京急横須賀中央駅前の繁華街の中でも最も人通りが激しいのが「三笠ビル商店街」。その名の通り、細長いビルの中にまるごと商店街が収まった特徴的なショッピングモールだ。
中央大通りに面して建つ三笠ビル商店街。傍から見ると戦艦のようにも見えなくもない。横須賀の地に鎮座する戦艦三笠になぞらえて、三笠ビルという名前を付けたのもなんとなく理解できる。
4階建てのビルの1階部分中央が通路になっていて、その両側を商店がずらりと並ぶ。日本人以外の姿もやたら多い。米軍基地から街に繰り出すアメリカ人の姿をあちらこちらで目にする。日常的にアメリカを意識するような街は沖縄以外では全国的にも横須賀くらいだろう。
商店街内の注意書きも日本語よりむしろ英語で書かれたスペースが広く取られている。夜な夜な街をたむろしているDQNヤンキーに国境はない。
ネットカフェやカラオケといった遊興施設にマクドナルドや松屋などのファーストフード店が目立つ商店街。庶民向けというよりはDQN御用達の店舗構成。
夜になっても、ネットカフェなどが24時間営業を続けているので、商店街の通路は四六時中開放されている。
ビルの中央にポツンと事務所に上がる階段がある。かなり奇妙な構造をしたビルだが、そもそも建設されたのが昭和34(1959)年と非常に古い。改装を重ねていて見た目には分かりづらいが、かなり年季の入ったビルだ。
建設当時は日本でも画期的なビルイン型商店街として注目を集めたとか。
三笠ビル商店街の中で、もう一つ奇妙なものが隠れている。多くの買い物客が行き交う通路の途中に「豊川稲荷 成田不動尊」と案内が書かれている。それを辿ると…
唐突に裏山の寺に至る参道が現れるのである。ビルの外から裏山に通じているのだ。真っ赤に塗られた床に「参道」。シュールである。
ビルの外へ出る開き戸は夜間締め切られているが、昼間訪れてみると、長い階段が正面に控えている。しかもかなり上の方まで続いていて見た目に凄い。
実はその横っちょにも、三笠ビル裏手の路地への抜け道が隠れているのだが、これ見よがしに無断通行禁止の注意札が掛かっている。これもやはり日本語よりも英語の方がでかい。
階段をすたすた登っていくと、三笠ビル商店街や周辺の雑居ビルが見る見る眼下に落ちて行く。極端な横須賀の地形を実感できる場所だ。
並んでいるビルよりも裏山の方が高い位置にそびえている。山の上にも緑が丘という住宅地があるが、険しい山を縫うように街路が走り、まるで迷路のような場所だ。
160段以上もある長い階段を登り切ると、ようやく山の上の寺「徳寿院」の山門に辿り着く。運動不足が祟って呼吸が苦しい。
寺なんだけど豊川稲荷横須賀別院を兼ねている神仏習合の境内。山の斜面に建っているためか境内は狭い。
寺の奥には日本庭園などがある。このアングルだと全く見えないが、このすぐ右側は断崖絶壁だ。
断崖絶壁の手前には神武天皇遥拝所と書かれた謎めいた古い石碑がある。初代天皇が横須賀に来ていたのか。ちなみにこの一帯の山は「大勝利山」と呼ばれているらしい。そうかそうか。
神武天皇遥拝所の石碑から眺める横須賀市街。目と鼻の先に繁華街が広がっているのにこの場所だけはまるで別世界だ。