京浜東北線に乗ってひたすら大宮方面に向かうと、大宮の3つ手前、浦和の次のところに「北浦和」という駅があり、このへんに来るとかつてのテレビ番組・タモリのボキャブラ天国にあった山本リンダの替え歌ネタで「浦和は7つの駅がある」というのを脊髄反射的に思い出してしまう困ったレトロ脳なのだが、今は埼玉高速鉄道の浦和美園駅もあるので浦和には8つの駅があるんだな…と、のっけから話が脱線してしまったが、いずれにしても地元民でなければあまり来ない場所であるには違いない。
そんな北浦和駅で降りると東西双方に商店街があり殊の外栄えている街である事に気付く。駅前は雑多な繁華街的風情だが、西川口や蕨のようなどこか危険でアレな香りがする事もないし、変な外国人がたむろしている事もない。文教都市浦和ですからね。
北浦和駅東口から少し歩いた所に「栄通り」というちょっとした飲み屋小路がある。かなり場末感のきつい佇まいだが、駅からバスターミナルが入居するビルの間を抜ける通勤客が頻繁に通行するので人通りは一応ながら激しい場所だ。
そんな飲み屋小路に昼間から行列ができている中華料理店「娘々北浦和店」。地元民のパワーフードでしょうか。店の前に浦和レッズの旗やポスターが掲げられているあたりがサッカー王国浦和のお土地柄である。
この栄通り沿いにやたら気になる駐輪場を発見した。そりゃ駅前だし駐輪場の一つくらいあるだろうと気にも留めずに素通りしてしまいそうになるが、どこかしらその佇まいに違和感を感じた。「北浦和駐輪場」という単刀直入過ぎるネーミング。うーん…
入口の横にある「更新の受付」と掲示された看板、それを囲っているどこかで見た事のありそうな独特な形状のごついフレームが一体何なのか、思い出すのにさほど時間は必要としなかった。これは…元キャバレーではないのだろうか。
24時間管理された駐輪場で、1階下段は月額3000円だが、1階上段と2階は月額2500円で契約する事が出来るという月極駐輪場、兎角気になってしょうがないのが、どう見ても元キャバレーにしか見えない2階部分である。古風な筆字と、「静」「負」の旧字体が際立つ手書きの警告文もじわじわくる。この勢いだとオーナーはかなりのご高齢ではないだろうか。
2階へ続く階段を見上げると、足下こそは駐輪場らしく自転車を押して上げ下げできるようスロープが設置された階段に変わっているが、さすが元キャバレーっぽく、壁一面が真っ赤っ赤なんですよ。
昔の設計の建物なのだろうが、階段と天井の間の高さが足りず「頭上注意」の看板がある通り、身長が高いと頭をマジでぶつけてしまうほど低い。屋根付きの部屋の中に月額2500円で自転車を置かせてもらえるのなら多少の不都合は目を瞑るしかないですかね。
階段を登り切って2階に上がるとこの通り。完全に元キャバレーの内装がそのまま残されているのに、そこには自転車がいっぱい停められているというこのシュールな光景。個人的にはこれを見た時点で東所沢駅前アサヒヤ駐輪場に次ぐ埼玉奇天烈駐輪場コレクション入り確定。
キャバレー時代にあったトイレの個室への扉は塞がれたままで、駐輪場の利用者がトイレを使う事はできない。しかしその入口付近の内装や「TOILET」の看板もそのまんま。生々しすぎますね…
かつて大広間だったと思しき部屋が駐輪スペースになっていて、見た所30台くらいは自転車が停められているものと思われる。窓という窓は全てベニヤ板で塞がれ、明かりは天井の蛍光灯だけ。防災上如何なものかとは思うんですが…
もう一つある別室。元事務所とかでしょうかね。こちらも自転車置き場になっとります。
で、一体ここはかつて何だったのか少し調べた所、北浦和駅東口のここら一帯はかつて結構な盛り場で、やはりこの建物も元キャバレーで間違いなかったようで、しかも「クラブお静」という古風な屋号だったという事までは解ったが、この先の詳しい事情はまたの機会にお伝えできればと思う。