【ゴリ押し】山手線新駅名「高輪ゲートウェイ」がなぜ嫌われまくっているのかを考える

時事・災害

2020年、品川-田町間におよそ半世紀ぶりに新駅開業予定のJR山手線の駅名が、大々的に公募されていたにも関わらず、数ある有力候補とそこに投じられた大多数の票を完全に無視して、130位、わずか36票の「高輪ゲートウェイ」なる意味不明な駅名に決定して、その事で色々と騒がしくなっておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

我々DEEP案内取材班が「高輪」という地名を耳にすると真っ先に思い浮かべるのが桁下1.5メートルの激狭ガード下「高輪橋架道橋」、もとい「提灯殺しガード」である。東京DEEP案内でもかなり昔の記事で紹介した物件だ。懐かしいっすね。

ある意味この異様な空間こそが真の「高輪ゲートウェイ」な感じもしなくもないですが、新駅はこの高輪橋架道橋から200メートルほど南側で絶賛建設中である。「グローバルゲートウェイ品川」という再開発地域のカタカナ名称をそのまま駅名にねじ込んだみたいですが、どこぞの広告代理店の組織票だか何だか知らない“ゴリ押し駅名”が出来レースで採用されるのなら最初から公募などするべきではなかろう。何がやりたかったんだJR東日本は。

ガードの天井が低すぎるあまりタクシーの屋根の提灯(正確には行灯)が壊れることで知られる名物ガード下も、今回の高輪ゲートウェイ駅の開発に合わせて改良工事が行われ、桁下制限高4.5メートル、片側二車線のちゃんとしたアンダーパスに改良される予定で、この風景は閉鎖・消滅することになる。

山手線の路線図に「高輪ゲートウェイ」が入ると違和感バリバリな件

この度の山手線新駅爆誕によって同線は駅数29から30に増え、路線図も上記の通りとなる。他の29駅は全て漢字二文字から四文字ですっきり統一されているのに、ゴリ押し的に決まった新駅「高輪ゲートウェイ」がこれに入るとそこはかとない違和感が漂うのである。本当にこれでいいのですか皆さん…とりあえず地元の港区高輪の方々は新駅の名称には喜び半分困惑半分らしいですけれども…

このゴリ押しカタカナ駅名にとうとう反旗を翻し「高輪ゲートウェイという駅名を撤回せよ」と署名活動を始める文化人も現れる始末である。エッセイスト能町みね子氏が発起人となりchange.org」に立てられた署名キャンペーンには2018年12月14日現在で32,660人もの賛同者が署名済みである。

「高輪ゲートウェイ」はなぜおかしいのか?他のカタカナ駅名を見てみよう

高輪ゲートウェイという駅名に違和感を示す人々のあまりの多さに、この駅名に決めた当のJR東日本の関係者も「こんなはずでは…」などといささか困惑すらしているのではないか。

かつて30年前の国鉄分割民営化で「国電」に代わる愛称として、どこぞの“パッとさいでりあ”もとい小林亜星などを選考委員に迎え、公募の結果を無視して得票20位の名称を決定して大々的にアピールしたものの全く普及せずに半ば闇に葬られた「E電」の再来を思わせる。

日本エイサー Gateway NE572

だいたいゲートウェイだなんて、パソヲタにとっては一昔前のパソコンメーカーを思い起こすネーミングでしかないし、空港もなければ新幹線はここではなく隣の駅だし、これでは外国人観光客も「Why?」と首を傾げる事だろう。

そもそも“公募の結果で駅名を決める”という民主的なプロセスを一旦は取り入れたものの、その後一切無視して独断だけで決めてしまった事への反発ももちろんあるだろうが、既に日本国内にはカタカナ駅名自体、結構あちこちにある。それを見てみることにしよう。

例その1:りんかい線(東京テレポート、天王洲アイル、品川シーサイド)

まず高輪ゲートウェイ以外に思い浮かべるカタカナ駅名と言えば、そこから手近な位置にあるりんかい線の「東京テレポート」「天王洲アイル」「品川シーサイド」の三駅である。特に天王洲アイル、島の“Island”ではなく、あえて小さな島の意を示す“Isle”を採用するあたりがバブリー感半端ない。このネーミングセンス、今の世代の連中にはそうそう思いつかない。横文字付けてりゃ格好良く聞こえるだろ?という、バブルの旨味を吸い尽くした一昔前のコピーライターのようなノリである。

バブル期の残り香漂わせる浮付き気味なカタカナ駅名が3つも並んでいる光景に思わず吹き出しそうになった事もあったが、りんかい線自体がバブルの遺産とも呼べるし、天王洲アイルと聞いても90年代トレンディドラマのロケ地だったり、そんなドラマを製作するバブリーな建築物でお馴染みの某民放局社屋がそびえる東京テレポート駅のあるお台場エリアだって同時期にはトレンディな観光スポットとして栄えたわけで、ある意味ノスタルジーな感傷に浸れる場所として認知されている。別にこれらの駅がカタカナねじ込み系であっても誰も異を唱える事はない。

例その2:新興住宅地(たまプラーザ、ユーカリが丘、越谷レイクタウン)

首都圏各地を見渡すと、まだまだ一種奇妙にも思えるカタカナ駅名を付けた場所があちこちに見られる。やっぱり田園都市線のここ「たまプラーザ」も挙げておいた方がいいですかね。横浜市青葉区、まさしくバブル絶頂期に宅地開発され、当時働き盛りだった団塊世代を中心に人気沸騰した郊外の「金妻」的高級住宅街。そもそもここは東急の五島昇会長(当時)が直々にネーミングを行い、スペイン語の「広場」(Plaza)から取ったもの。しかしなぜ伸ばし棒を付けた「プラーザ」なのであろうか。永遠の謎である。

次いで千葉県佐倉市まで飛ぶと「ユーカリが丘」なるヘンチクリンなネーミングのニュータウンが存在している件。古今東西ニュータウンに植物の名前がついているのは珍しくもないが、なぜオーストラリアに生息するコアラがムシャムシャ食ってる、日本原産でもない「ユーカリ」という植物を地名に用いたのか意味不明である。当地はデベロッパー「山万」がニュータウンの開発当初から現在に至るまで管理を一貫して行い、さらには新交通システムをも運営している国内でも珍しい事例。都心からは滅法遠いですが住宅地として今でも人気が高い。マスコットキャラクターのコアラまで住民たちに愛されている。

そして埼玉県越谷市を走るJR武蔵野線には「越谷レイクタウン」が…火葬場の跡地とその周辺を大胆に開発して「大相模調節池」という水害対策用の池とそれを取り巻く新興住宅街が生まれた。21世紀に入ってから生まれた超新星的ニュータウンでございますので、歴史もクソもないわけでして、いずれの3駅も街の歴史が人為的に開発された街であるゆえに、一見珍妙なカタカナ駅名でもその後何の違和感もなく定着しているものであると言えよう。

例その3:新観光名所誕生でキラキラ化(とうきょうスカイツリー等)

近年、首都圏では新たな名所が誕生することを契機にそれまでの歴史ある駅名を抹殺してキラキラネームかよと笑わせるような駅名に変更されるケースが見られる。代表的なのは東武伊勢崎線業平橋駅というしぶーい名称を「東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅」というキラキラ全開駅名へと変えてしまったこちらの一例。「ひらがな+カタカナ」の破壊力たるや計り知れぬ。しかも東京を「とうきょう」と表記する例は前代未聞の珍事である。

日本一の電波塔が浅草の川向こうのさえない下町に出来てこれまでの墨田区の陰気臭いイメージを一新させる大きなインパクトのある観光名所となったが、そもそも業平橋駅自体がそれほど利用者もなかったので、この駅名変更で文句を付けたのはせいぜい「文字数増えすぎで面倒臭いんだけど」とごちる地図業者くらいであろう。

ちなみに東武鉄道は東武野田線も「東武アーバンパークライン」などとわけのわからない愛称を採用している。スカイツリー誕生前までキラキラとは最も縁遠い私鉄路線だけに逆張りに走ってしまいましたね。

ちなみに先述の田園都市線でも南町田駅が駅前の再開発計画に伴い2019年度中に「南町田グランベリーパーク駅」に変更されるそうだ。漢字+カタカナで12文字っすか…また地図業者泣かせの駅名爆誕である。ただでさえキラキラ感半端ない田都沿線のアッパー度がますます増長する結果となるであろう。

例その4:大阪とか名古屋とか(コスモスクエア、ささしまライブ)

それから首都圏を離れて大阪まで飛ぶと、ここにもおかしなカタカナ駅名が存在している。大阪市内を東西に走るOsaka Metro中央線の終着駅の名は「コスモスクエア」…はい?!宇宙広場ですか?ぶっ飛んでまんなー!

ここは1997年の駅開業当時、大阪市ベイエリアにおける副都心と位置づけられ「テクノポート大阪」プロジェクトのもとバブル期にガンガン開発されまくっていたものの、WTCコスモタワー(現・大阪府咲洲庁舎)やATC(アジア太平洋トレードセンター)、なにわの海の時空館、ふれあい港館ワインミュージアムなど、ことごとく事業に失敗して莫大な赤字を垂れ流し続けてきた大阪市の“負の遺産”と呼べる場所。コスモスクエアという名称は公募で選ばれたというが、未だ唐突感が拭えない。

外国人観光客の増加と2025年大阪万博開催決定で活気づいて、ようやくホテルだのカジノだの誘致しようと頑張ってるみたいですが、駅前には一応分譲マンションもある。ここの住民は他所に住んでる場所を聞かれると「コスモスクエアに住んでます」と自己紹介するわけである。路線図もここだけカタカナ駅名。やっぱりおかしいよね。

いずれ品川駅からリニア新幹線で40分で繋がる名古屋駅のすぐお隣、あおなみ線にも「ささしまライブ」というカタカナぶっこみ系駅名が存在している。ここは愛知万博開催前の2004年10月に開業、万博のサテライト会場がこしらえられたのが最初だが、その後開発が進み2017年には「グローバルゲート」なる新ランドマークが爆誕、名古屋駅に隣接する地の利もあって、いま最も名古屋人がチンチコチンにアツくなっているトレンディスポットである。

名古屋にグローバルゲートという複合総合施設ができたという点を聞くと、今まさに高輪ゲートウェイ駅の開業予定地周辺で計画されている「グローバルゲートウェイ品川」とやらと名称がおもっくそ被っているのだが、中国やらシンガポールだとかに比べると出足が遅れている日本国内における国際的ビジネス拠点を作り上げようとする各都市の時代の潮流が遅まきながら渦巻いているのでしょうか。ええ、ええ…

しかし駅名の英語表記を見ると「Sasashima-raibu」となっているのは何ですかね。「Live」ではなくて、なぜ「Raibu」なのか。これが名古屋の英語力だがね!ドデスカ!(Byメ~テレ)

※ささしまライブ駅の英語表記は「名古屋市英文表示基準」も基づきヘボン式ローマ字表記のまま英訳しないことになっているそうで、それに準拠しているらしい。

結論:歴史のある街にカタカナ駅名は似合わない

大阪や名古屋の例まで出してカタカナ駅名とは何なのかを見てきたわけだが、今挙げた駅がある場所の共通点は全て「新興住宅地」「再開発地域」に当てはまる。つまり街の歴史がそれまですっぽり存在していなかった場所に新たに生まれた、という事であり、そこで改めて「高輪ゲートウェイ」を見るとそのカタカナ駅名への違和感の正体がなんとなく掴めてくる。

もちろん「グローバルゲートウェイ」なる再開発地域が新駅周辺の主要ランドマークとして作られ、それを主軸に駅名を決めるのはアリっちゃアリなのだろうが、駅のすぐ西側には高輪の土着的な町並みもあるわけでして、これは似合わない…そりゃ高輪住民にとってはこの駅名は白けるだろう。「すっきり高輪でいいのでは」…この地元民の意見が全てである。

ちなみに新駅ができる港区高輪…すっかり高級住宅街だとか勘違いされている方も多いでしょうが、それは場所によりけりでございます。特に高輪三丁目の高野山東京別院裏手から東禅寺付近の窪地にはこのようなガチな路地裏風景も残っている。新駅開業を間近に、これらの風景もいずれ再開発されて無くならないとは限らない。先に挙げた高輪橋架道橋といい、見納めにならない今のうちに散歩しときましょう。


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