性的な筋肉質の背中を惜しげもなく披露する男の姿はまさしく海の男そのもの。
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境川河口にやってくると、こうした貝採り作業を行っている元漁師の姿を見る事が出来る。採った貝は自分の家で食うのはもちろん、一部は市場に出回っているという話も聞く。もちろん漁業権は放棄されているので、自由漁業で貝採りを行っているそうだ。
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普段からハゼ釣りに訪れる釣り客がいる他、大潮の干潮時は河口一帯に辛うじて干潟が現れるらしく、その時は近隣の家族連れなどが潮干狩りを楽しんだりするらしい。
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総合公園を後にして、さらにもう一ヶ所気になる場所があったので訪れてみた。京葉線の高架が海岸の前を走るという素敵なロケーションが始まる、新浦安~市川塩浜間の一画。猫実川河口、浦安・市川市境の埋立地の始点となる場所だ。
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ここも、埋立地の海岸線がどこまでも続いている、なんとも都会らしくない広々とした場所である。ましてや人っ子一人いない。
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ここから幕張新都心方向の海を眺めると、引き潮の時間帯のみだが、わずかに陸地が出来上がっているのが見える。
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もっとよく見てみると、沖の方にももう一つ陸地が見える。ここは船橋・習志野辺りまで続く広大な干潟地帯「三番瀬」の一部となっている場所だが、干潟の一部が隆起して島になっているのではなく、実は地面に見えるものは全て「牡蠣礁」と呼ばれるカキの塊なのだ。
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聞く所によると、猫実川河口にある牡蠣礁は面積5000㎡にも及ぶ日本最大級の牡蠣礁らしい。生きた牡蠣の塊があると聞いて、カキフライにしたら何人分になるのかと想像してしまいそうになるが、生態系の異変であるとか、逆に水質浄化に役立つとか、牡蠣礁の存在には賛否両論あるそうだ。
しかしこんな圧倒的な自然環境が東京の目と鼻の先に広がっているとは思いもしないものである。たまにはむさ苦しい通勤電車を降りて浦安の海岸を散歩してみるのも悪くなかろう。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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