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元麻布「がま池」と本光寺のバラック住宅群

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六本木ヒルズが間近にそびえる港区元麻布。根っからの高級住宅街として知られるエリアで、それ以外のイメージが浮かんでこないような場所だが、そんな街の一角に「がま池」というなんとも鈍くさい名前の池が存在していて、その近くにオンボロバラックが建ち並ぶ奇妙な一角があるという話を聞いて、ぜひ見に行きたいと思っていた。

地下鉄麻布十番駅から商店街を横切って、元麻布ヒルズや中国大使館がある路地へ抜ける。途中、丘の上にそびえる六本木ヒルズ森タワーなどの超高層ビル群を横目に、何の変哲もない路地を南に下ると、途端に雰囲気が変わる。



そこは元麻布二丁目の一角、急に周りの視界が悪くなったと思ったら、そこは台地に囲まれた谷の底。関東特有の「谷戸」と呼ばれる地形だ。

本光寺という寺の崖下を回り込むように路地を進む。元麻布は東の高野山として古くに創建された「善福寺」をはじめ昔から寺町として続いてきた場所で、周囲には寺院が数多く点在している。

いつの間にか元麻布らしい高級感がすっかりと抜けてしまった不思議な一帯。高級マンションが消え、変わりに小規模の古い木造家屋ばかりになる。

そこを抜けると、浅草や曳舟あたりで見かけるようなバラック住宅群が突如として現れ始める。これが元麻布二丁目の谷戸である。

本光寺の南側一帯にこのようなバラック住居がおよそ30~40程度ひしめいている。同じ港区高輪の高野山裏の谷戸にもよく似た構造をしているのだが、寺の裏手で谷底、というロケーションがこうした独特の路地を残しているところが共通しているのが実に興味深い。

この住宅地の一帯は本光寺の所有地となっていて全て貸地になっているそうだ。本光寺自体も歴史の長い寺で、いつからそのような形になったのかは分からないが、想像を超えるような古い付き合いなのであろう。

現在はマンションの敷地の一部となり殆どが埋め立てられたという「がま池」から、昔はこの路地に水路が伸びていたと言われる。そこを埋め立てたか暗渠化して住宅を建てたという成り立ちのようだ。

敷地東側一帯はバラック群に張り付くような形で児童公園になっている。

この一帯の土地だけがすり鉢状に谷底に沈んでいるので、どこの風景を見ても周辺の建物や雑木林が斜め上からせり出している。

このバラック住宅群を除けば、他は大使館が建ち並ぶ超高級住宅地。凄まじいギャップだ。

路地の突き当たりから右に折れる。自動車が入れないような細い路地裏だ。

集落の路地を一番奥まで突き進むと、そこは麻布高等学校のグラウンド裏手の崖下である。袋小路のようになっていて、ここからでは大回りしないと学校の正門に行くことができない。

来た道を振り返ると眼前には2階建てのバラック住宅群、遠目には成り上がりセレブのステータスシンボル「元麻布ヒルズ」の棍棒型マンションがそびえる。対照的な光景だ。

狭い谷底の敷地に無理矢理家を建てている特殊性から、所々老朽化で建て替えられた新しい家などは建物の形がいびつである。

敷地東側の公園脇から坂道を登る。公園を挟んだ向こう側に広がるバラック群を遠目に見る事ができる。その向こうの雑木林は本光寺の墓地にあたる。この路地は本光寺とともに生きてきた。

坂を登るとやがて遠目に六本木ヒルズの建物が見えてくる。かつての江戸時代には町の外れで閑散とした土地だったと言われる元麻布一帯。それがいまや東京を代表するセレブタウンとなった訳だが、殆どが高級住宅街で埋め尽くされたように思えるこの一帯にもまだこのような土地が残っているとは、奇跡的とも言える。

麻布運動場方面へ坂を登る途中に「がま池」の事について書かれた案内板が建っている。大名屋敷の火消しのがま伝説に由来する池である。この案内板がなければ、よその人間からすれば池の存在すら気づかないであろう。
今では池を見るにも、池自体がマンション敷地にあって、隣接するコインパーキングの脇からちらりと見られる程度で、部外者には近づけすらしない場所だそうだ。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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