久しぶりに渋谷の街を訪れた。スクランブル交差点や渋谷センター街などを見ていると相変わらず「若者の街」らしい雰囲気だが、それ以外の渋谷の街は案外シブイもので、博打オヤジの溜まり場もあればホームレスの溜まり場だってある多民族的な街なのだ。
久方ぶりに訪ねた目的は渋谷で一番のホームレスの聖地である宮下公園が現在どうなっているかという事を確認したかったのだ。ここには以前から何度も訪れている。命名権を買ったナイキによって公園が再整備される事が決まりホームレスやプロ市民が反対運動を起こしていた事でも記憶に新しい。しかし予定通り公園のリニューアル工事は完成し、全くもって別の姿に変わっていた。
当然ながらホームレス避けである鉄のフェンスと扉が公園入口にガッツリと取り付けられている。夜中はことごとく扉が閉ざされ人の出入りを拒んでいる。元から宮下公園はホームレスだらけの公園だったが、夜中になるとこの世の闇の住人が一斉に出没する超危険地帯でもあったのだ。
そんなダークな公園の公衆便所も命名権を購入したナイキの負担で全面的に綺麗に生まれ変わってしまった。
リア充な公園利用者としては健全になってくれてごもっともな展開だが、せっかく命名権を買ったのにプロ市民にゴネられて泣く泣く「宮下NIKEパーク」の名前を取り下げる事になって企業アピールにもならないのに公園の隅々まで自分の金で改修して、企業の立場からすると微妙に気の毒な感じがしなくもない。年間1700万円で10年契約だから結構な出費だよね。
公園ナイキ化計画で新たに誕生したクライミングウォール。これが新しい宮下公園のシンボル的存在になっている。左側のロープクライミングの壁は高さ7.5メートルあって利用は認定証取得者に限られているが、右側にある低い壁は利用料を払えば誰でも登る事が出来る。
宮下公園は予想通り、以前までのダークな雰囲気は欠片もない、健全過ぎるリア充専用空間へと姿を変えていた。名前もナイキパークではなく、平仮名の「みやしたこうえん」に変わっていささかゆとり仕様。
ヒップホップな落書きで埋め尽くされていた公園内の歩道橋も見ての通りまっさら綺麗に変身してしまいました。一時期閉鎖されていたフットサルコートも再開、何事も無くナイキパーク化が完了している。
健全な公園はリア充の皆様に任せる事にして、そろそろ退屈になってきたので公園の周囲を見てみる事にする。プロ市民が群がり反対運動が巻き起こった末に追いやられた公園の住人達はどこに消えたのか…
公園の真下を見下ろすと、そこには掘っ立て小屋を連ねてしぶとく生活を続けるホームレス村が現存していたのだ。暗渠化した渋谷川の上に整備されたバイク駐輪場と宮下公園下の駐車場との隙間の僅かな土地に「家」が建ち並んでいる。
公園の下に回りこむと、どこからともなく異臭が漂ってくる。どうやらここのホームレスさん達はゴミの回収をやっているらしい。
そして階段の下は宮下公園住人達のプライベートスペースになっていてテレビを見ながらテーブルを囲んで酒盛りをしている姿がブルーシートの隙間から見える。これは宮下公園がナイキ化する前から全く変わっていない。結局ホームレスの完全排除は不可能だったのだ。
暗渠化した渋谷川の上に連なるホームレス村の「家」の数々、心なしか以前よりも数が増えた気がする。
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