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23区最強のド田舎・練馬区大泉学園町に東京都区部唯一にして最後の乳牛牧場「小泉牧場」があった件

「東京23区」と聞いて、摩天楼、コンクリートジャングル、といったイメージを思い浮かべる人もきっと多いだろう。しかしそんなイメージを完全に覆してくれる特殊地区が、23区最後の田舎地帯「練馬区」だ。

練馬区 大泉学園

練馬区民の足はかつて都心の屎尿を埼玉の農家へ運んでいた事もあり「黄金列車」とも言われる西武線。最近になってようやく地下鉄大江戸線が開通して、練馬区に広がる農地も次々宅地開発の波が訪れようとしている。

しかしこの練馬区の外れ、大泉学園町の一角に、今でも現役バリバリの「牧場」があるという話を聞きつけた。そしてそれは23区に残る「最後の牧場」であるとも。「23区で牧場がある」という事実はにわかには信じがたいものかも知れないが、それでも確かに牧場は実在するのだ。


練馬区 大泉学園

23区に残る最後の牧場の最寄り駅、西武池袋線の「大泉学園駅」にやってきた。大正末期に「東大泉駅」として開業したものが、東京商科大学(現・一橋大学)のキャンパス誘致活動のために西武のドン・堤康次郎率いる「箱根土地」(後のコクド)が付近一帯の農地を整備して「学園都市」として開発、駅名を今のものに変えたにも関わらず誘致に失敗して、結果として「大泉学園」という駅や地名だけが残って肝心の学校がどこにもないというお間抜けな歴史を持った街だ。

練馬区 大泉学園

とはいえ駅前から続く大泉学園通りは学園都市としての風情を保つ並木道。しかし決して学生街ではないので、制服姿の学生がちらほら歩いているというわけではない。私立学校は東京学芸大学付属の小中高があるのみだ。

練馬区 大泉学園

駅北口から徒歩5分くらい、白子川沿いの住宅街の一角で急に牛の糞の匂いが漂いだしたら、そこが「牧場」だ。こんな場所に牧場が本当にあるのか?!という疑問が解ける事のないまま、本物の「牧場」が唐突に我々の視界に飛び込んでくる。

練馬区 大泉学園

牛、本物の牛だ!!!!本物の牧場だ!!!!

練馬区 大泉学園

放牧されているホルスタインと巨大な飼料タンクがひときわ目を引く。この場所こそが東京23区最後の牧場となった「小泉牧場」である。昭和10年に先代が創業し、親子三代にわたって家族経営されている小さな牧場だ。

練馬区 大泉学園

建物は開業当時のものがそのまま使われているものと思われる。トタン屋根の牛舎が並ぶ敷地には大きなイチョウの木が何本も生えている。季節柄ギンナンが取れるので、牛の糞に混じってギンナン臭も漂い付近は匂いのアンサンブル、濃厚バッドスメルゾーンと化しているのだ。

練馬区 大泉学園

さぞかし周囲の民家は牛糞の匂いが大変そうだと傍から思うのだが、やはり住めば都なのか、牧場の隣の家なんかは平気で洗濯物も干してるし、牛の糞の匂いなんてものの数分で慣れてくるもの。そもそも昭和10(1935)年の牧場開業当時は周囲に住宅なんかなかったのだ。後からやってきた住民に文句を言う権利もなかろう。

牛舎の中にはおよそ40頭の乳牛が飼育されており、毎日の糞便の掃除などの手入れは三代目の息子さんが行っている。

練馬区 大泉学園

我々が見学中にも容赦なく糞便を垂れ流す牛さんたち。ジョーーーーー。まるで滝の流れのような小便。これが都会と農村が入り混じる21世紀のハイブリッドタウン練馬区の姿だ!!!!

吉幾三が唄う「俺ら東京さ行ぐだ」には「東京でベコ飼うだぁ~」などと冗談めいた歌詞があるが、小泉牧場は冗談ではなくマジで東京のど真ん中で牛を飼っているのである。

練馬区 大泉学園

これが東京23区唯一の「小泉牧場」で飼育されているホルスタインさん。見ている限り非常に大人しいがあまり刺激しないように。

最近ではテレビや新聞、インターネットなどで物珍しく「23区唯一の牧場」と紹介される事が多いので土日はひっきりなしに客が来るという話を聞いた。まあ我々もなんですけどね。それに観光農場ではないので、施設の見学には節度をもって臨もう。

練馬区 大泉学園

牧場から道路を挟んだ向かいにアイスクリームが販売されている小屋があり、そこで市販品のハーゲンダッツより若干お高い1個300円で買えるアイスクリームの味は濃厚そのもの。もちろん小泉牧場の牛から採取した牛乳を使っており、加工場は遠く離れた日野市の業者に委託しているとのこと。残念ながら牛乳そのものは販売されていない。

小泉牧場の二代目ご主人に少し話を伺ったが、東京23区では最盛期に120軒もの酪農家がいたのだそうだ。それが流通網の変化で北海道など地方に拡散し、東京の酪農家は次々廃業、21世紀を迎えた2001年の時点で都区部に残るのはここ小泉牧場1軒だけになってしまったという。

練馬区 大泉学園
ベッドタウン化で近隣に家が建つようになるとは想像もしていなかったそうで、今でも時折心無い人間によって臭いについてクレームが飛んできたりするらしい。しかし23区唯一の酪農施設であるという貴重な存在だけあって、付近の小学校の体験学習などにも使われている。

北海道やら軽井沢の大自然に囲まれた牧場もいいが、練馬区大泉学園町に残る、住宅街に囲まれた23区最後の牧場、都民なら一度くらいは訪れてみてはどうだろうか。

小泉牧場

営業時間 10:00-17:00 不定休
東京都練馬区大泉学園町2丁目1−24

東京都練馬区大泉学園町2丁目1−24


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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