何も田園調布だからといって高級住宅街ばかりが並んでいるとは限らない。これからお見せするのは、住所が田園調布なのに、全然田園調布らしからぬ街並みだ。
田園調布という地区は、実は多摩川の河川敷に面している。多摩川に平行して国分寺崖線が走っていて、陸側は起伏のある武蔵野台地が広がる。崖に沿って急坂が密集している奇妙な地形が特徴的なのだ。…というわけで下り坂を一気に転がり落ちてきた。田園調布の中にも人生があるのだよ。いやあ厳しいねえ!
坂を下りた先には米屋が一軒。ただでさえ店の少ない界隈だが米屋でも見つけると少し安心した気分になる。しかもそれが豪邸などではなく普通の一軒家であるという点においても、さらに安心できる(笑)
用水路のような丸子川の両岸が、高級住宅街との境目だろう。
しかし住所は引き続き田園調布のままという状況が続くのだ。
さらに多摩川河川敷に近づくと普通に木造アパートが出現するのである。これでも住所は田園調布五丁目!こんなアパートだったら豪邸を買わなくても「田園調布住まい」を自慢できる。見栄っ張りには超おすすめ。
程なく多摩川河川敷が現れるが、目の前に広がるのはもうすっかり高級感の抜け切った河川敷沿いの田園調布だ。
広々とした多摩川河川敷。川を挟んだ向こうは川崎市中原区。
ところが川崎側の様子を見ると随分と作りこまれたホームレスの小屋を数多く見かける。見た感じは完全に家である。同じ多摩川下流の六郷橋辺りのホームレス村も凄かったがこちらもなかなか壮観である。
そのまま下流方向へ歩くと東急の高架線と水門が現れる。ひっきりなしに東急や東京メトロ、それに埼玉高速鉄道の車両までが橋の上を通り抜ける。
橋の下にやってくるとホームレスのオッサンが階段状の堤防上に家財道具を器用に置いて家を作っている光景に出くわした。
同じ多摩川でもここは田園調布。場所柄を考えてもDQNが少ないので比較的安全に過ごせるかも知れない。まあ川崎側に行くと全然雰囲気が違うが。
さらに下流に行くと本格的な掘っ立て小屋を発見する。中を少し見るとホームレスらしきオッサンが数人、自由気ままに時間を過ごしているような感じだ。
さらに感心するのは「自家用」の船まで小屋のそばに係留していることだ。これは優雅である。田園調布はホームレスまで格が違うぜ!
よく見ると沢山釣り客が居ることでもわかるように、この付近の多摩川では魚が色々釣れるので、器用にやればホームレスでも自給自足生活が可能である。先ほどの「田園調布のホームレス」は何気に本まで出版している。興味のある人は読んでみるが良い。