浅草寺裏花やしき隣、浅草観光一等地の蔦まみれ終末空間「浅草観音温泉」はもはや遺産級 

台東区

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台東区 浅草

浅草と言えば「鯨(ゲイ)を喰って芸(ゲイ)を磨け!捕ゲイ船」みたいな街だし、そんな場所にある場末化したレトロ銭湯などそんな方々の社交場になっていないものかとノンケシェパードな我々取材班は勝手な心配を掛けて括約筋が引き締まる思いで居たのだが、朝は毎日6時半から開いてて気持ち良く朝風呂にも入れるというのが魅力的。

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ちなみに入浴料は700円と、今どきのスーパー銭湯並み。しかし実質街の銭湯並みの設備しか使えなくなっているので、東京都の銭湯入浴料金460円と比較するとコストパフォーマンス的には疑問が残る。だが天然温泉という事と浅草という場所を考慮に入れて、気にしないでおく。以前は2階でアカスリサービスが行われ、4階には大広間があったようだが…

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だが、正面玄関の扉を開けようとする手が一瞬止まるのであった。そこには手書きの張り紙があり、こう注意書きがある。「1才未満の赤ちゃんは入浴出来ません。うんち事件が多発の為」

うんち事件が多発の為

…と具体的に書いてしまっている。赤ちゃんのうんちもまあ嫌ですが、ジジイが漏らしてた方が個人的には嫌ですからこの注意書きはあまり気にしても意味がなさそうです。

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それから、こういう注意書きがわざわざある所も、ダメな大人大量生産設備が整った浅草という街ならではの現象なのである。温泉に入るなら飲むな、飲むなら温泉に入るな!って事です。その割には頭上の看板には「男は黙ってサッポロビール」と書かれていて、ちょっと矛盾してなくもない。

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赤ちゃんうんち事件やアルコールの件は理解できるが、意味不明なのがこの張り紙。ややゆんゆんとした電波を感じる。

「これを見て!!賢い人は大変だと思い。緩んだ人はバカ笑します。写メを撮る人は、脳指数の低い人です」

一眼レフカメラでがっちり構えてこの張り紙を撮った我々の脳指数は限りなくゼロに近いのでしょうか。個人的には脳もトロトロで緩みきっているようですみませんが、とりあえず扉を開けてとっとと中に入ります。

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浅草観音温泉のエントランスに足を踏み入れる。扉を開けてすぐ右手にいるガラス越しの窓口にいる店番のおっちゃんに700円を黙って払い中へ。貸しタオルも150円で行なっている(返却時に100円バック)らしいので、持ち合わせのないお客様も手ぶらでどうぞって感じ。正面の壁一面に浅草とはおおよそ関係のないヨーロッパ風の田園風景のイラストが広がっていて、ミスマッチ感が半端ない。

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そして気になるのが番台から隙間無く一列に置かれた大量のキャパシティを誇る古びた下駄箱。7×9マスが3台、つまり最大189足分の靴が入れられるのだが、そもそもそんなに客も来ないし下駄箱の鍵が付いているマスが半分くらいしかない。

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奥に並べられた少しキレイ目なロッカーは「月極貸」となっていて常連用のようだ。それにしても、この下駄箱に塞がれる形で本来二階へ通じる階段が見えなくなっていて、非常に好奇心をそそられる。「唄と踊り」があった上階の宴会場はかなり前に封鎖された模様。かつては今で言う健康ランドの走りのような存在で、まる一日過ごせるような庶民のパラダイスだったのだ。

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さすが昭和32年築だけあって、建物内部の古めかしさもまた一際目立つ。ニスが塗られててかてか一面を照らす木の床といい、まるで昭和の学校校舎のようだ。ボロいっちゃボロいけど、不潔さは感じない。

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下駄箱の壁を伝って左に折れると、そこで大浴場へ通じる脱衣室が男女別に分かれている。外国人観光客が時折ふらふらやってくる事もあって「男湯 MEN」「女湯 WOMEN」と英語併記。

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同じく外国人観光客向けに用意された英語版注意書き。オールドジャパニーズスタイルのアサクサテンプルを堪能した直後にジャパニーズトラディショナルなホットスプリングスにネイキッドでインしちゃえるユニークなエクスペリエンスに喜び勇んでガイジンさんがやってくるらしいが、我々が来た時も困惑気味に「どうすりゃいいの?」って顔で立ち尽くしている、白人金髪夫婦がおられました。

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他に先客もいたので、脱衣室やその奥にある素晴らしすぎる大浴場の写真は撮れなかったのが悔やまれる。他の方々が結構撮られているので、今の所は他を参考にしてもらいたい。人魚のタイル絵とか、水道管が壊れて湯が駄々漏れになった蛇口とか色々とワンダフルです。

で、風呂上がりにお子様を載せて遊ばせていたであろう、かなり年代物のバンビちゃんムーバーが据え付けられていて、懐かしいどころか、これで遊んでいた子供も今では男性なら中間管理職越えで頭がバーコード、女性は閉経後ではないかと思える程ですが…

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バンビさんは動きません

というあまりに残酷な一言がしれっと書かれていた…バンビさんの死を宣告した張り紙自体もかなり黄ばんでいて、死後数年か十数年か知りませんが、残念でした。

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という訳で、700円分の元は取れたくらいに異空間ぶりを楽しめた浅草観音温泉、準廃墟的扱いをされていたりと色々不遇で、いつ廃業してもおかしくなさそうなテンションだが、まだまだ全然現役で入れる場所なので、浅草の近くにお泊りの場合は朝風呂にオススメできそうだ。朝6時半からやってるよ!(但し水曜日定休)

<追記>浅草観音温泉は2016年6月頃、ボイラー故障による長期休業の後、再開の目処が立たず廃業となりました。建物も解体されています。

当記事の写真は2009年から2014年までのものが混在している為、玄関周りの標示物などが微妙に違っておりますことをご了承下さい。ちなみに当方の手許にある2007年の写真では正面玄関の左右2つの扉のうち右側も開放されていて「踊り専門会員制」「入場料1000円」の表記があった。


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