東京都区内最南端の繁華街「蒲田」と言えば下町風情全開でホームレスのオッサンが多くて難民キャンプ臭半端ない街だが、最近は駅ビルが小奇麗になって、貴重な観覧車付きデパ屋遊園地で有名な「東急プラザ蒲田」もリニューアル、様々イメチェンしとりますが、今回我々が見に来たのはそういうものではない。
蒲田駅西口と東急池上線蓮沼駅との間を東西に貫く「蒲田西口すずらん通り」にやってきた。どうやらこの辺に所謂青線、特殊飲食街の成れの果てではないかと見られる飲食街が残っているというので、見に来た訳だが…
蒲田西口すずらん通りは地元出身の漫画家石井いさみ氏のヒット作「750ライダー」の絵があっちゃこっちゃに描かれていて、中年未満には世代の違いから今ひとつピンと来ない古い漫画のネタといい微妙な寂れ具合といい、物悲しい気持ちにさせてくれる商店街だ。
そんなすずらん通りから路地を南に折れると東横インやら他にも怪しげなホテルがぽつぽつ並んでいる場所がある。住所で言うと「西蒲田7丁目24」。東京蒲田病院の裏あたりで、結構駅からも離れていて中途半端な場所なのだが…
すずらん通りを一本南側に並行する路地に、なかなかの貫禄を持つ古びた飲食街が唐突に現れる。場末の長屋の飲食街といった風貌。路地の両側に居酒屋、スナックが十数店舗ひしめいている。規模的にはそれほどではないが、密度が濃ゆい…
新宿ゴールデン街を彷彿とさせる、相当に古い佇まいの店構え。蓮コラの如く沢山の丸い穴が開いたブロック塀で飾られたスナックといいセンスが凄い。東京の外れにある蒲田というお土地柄だけでも場末ムード盛り沢山なのに、こんな町外れにこんな激渋過ぎる飲食街が存在するなんて…蒲田の奥深さは尋常ではない…
そんな中、やけに晴れだつ青一色のスナックの玄関扉。その左上には「未成年の客は当店にはいれません 店主 蒲田料飲喫茶業組合 蒲田警察署」「蒲田料飲喫茶業組合員之章」と書かれた古い鑑札が打ち付けられていた。
もうすぐ戦後70年近いですがこの怪しげな飲食街では世代を超えてどのような徒花が咲き乱れていた事であろう。こちら西蒲田七丁目の飲食街は、新宿ゴールデン街のように非合法的な私娼窟(青線)が形成されていたらしい。
特に「BAR黒ばら」の店構えがたまらん…見た限り、ここもまだ現役みたいである。これだけ場末なロケーションならそろそろ廃墟化してもおかしくない物件だが、やはりそこは蒲田という土地柄だけに需要が有り余っている証拠なのか。
大規模な町工場地帯と労働者人口を抱える蒲田周辺は戦後多くの赤線青線が入り交じる無法地帯さながらの状態で、京急蒲田駅前の柳通り、武蔵新田の赤線、色々存在は知っていたが、こちら側は最近まで知らなかった。
さらに長屋と路地を向き合うようにそびえる二軒の建物もまたクオリティが高い。両側の建物角にアールが施され、その一階部分に玄関口が斜めに配されている。そして玄関横の公明党ポスターが場末の飲食街に彩りを添える。
そうかそうか、こんな所にも戦後の残照が生き残っていたとは…と感心せずにはいられない光景。蒲田はだいぶ大人しくなったように思えるが、川向かいの川崎なんか堀之内とか南町とか未だにヤバイっすよね…
こんな場末の飲み屋街にも韓国スナックがさりげなく入っているのも場所柄なんですかね…蒲田駅からも全然歩いて来れる場所なので、蒲田で下町飲み歩きの際はこの辺まで足を伸ばして来ると面白いかも知れない。


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