ご存知の通り葛飾区は都心からかなり離れた場所にある。
東京の地理に疎かった頃は、葛飾区は下町というよりも郊外型ベッドタウンかな、くらいにしか思っていなかったが、この立石駅前のヤバい街並みを見て回って、その甘い認識が良い意味で覆された訳だ。
京成立石駅に程近い、線路沿いのとある一画。
看板も何も掲げていない何の変哲もない建物の奥にとんでもない路地裏居酒屋街が存在している。
線路を向いた間口からは既に魔界のものと思われるような湿った臭いが漂う。この奥に立石が「下町の首都」と言わしめている存在が隠れているのだ。
狭い路地裏にひしめく居酒屋の看板、ボロいトタンの屋根からは太陽の光が漏れて、暗い洞窟の底から天井を見上げるような気分だ。長さ30メートルの路地が2本、そこに数十軒の居酒屋が寄せ合うように集まる、立石のDEEP飲み屋街「呑んべ横丁」だ。
さすがに昼間は静まり返っているが、居酒屋兼住宅になっていて、時折住人が顔を出す事もある。下手すればスラム街と見紛うばかりの一画。こんな物凄い場所によく暮らせる人がいるもんだ。
そんな細い路地を辿っていくとどうにも糞便の臭いが…と思ったら開けっ放しの公衆便所が置かれていた。居酒屋で酒を飲むと小便が近くなるからすぐに使える公衆便所があるのは便宜的に正しい。
ところでこの「呑んべ横丁」についてWEBで調べてみてもあまり情報自体が出てこないのだが、昭和30年代あたりは「立石デパート」と呼ばれていて、現在のような飲み屋街ではなく普通に買い物ができる商店街になっていたらしい。
その「立石デパート」の名残と思われる「作業服・洋品 アカカンバン」と右から左に書かれた古い看板。かつて立石にあった呉服屋の名前らしい。
そこらの作り物のレトロではない本物である。
しかしどう見ても昔商店街に使われていたようには見えないカオスな空間。建物が古いせいか、廃屋になっている店もわずかにある。
いつもこうした居酒屋密集地を訪れる時間帯が昼間ばかりなので、今度は日が暮れた頃に再度訪れたい。
実はこの場所も立石駅の再開発計画で取り壊しの対象になっているエリアで、もしかすると残念ながら数年以内に無くなる風景かも知れない。そう考えると、再開発によってこうしたアンダーグラウンドな街並みが魅力的なはずの立石が無くなれば、一体この街に何が残るのだろう。
薄暗いアーケードを抜けた先にも居酒屋やスナックの店舗と住宅が密集している。
そこに「呑んべ横丁」を示す看板がひっそり立っているのだ。実に良いネーミングだが、物見遊山の観光客などを受け入れる空気が全くといっていいほど存在しない、コアな下町の飲み屋街である。
だけど、さすがに古い建物だけあるのかして、ゴキブリがやたら多いのには辟易しましたが(笑)


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