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東京にもあるハンセン病療養所「国立療養所多磨全生園」を訪ねる 

結核患者隔離収容施設を人里離れた郊外に造成する目的で昭和初期に作られて以来、日本屈指の病院密集地として知られる東京都清瀬市の「病院街」に隣接する東村山市には、日本で13ヶ所現存しているハンセン病療養所の一つ「多磨全生園」が今も残っている。

多磨全生園の敷地の一角にある「国立感染症研究所・ハンセン病研究センター」。

かつてハンセン病も結核と同じ不治の病として恐れられ、感染病であるとともに皮膚組織が損傷する症状から起こる見た目への偏見・差別から数々の不幸を招いた歴史を持つ。

現在では結核もハンセン病も治療法が確立され死を恐れる程の病ではなくなった。

しかし多磨全生園には今も社会から断絶されたまま行く場所もないと、その場所に住み続ける元患者が暮らし続けている。

日本におけるハンセン病患者の歴史、これまでの対患者政策についての資料を展示している日本唯一の博物館「国立ハンセン病資料館」へやってきた。

高松宮記念ハンセン病資料館として1993年に開設されたもので、2001年の熊本地裁でのハンセン病国家賠償請求訴訟判決で政府が控訴を見送った当時の小泉内閣の談話で「資料館の拡充」が表明され、のちの2007年に新館を増設し展示面積が広がっている。

広く国民にハンセン病患者の苦難の歴史やこれまでの政策など、ハンセン病に関する正しい知識を伝えるという目的の為に入場は一切無料という形を取っている。とはいえ9時半から4時半までが開館時間(毎週月曜休館)なので、来るタイミングには注意する必要がある。

資料館の入口に袈裟を被り杖を持つ親子連れの銅像(母娘遍路像)がある。昔の治療法が無かった頃のハンセン病患者の様子を表したもので、ハンセン病患者は家族や郷里を捨て四国にお遍路に行く以外に救いがなかったという時代の苦難を示している。

医学の知識が無かった時代にはハンセン病は遺伝病とも天罰病とも言われ、患者は否応なく差別され続けてきた。

日本では昭和の時代に至るまで、らい予防法という法律の元、患者の子孫までを隔離し断種するという政策が続けられてきた。

館内は撮影禁止になっているが、記憶に残ったものの一つとして挙げておくと2007年のリニューアルで拡充された原寸大ジオラマ、特に懲罰目的で作られた群馬県草津町の栗生楽泉園、通称「重監房」の様子を再現したものがエゲツない。

ハンセン病問題については政治的思惑も強く影響されるためこの施設の展示内容にも賛否両論あることは確かだが、一度はハンセン病資料館を訪れてじっくり見るべきである。

ハンセン病資料館の横手から多磨全生園の敷地に入る事ができる。元はハンセン病療養所として設置されたものの、今ではハンセン病患者を隔離する法的根拠は何もない。それゆえに一般人も全生園の敷地に自由に出入りすることができるのだが、さすがに園内は広い。

園内の史跡を示した「全生園の隠れた史跡」案内板設置場所という図があるので、これを参考にしながら全生園の敷地を一回りしてみようと思う。

多磨全生園の園内はまるで都市公園のような空間になっている。明治42(1909)年9月28日に公立療養所第一区府県立全生病院として設立されてから、丸1世紀を迎えている。初めて日本国内五ヶ所に建てられたハンセン病療養所の一つである。

敷地面積35万2790平方メートル、周囲2キロ少々の園内は確かに広大に見えるが、昔のハンセン病患者はここから一生涯出る事を許されなかった訳である。社会や家族から完全に切り離され、この敷地だけで一生を終える。今の時代から想像しても考えられない出来事である。

およそ100年余り、ハンセン病患者を収容してきた施設だけあって、園内の至る所に老朽化した何かしらの遺構が残っている。元は何だったのか良く分からないものも多い。

昔とは違い療養所の内へも外へも出入り自由になっているものの、園内各所にこうした看板が掛かっているように、出合い頭の事故が後を絶えないらしい。

ハンセン病患者の多くは高齢化を迎えている。現在では老人介護の拠点としての趣きが強くなっているのは、清瀬の病院街にある結核療養所の事情とさほど違いはない。

鬱蒼とした雑木林を抜けると住宅棟が並ぶ区画に出る。平屋建ての家が比較的広い間隔で建っている。その多くは空き家となっているが、中には普通に人が生活している家もあり生々しい。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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