横浜市中区大平町、大芝台の一角、米軍根岸住宅と隣接する土地に広がる「横浜市根岸共同墓地」の様子が異様過ぎるというので一度この目で見るべく現地を訪ねた。
最寄り駅なんてものはなく、横浜駅か伊勢佐木町あたりから根岸方面行きの市バスに乗って山元町商店街あたりで降りて、そこから谷筋の怪しい路地をてくてく上り詰めていくと、その先に突然開けた土地が現れる。そんな場所だ。いよいよ墓地らしく傍らには石材店が何軒も並ぶ光景が見られる。
そして石材店が立ち並ぶ路地の向かい側、石垣が組まれた一段高い土手の上に唐突に墓場が並んでいるのが目に入る。これが根岸共同墓地だ。
だがその墓地の様子が異様なのはのっけから壊れた墓石の一部が道端に捨てられていたりする事。地震か何かで壊れた墓なのか、親族が居なくなって無縁化した墓なのか、それは定かではない。
付近に根岸共同墓地と明示された案内も一切なく、そこはまさしく地元の土着民による市民墓地といった所。春は桜の名所となる東京の谷中霊園だのを見てきた後だと、このあまりの何もなさは凄い。
共同墓地の入口付近に大きなトタン葺きの倉庫のような建物がある。どうやらこの墓地を管理している民間業者のものらしい。この共同墓地は「横浜市」を冠していながらも横浜市が管理している訳ではないようだ。周囲を見回しても個人経営の小さな「茶屋」がいくつかあるだけで、ちゃんとした事務所らしいものもない。
墓地内を進んでいくとやがて周囲は墓場だらけになる。見れば分かるがブルドーザーでガリガリと整地した痕跡などなく昔のままの丘陵地の地形をそのままに墓地が作られているので、整然とした感じもない。まさに墓場の山。
もちろん大半の墓はきっちり各々の親族によって管理されているのだが、墓地内の通路や何やらのインフラ部分が全然駄目でガタガタになっているわ、崖っぷちには転落防止柵すらない。
むしろ墓地の大部分は舗装すらされておらず赤土の地面が剥き出しになったままの所も目立つ。ひたすら荒涼とした風景に昼間でもうすら寒さを覚える程だ。怪奇映画のワンシーンに現れるような空間である。
そして通路のあちこちには荒廃し無縁墓と化したらしい古い墓もそのまま置かれていたりしていよいよヤバさに磨きがかかってくる。長年の経過で周囲の土が流されてしまい土台の下まで剥き出しになった墓も目立つ。不気味過ぎる。
ふとそのへんを見渡すと墓地の間にある一角がとんでもない事になっていた。壊れた墓石の欠片や仏具、食器類、供え物の残骸と思しきものが瓦礫となって丘の斜面を埋め尽くしている。これは一体どういう事なんですか。マジで怖い。
そんな不気味な墓地でも、晴れた日には広々と横浜の街並みを拝む事が出来て、ランドマークタワーなんぞも見えたりする。近くの山手外国人墓地は観光名所化しているが、この根岸共同墓地こそがガチな横浜の異界である。
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