「田園調布」…東京でも屈指の知名度を誇るブランドタウンであり超高級住宅街、しかしその知名度の高さ故に歪なイメージが罷り通り、成金セレブの憧れの的であると同時に、この地に住むセレブ達の歪んだ暮らしぶりが垣間見える。
ポッポ元首相も暮らしているらしい東急東横線田園調布駅西側の「田園調布三丁目」に属する扇型の放射道路を歩くと、とある一軒の豪邸の前にマスコミや警察が多数張り込んでいたのが見られた。横浜市の医療法人の理事長が45歳年下の妻と散弾銃で無理心中をしたのがこの家らしい。あまり極端過ぎる高級住宅街に住むのも物騒でいかんですね本当。
さて、これから向かう場所はそんな歪な超高級住宅街を横目にこの急坂を下った先にある「とても田園調布とは思えない下町ゾーン」である。そこは住所が「田園調布五丁目」であるにも関わらず、多摩川沿いの低地にありアパートや商店街がひっそり建っているような地味な場所だというのだが…
そもそも坂の名前からして「急坂」だもん。多摩川の河岸段丘の高低差を埋める形で急勾配の坂が一直線に伸びている。ここは上流階級と庶民の街との境か、それとも天国と地獄の境か。
「急坂」を降りきった先、丸子川を跨ぐ橋を境に街並みは田園調布のイメージとは全く違う下町チックな風景へと変貌する。っていうかここまで来ると鉄道駅からも遠く、もはや秘境の様相。
だがそんな場所に唐突に商店街らしき区画が現れる。それも決して東急沿線にありがちなシャレオツで綺麗な商店街ではなく、古ぼけた昭和の下町商店街といった風情。どうやら「田園調布商栄会」という名称の商店街らしい。
商店街の入口には一見コンビニ風だが、軒先に沢山青果物を陳列している「相川商店」という個人店舗がある。鉄道不毛地帯である田園調布五丁目南側では貴重な食糧調達拠点となっているようで、近隣住民がちらほら買い物しに来ている。
日本一の高級住宅街の代名詞である「田園調布」という地名が付いた土地とは思えず、むしろ23区ですらない田舎町の佇まいにも思える終末的な光景だがやたらめったら政党ポスターが貼り付けられているのが特徴的。
公明党、共産党、幸福実現党がここぞとばかりにアピールしまくる田園調布五丁目の日常風景。田園調布というよりも、スタンダードな大田区の下町ですよねこれ。一応ながら東京都大田区の最西端に位置する土地で、この周囲は世田谷区尾山台、玉堤となる。
このへんのアパートなんか完全に蒲田あたりの安アパートと見た目に寸分違わず、ここでも共産党パワーが凄まじい。まあ、多摩川河川敷まで降りれば「田園調布住みホームレス」なんてのもいるので、意外と田園調布の中でも貧富の差が激しい事が伺えるのだ。
自販機コーナーと化している向かいの不動産屋で田園調布下町エリアの物件情報をチラッと見たが、この辺だとワンルームのアパートでは4万円台くらいで借りられるようだ。夢の田園調布アドレスは意外と余裕で手に入りそうです。ほぼ漏れなく駅徒歩10分オーバー坂道付きだけどな。
寂れた佇まいの「田園調布商栄会」でも貴重な外食店舗、中華料理「鳩の巣」もございます。やはり不便な場所柄かして出前の注文が多いらしく店主のおやっさんが頻繁にバイクで出たり帰ったりしていた。田園調布なのに庶民的なラーメンが食える店。
あとはうなぎ屋さんとか潰れた喫茶店とかも地味に並んでいるが、せいぜい100メートル足らずで商店街は終わってしまう。ここ以外で買い物をしようとするとチャリンコで九品仏か尾山台あたりまで出ないとならない。付近にまともなスーパーが見当たらないのだ。
クリーニング店と酒屋あたりで商店街が終わり、あとは地味な住宅街が続くのみとなる。あとこの商店街の裏手に都立田園調布特別支援学校(旧都立大田ろう学校)があるくらいか。
商店街の区画は7:00-9:00、16:00-18:00で時間帯車両通行止になっていて歩行者天国な訳だが、買い物客はぽつぽついる程度で、町外れ感が半端ない。そろそろ日が暮れそうなので帰ったが、最寄りの田園調布駅に戻るのに「急坂」を登るのは面倒なので、隣の多摩川駅目指して多摩堤通り沿いに歩いたら20分くらい掛かった。都区内とは思えないエクストリームな土地ですね…