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東向島・私娼窟の痕跡「玉の井」 (4)

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戦前は東京最大の私娼窟だったと言われる「玉の井」の名残りを探す中、同じ道を行ったり来たり。
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再び玉の井探索の起点となるいろは通り商店街に戻ってきた。東向島駅方面から来ると商店街の南側からのアプローチになる。まずはY字路上に立つ交番を目印にすると良い。交番を左に曲がるとそこが戦後再興したカフェー街跡地への入口だ。


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古い個人商店ばかりのいろは通り商店街、そこにある何の変哲もない中華料理屋「生駒軒」。東京の下町には生駒軒の屋号を持つ中華料理屋があちこちにある(→詳細)関西で言う所の力餅食堂みたいなもんだろうか。
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商店街を入った少し先の所に唯一のチェーン店であるダイエー系列のスーパー「グルメシティ」(旧セイフー)と隣接する八百屋があり、その奥に寺が見える。寺と言えどもビル風の建物に建て替っているが「日蓮宗啓雲閣教会」という関東大震災後から存在する寺だ。
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寺の入口に置かれた願満稲荷社と書かれた小さな鳥居をくぐると、そこには小さな稲荷神社と、永井荷風「墨東綺譚」についての説明が書かれた看板が掛けられている。
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そこには永井荷風がこしらえた「墨東綺譚」の地図を模したものと、「寺じまの記」の一節が書かれていた。永井荷風が訪れていた頃にはこの付近にバス停があって、スーパー「グルメシティ」の建物は当時から存在していた寄席「玉の井館」を使い回しているものだそうだ。
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稲荷神社の目の前にはおそらく戦後から何も変わっていなさそうな下町の八百屋。昔の日本ならどこでも見られたかも知れないが、今見てみるとどこか東南アジアの市場にでも来たかのような気分になる。
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さらにいろは通り商店街の途中の中華料理「宝来飯店」の脇から北側の裏道に入る。
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車も入らない細い路地裏に入り込むと、まだ日も沈みかかっていないのに真っ暗だ。
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裏手に出ると空き地が寂しく広がっているが、目の前に遊郭建築が一軒残っている。
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白い外壁に角の曲線、2階にはバルコニー、和洋折衷のカフェー建築は個人宅として現役バリバリで使われていた。
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日が落ち始めると途端に街並みが闇に包まれ、それまでの街の喧騒が嘘のように静まり返る。やはり玉の井には闇が似合うかのごとく。
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夜になるとただでさえ分かりづらい道がさらに迷いやすくなってしまう。本当に迷宮です。
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そのうち、森の中に迷い込んだかのような路地裏風景が現れる。直ぐ目の前の家々では普通に下町の暮らしが営まれているが、外の世界は妖気が漂うかのように訪れた人間を惑わせる。
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やけに鬱蒼としていると思ったら、どうやら廃屋同然の一軒家の敷地にあった樹木が長年掛けて森と化したかのようだ。
未だミステリアスな街並みを残す玉の井の歴史、それは大正時代に浅草から移転してきた数軒の銘酒屋(酒屋を装った売春宿)が始まりである。
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浅草の銘酒屋が関東大震災で被災した後現地での再建を当時の東京市に認められず、東京市外(東京府南葛飾郡寺島町)にあった玉の井に一気に業者が流れ込んできて、さらに昭和初期には東武鉄道が浅草に開通した事で利便が高まり、歓楽街として凄まじい賑わいを見せていたと言われる。
日本の報道で始めて「バラバラ殺人」という名称が使われた玉の井バラバラ殺人事件(1932年)が紙面を賑わせると、皮肉にも玉の井の知名度も高まり、永井荷風が魅了されるような魔窟へと発展を遂げて行く事になる。
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そうこう歩き回っているうちにようやく迷宮を抜け出す事が出来た。荷風が愛した私娼窟もバラバラ死体が沈められていたお歯黒どぶも今では存在しないが、街に漂うオーラは時代が経っても変わらなかった。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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