台東区小島、鳥越にあたる、地下鉄新御徒町駅と蔵前駅の南西方向にあたる一帯は戦災を奇跡的に免れた古い台東の下町風景が克明に残された貴重なエリアになっている。
山手線の御徒町駅からだと少し遠いが歩いて行けなくはない距離にある。新御徒町の佐竹商店街を過ぎた清洲橋通り東側一帯の部分にあたる。昔ながらの古い路地があちらこちらに残っていてタイムスリップしたも同然の状態になる。
小島、鳥越の界隈は古い木造アパートと町工場が混在する地域で、戦前から零細工場で共働きで生計を立てる世帯が多く、日常的に惣菜を売る市場が集まって出来たのが鳥越一丁目の「おかず横丁」であると言う。現在も街のベースは全く変わっていない。
民家の軒先にはかなり古い牛乳ポストが掛けられている。
「おかず横丁」の北側、小島一丁目方面から南に歩く。表通りにも当たり前のように戦後のそれを彷彿とさせるような木造建築が並んでいるのがこの付近の街の特徴。
店舗兼住宅として建てられたであろう3連棟続きの住宅の外壁に張り巡らされたトタン板の錆び方がもはやアートの領域。
そして建物の角はタバコ屋。まさに王道である。
良く見れば散髪屋の回転灯も掛かっているので、タバコ屋と兼業していたのだろうか。
おかず横丁に向かって歩いている最中にもついふらふらと迷い込みたくなるような路地裏がびっしりとひしめいている小島一丁目界隈の下町風景。台東区内の住宅地でも指折りのクオリティを持つ。
そんなこんなで寄り道を繰り返しながらようやくおかず横丁へ。だが思いの外寂れているので拍子抜けした。実は「おかず横丁」は日曜日に来ると容赦なくシャッター街なのである。元々はこの辺の零細工場で働く共働きの夫婦を得意客にしている惣菜屋が商店街のメインなのだから、致し方なし。
だが店は閉まっていても、商店街を構成する店の建築群のバラック率の高さがハンパない。街並みを見るだけでもこの商店街に来る価値があると言っても良い。
外壁がまっ黄色に塗り潰された食料品店の建物。店先の窓の周辺が崩壊寸前になっているがそれでも現役なのがおかず横丁クオリティ。
おかず横丁はどの駅からも離れた場所にあるため、ひょっこりと観光客が来るような事もなく、付近は地元民で溢れ返っている。ある意味最も東京らしい下町風景が残る一帯とも言えよう。散髪屋の看板も個性的で素晴らしい。
八百屋の「清浄野菜」と書かれた看板も独特である。終始こんなテンションで商店街が広がっているのがおかず横丁なのである。ひょっこり地元民のふりをして買い物に来たい。平日か土曜日に。