料亭街、フランス人街とおしなべてオシャレでハイソなイメージの漂う「神楽坂通り」も、飯田橋駅寄りの外堀通りに近い部分は雰囲気が一転し、どこかしら猥雑で庶民的な佇まいがする。
外堀通りの裏側に並行する「神楽小路」という少し怪しげな路地裏に足を踏み入れる。全長100メートル程の短い裏道ではあるが、神楽坂上の石畳の街並みとは雰囲気が全然違っている。
神楽小路は完全にサラリーマン向けの横丁といった趣きで、居酒屋やスナックの密集する一帯、それに「お一人様」向けの洋食屋などが立ち並んでいる。
路地裏の中程まで歩くと、居酒屋に混じってパチンコ屋の入口まで現れ、料亭街神楽坂のハイソなイメージとは程遠い光景となる。心なしかオヤジ密度も上がった気がするぞ。
パチンコ屋の隣が神楽小路の中心地帯。東邦ビルという戦後のドサクサ感溢れる2階建ての飲食店だらけのビルがあり、外堀通り沿いに仰々しい姿を見せているのだが、こちらがビルの裏側という事になる。
この東邦ビルがコの字型になった部分に「みちくさ横丁」という、とてもベタなネーミングの路地裏横丁が潜んでいるのである。こんな物件があろうとは飯田橋も意外に侮れないと思った。
みちくさ横丁は周囲の建物の構造上、神楽小路方面からの袋小路になっていて外堀通り側からその姿を見る事はできない。小規模な酒場や小料理屋などが十店舗ほどひしめき合っている。
中には昭和の香りがプンプン漂う独特のタイル貼りの外観を持つスナックも紛れていて、いちいち店の個性的さに感心する。
かと思えば新宿ゴールデン街か中野か高円寺にでもありそうないかにも中央線系な酒場も隠れていたりする。だが奥まで進んでも行き止まりなので、結局戻るしかないのだ。
みちくさ横丁を抜けて神楽小路の端まで行くと、今度は「くらら劇場」という物凄く怪しいネーミングの地下映画劇場が現れるのだ。神楽坂にまさかこんなものが残っていようとは。びっくり。
店の看板がスプレー書きになっているというのも妙に惹かれてしまう外観。入場料金900円均一とある。こういう場所と言えば上野か浅草を思い浮かべるが、この手の古参映画館では大御所の上野オークラ劇場も最近リニューアルして小奇麗になってしまった今、この「くらら劇場」の存在はある意味貴重。
玄関横には上映中の映画と、次週上映予定の映画の告知板がある。いちいち手書きになった看板のアナログさも素敵。
上野オークラ劇場と同じく、ここも例に漏れず玄人向けな紳士の社交場となっているようである(女性は入場禁止となっている)。場所がオフィス街なので昔から仕事をさぼって休憩がてら訪れるオジサマ方が多かったらしい。
ちなみにくらら劇場から表に回ると名画座ギンレイホールという、ノーマルな方の映画館も現役営業中。飯田橋界隈なんて完全にオフィス街だと思っていたが、認識を改める必要がありそうだ。
<追記>「くらら劇場」は2016年5月31日で閉館しました。隣接するギンレイホールは引き続き営業中。


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