忘れられた横浜「新子安」 (1) 踏切寺・遍照院

横浜市神奈川区、新子安駅近くに奇妙な寺があるという話を聞きつけてやってきた。その名は遍照院という寺であるが、寺の境内のど真ん中を鉄道が走っていて、しっかり踏切も用意されているという。「踏切寺」として鉄道マニア、寺マニアの注目を集める。

JR、京急の新子安駅から第一京浜に沿って東へ5分程歩いた場所にその寺はある。周りはしなびた下町でしかないが、ひっきりなしにJRと京急の電車が走る交通の要衝。確かに見てみると寺の門前に唐突に踏切があってシュール。



そこは京急の踏切である。しかも閉まるタイミングが頻繁にあるので油断できない。既に遮断機が降りている。

…かと思った瞬間、京急名物爆走快特電車が眼前を突っ切り始めたではないか。時速120キロで容赦なく住宅街をぶっ飛ばす快特電車が目の前を走り抜ける快感。この臨場感をお伝えする事ができないのが残念だ。

どうにか目の前の踏切をやり過ごすと、ようやく遍照院の中に入る事ができる。とは言えさほど大きな寺ではない。高野山真言宗に属する寺で、同名の寺が日本各地にある。

小さいながらも落ち着いた雰囲気を保つ、ごく普通の寺だ。ただ、しょっちゅう電車が走り抜ける音がする。周辺には普通にボロアパートがあったりするわけだが、この辺の住民は騒音問題も慣れっこなのか?

本堂の前に植えられた棕櫚の木がたいそう立派である。ヤシ科の植物だが、これだけ日本の風土に定着している木は他に無いだろう。庭先によく植えられているのを見かける。

遍照院の境内を散策して、さて戻ろうかと思っても遮断機が閉まったままになっている。電車が通り過ぎるまでは出られません。

遍照院を過ぎて第一京浜を生麦方面に歩くと、不思議な事にこの辺りの民家にはやたらバラック建てのボロ家屋が多い事に気がつく。一体何故。

路地に一歩足を踏み入れると、やはりそこには時代に取り残されたような風景があった。

昔のままの状態で残された井戸の存在もある。京浜工業地帯が近いという場所柄を考えればとても飲用できるとは思えないが、今も使われている形跡があった。
横浜・川崎間の各駅停車しか止まらないエリアは総じてレトロ具合がハイグレードであり街を歩いていても飽きる事はない。東京の墨田区や台東区と並んで、下町風景が残されている都市遺産のような存在だ。
参考動画
京急快特の爆走前面展望動画(京急川崎→横浜)
動画の3:49辺りに遍照院前の踏切が現れる。

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