川崎北部民・新旧百合ヶ丘対決 (1) 百合ヶ丘駅前

川崎市北部の麻生区住民を名乗る読者の方からメールを頂いた。
「東京DEEP案内で川崎といったらもっぱら海側ばかり取り上げてますがたまには山側も来てください」
そういえば川崎市北部は全くノーマークだった。
小田急線や東急線に乗ると、いかにも幸せそうな家族が乗っていたり、頭が悪そうなのにやたら金だけ持ってるにわかセレブが乗っていたりするもので、あまりDEEP案内的じゃないなあという個人的な偏見があったからかも知れない。まあ南武線は総じて貧乏臭いんですが。
しかし東急線のように沿線そのものをブランド臭くしているケースとは違って小田急線の場合は「新百合ヶ丘」といういかにも幸せ家族の住む「リア充の巣窟」であるニュータウンの存在が大きい。特に新百合ヶ丘住みのマダムは「シンユリネーゼ」だなんて呼ばれていて、街全体が川崎のビバリーヒルズと化している。
しかし、それ以外は案外胡散臭い街が多いぜと、その読者の方の意見にはあった。
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最後に「新百合ヶ丘はいかにもって感じだけど、隣の百合ヶ丘なんか面白いかも知れませんよ」と話が来た。それなら一度くらいは行ってみようかと、我々は普段あまり乗らない小田急線に乗って「百合ヶ丘駅」にやってきたのである。


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隣の新百合ヶ丘駅がまだ無かった時代、1960(昭和35)年に開業した百合ヶ丘駅は、当時何もない丘陵地帯だったこの界隈を造成して作られた「百合丘第一団地(現:サンラフレ百合丘)」の交通の足として整備されたものだった。
昭和35年と言えばまだニュータウンという言葉があったかどうかも良く分からない時期だったかも知れないが、その頃からニュータウンとして開発されたのがこの界隈。駅南口にはそれ相応に年月を刻んだ駅前商店街が並んでいる。
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「ゆりストアー」など一通り買い物機能が備わった駅前から一歩裏手に入るといきなり廃墟同然の裏通りが現れるのがオールド百合ヶ丘クオリティ。バレエ教室などもあるが、潰れたままの店があったり蜘蛛の巣が張り巡らされていたり総じて荒れた雰囲気だ。
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洋館風の三階建ての建物はかつて喫茶店か何かに使われていたものだろうか。
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玄関を見ても長年使われている形跡がないことが分かる。見事な駅前廃墟。オシャレで綺麗な新百合ヶ丘の隣の駅がこれ。ニュータウンも50年経過するとオールドタウンに変わる典型例。
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裏通りに居るだけで最早鬱々とした気分になるので、そのまま商店街らしき筋に入る。
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そこにはおおよそシンユリネーゼには縁遠い「スタミナの王者 カッパ大王」などという強烈なネーミングの中華料理屋が立ちはだかっている。ホッピーに豚足と、サイドメニューもなかなか闇市横丁系で素晴らしい。但し店構えは改装されてしまいちと小奇麗になりすぎた。先代のマスターが亡くなり世代交代する前はもっと凄まじい店だったようだ(→昔の写真
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かつての百合ヶ丘名物とも言われた「カッパ大王」と双璧を成すようにもう一軒の中華料理屋「大京園」が建つ。こちらは真っ赤なガラス扉という怪しさ満点の玄関といい、昭和臭さが残っていて素敵。どっちの店も全然お客さんがいないのが引っかかるが。
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やたら個性的な二軒の中華料理屋が並ぶ一画は百合ヶ丘駅前商店街のうち「一番街」と書かれた横丁にあたる。奥行き30メートルほどの短い空間だが思いっきり昭和的な風景が凝縮されている。他には学生服の店などがある。
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新百合ヶ丘なら高級スイーツの店ばかりだが、旧百合ヶ丘の商店街で売られているのは駄菓子屋にせんべいとかそんなんばっかり。店主のばあちゃんも髪の毛が真っ白になっている。ひたすら時代を感じる。
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駅前商店街にも店舗の看板が出ている。表に立つのは酒屋とタバコ屋の兼業店舗である。総じて店の雰囲気は時代から取り残されたかのようになっていて面白い。
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商店街の横手に回るといきなり階段が続いている。これを見ると急峻な傾斜地を造成して作られた駅前商店街だということが分かる。
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ちなみに階段を上りきると「サンラフレ百合丘」という旧公団住宅を建て直した新興マンション街が並ぶ。
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商店街の裏手の年季の入り方も相当なものだ。かれこれ50年近くやってきたのだ。そりゃあくたびれても仕方がない。
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この辺りの家屋を見るとみんな崖っぷちに家を建てているのが見える。横浜も川崎も凄まじくベッドタウンだが無理矢理崖っぷちに家を建てるのが大好きな県民性は昔からなのか。
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どうやらさっきの「カッパ大王」のある商店街まで裏手の階段で戻れるらしい。多摩丘陵が作り出した新興住宅街の走りとなった百合ヶ丘。のっけから街が立体的である。

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