川崎北部民・新旧百合ヶ丘対決 (3) シンユリネーゼ

川崎北部民の生活実態を観察すべく小田急線に乗り込み百合ヶ丘駅を降りた我々は弘法の松公園を過ぎていよいよ川崎のビバリーヒルズとも一部では言われている高級住宅ゾーン・新百合ヶ丘に足を踏み入れるのだ。
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特に新百合ヶ丘界隈で高級住宅街とチヤホヤされる一帯は川崎市麻生区王禅寺、上麻生四丁目の「山口台」がメインだ。のっけからビバリーヒルズの日本版邸宅がずらりと軒を連ねて、ガレージにはBMWかベンツかクラウンというように、いやらしいくらいに高級な住宅街が姿を現す。


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あまりに高級住宅地だらけでちっとも面白くないので途中の風景をことごとく省略しまくっているが、新百合ヶ丘駅方面に歩くと現れるいかにもシンユリネーゼな雰囲気の「山口台」は新百合ヶ丘界隈きってのステータスゾーン。幅の広い歩道、街路樹、邪魔な電柱すら生えていない(地中化してるのか)、たまに見かける店はドッグカフェや犬猫病院、ペット関係の店ばかり。それに走っている車はみんな外車。まさに絵に描いたようなセレブタウンだ。
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あまりに金持ち向けの店ばかりしかなく総じて貧民の東京DEEP案内取材班にはいささか居心地の悪さも感じない事もないが、ガソリンスタンドに隣接して、まるでマンガみたいな外観のメルヘンチックな家が現れる。これは何かと近づいてみると、駐車場にはひっきりなしにスイーツ(笑)なシンユリネーゼや幸せそうな家族連れが乗っているだろう高級車が次々出入りしている姿が見える。
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この変な建物の正体はしんゆりマダム御用達のスイーツ店「ウィーン菓子工房・リリエンベルグ」である。ただの川崎の田舎の洋菓子店ではない。あの「美味しんぼ」の44巻にも登場した超有名スイーツ店だ。シンユリネーゼ文化ここに極まれり。さすが高級感漂わせるだけあって少々値が張るが、とりあえず適当にケーキを3つ買って出てきた。
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近所のバス停にも「リリエンベルグ前」とわざわざ書かれている。
それにしても行き先は「あざみ野」「たまプラーザ」と総じてセレブタウンばかりである。
さっきの百合ヶ丘のくたびれた街並みはどこへやら。まるで別世界のようだ。
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この辺のバス停にある待合用の長椅子はいつの時代のものか意味不明な「男性かつら」の広告になっている。金持ちほど頭が禿げると外見を気にしてしまうもの。カツラもきっと飛ぶように売れる事だろう。
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そんなこんなで新百合ヶ丘駅前に辿り着いた時にはすっかり日も暮れてしまっていた。
ここに来ると完全なニュータウンの駅前風景しか存在しない。赤提灯や闇市横丁はどこを見回してもありません。
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小田急線新百合ヶ丘駅は隣の百合ヶ丘に遅れること14年、1974(昭和49)年の開業。当初はただの山しかなかった場所に、川崎市がマジになってまるごと山を削りまくって「ここを川崎北部の副都心にしよう」と作り上げた人工都市なのだ。
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ただ開業数年間は山の中にポツンとでかい駅があるだけの状態だったが、本格的に宅地開発されて今のようなシンユリネーゼだのと浮ついた言葉が出回るようになったのはバブル期になって都内に住んでいたセレブ層の目が郊外に向き始めてからのことである。特に駅前の商業施設群が充実しはじめたのは平成に入ってから。それまでは駅前はだだっ広いパークアンドライド駐車場が広がるのみだった。
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今でも新百合ヶ丘の駅前だけは飛びぬけてオシャレでスイーツ(笑)な空間と化している。ボディショップ、ラッシュ、カルディ…なぜこういう場所には型にはまったように同じ店しか入っていないのだろう。
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ご覧の通り全く毒気の抜けた街並み。駅南口にはには一通り「サティ」「オーパ」「エルミロード」などの商業施設と小奇麗なショッピングモールが並んでいる。いわゆる一人住まい用に使う立ち食いそばは奥に追いやられているし、松屋も吉野家も皆無。街全体が風俗営業禁止区域で、駅北口に非常に「上品な作り」のパチンコ屋が一軒ある以外は風俗店やら個室ビデオなど怪しげな店は皆無。完全に漂白されきってます。
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家に帰って「リリエンベルグ」で買ったスイーツの数々を食べる事にした。いちじくをタルトにしようなんぞ、そこらの田舎のケーキ屋にはない発想の違いを感じる。これがしんゆりスタイル。恐らく東京DEEP案内取材班が住むようなことは永遠にあり得ないだろうが。

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