とろけ地蔵と五百羅漢像「大円寺」

目黒駅から雅叙園に向けて降りていく坂道の途中に大円寺というちょっと変わった寺がある。目黒あたりは普段あまり見向きもしないような場所だが、大円寺はなかなかの珍寺っぷりを見せているので、少し案内したい。
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有名な結婚式場「目黒雅叙園」の手前、改まったスーツ姿とドレス姿の男女が行き来するのは場所柄だけのことか。文京区関口の椿山荘、白金台の八芳園と合わせて東京を代表する一流結婚式場の一つとして知られる。もうどこにも庶民臭さが感じられない。


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雅叙園の中も百段階段など戦前に作られた高級料亭の名残りである豪華絢爛な意匠が残る見所がある。見学が何かと敷居が高い(完全予約制・高級コース料理付き)ので未だに行けていない。
それはともかく、大円寺へ向かう。
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大円寺前の行人坂はかなりの急坂で、昇り降りが結構ハードである。坂の下まで降りるとその先には目黒川が流れている。
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大円寺は天台宗の寺院で江戸時代の寛永年間に創建。明和9(1772)年の行人坂大火の火元となり長らく再建を認められなかった。この大火の高熱で解けてしまったお地蔵様が「とろけ地蔵」と呼ばれて現在も安置されている。
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寺の境内はそれほど広くはない。行人坂の急勾配ぶりを見れば分かるが、山肌を削って作られた寺院という事もあるからだ。
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境内に入ると本堂左手一面にびっしりと並ぶ五百羅漢像が圧巻。大火の火元となった罪滅ぼしにと彫られたものだというのだ。江戸市中を焼き尽くした明暦の大火、丙寅の大火と並ぶ江戸三大大火の一つで、1万5千人が焼け死んだという。
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ひな壇状に並ぶ五百羅漢像はその一つ一つが違い、表情もポーズも全部微妙に異なっている。
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この五百羅漢像が立ち並ぶ一角に、件のとろけ地蔵が鎮座している。
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確かに容赦なくとろけまくってますね。元々は品川の海に沈んでいたのを漁師が引き上げて大円寺に持ってきたものらしいが、大火でこの状態になる前にもかなりボロボロになっていたそうだ。
ぐっちゃぐちゃにとろけてもなお残り続けるお地蔵様にあやかって、悩み事をとろけさせてくれるとか、どんな過酷な状況でも生きていける力が宿るなどと信じて願掛けに来る参拝客がいるとかなんとか。
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本堂前には何やら金箔だらけの大仏様までいる。身体の悪い部位に貼り付けると効き目があるそうだ。金箔は顔と胸に集中している。
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大火の因縁に絡んでのことか、境内に数多く置かれる地蔵のうちの一つに「お七地蔵」があるが、うっかり見落としていた。恋慕の末に放火事件を起こして鈴ヶ森刑場で火炙りにされ死んだ娘「八百屋お七」を弔う地蔵である。
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とろけ地蔵やお七地蔵だけでなく水子地蔵まであって色々とバリエーションが豊かな寺である。
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目黒周辺にはこの大円寺の他にも目黒不動尊を中心に寺町として発展してきた歴史がある。隣の五反田とは違ってお上品な街でネタ的にはすこぶる地味だが、たまに落ち着いた散歩がしたいなら悪い場所ではない。

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