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セレブタウンか下町か?六本木ヒルズのお隣「麻布十番」を歩く(2009年)

地下鉄南北線麻布十番駅で降りる。南北線は旧営団である東京メトロの路線の中でも8番目に出来た新しい路線で、どの駅も綺麗で地下が深すぎるので駅から降りて地上に上がるまでがとても面倒である。

天下の成り上がりセレブ帝国「六本木ヒルズ」に隣接するという土地の特性から、元はド下町だったはずの麻布十番もいつのまにかセレブタウン扱いされてしまったという歴史がある。

地下鉄駅の構内でも、足立区あたりではまず見かけないであろう、セレブスイーツ(笑)向けのリラクゼーション施設の広告があるなど、早くも別世界ぶりを見せ付ける。

麻布十番駅を降りると目の前には「麻布十番商店街」。やはりお上品そうな商店街であり、あちこちにお洒落なカフェが目立つ。世界各国の大使館が密集している地域でもあるので、品の良い外国人があちらこちらに居る。

のっけから意味のわからないオブジェが置かれていて、セレブの考える事はよくわからんと頭を抱えながら先へ急ぐ。

商店街の一角には麻布十番の地名の由来が書かれている。

江戸時代から歴史のある古い住宅街であるが、当時の幕府がこの地区に掛かる古川の改修工事に着手し10の工区に分け、この界隈が丁度10番目の工区に当たった事から十番の地名が付いたと記されている。

麻布界隈は起伏の激しい地形をしており、低地にあたる麻布十番付近はかつては職人が住みつき下町風情を匂わせる場所だったらしい。台風で大雨のときには麻布十番商店街を中心に毎年のように洪水が起こるなど今でも地形的要因による災害が発生することもある。

鳥居坂下交差点から麻布十番商店街の方向を見れば商店街の付近だけが窪地になっているのが確認できよう。

確かに麻布十番周辺を歩いていると周囲一帯が丘になっていて、まさに窪地の底にいることを感じさせる。この界隈の町並みは大阪や名古屋など他の都会には見られない都市の特性を一番垣間見せてくれる。

2000年に地下鉄南北線・都営大江戸線の駅が開通するまでは陸の孤島だったという麻布十番だが、交通の便も変わり、あまつさえ隣接するようにセレブ帝国「六本木ヒルズ」が商店街の谷間を越えた向こうに燦然と立ち尽くすようになってからはいつの間にかセレブタウンの仲間入りをする羽目となった。

麻布十番の下町臭さを残す貴重な施設だった「麻布十番温泉」は昔ながらの健康ランド型温泉施設。

1949(昭和24)年の開業以降長年麻布十番におけるオッサンパラダイスで在り続けたものの施設と店主の老朽化により敢え無く2008年3月に廃業。現在跡形もなく壊されている。

まだ街のあちらこちらに下町らしい風景を残す麻布十番だが、オシャレでセレブでスイーツでトレンディな時代の風はこの地区にも容赦なく吹き続けている。古い民家や商店は次から次へと高級マンションやスイーツ好みの高級カフェなんぞに生まれ変わっている。じっくり観察すればじわじわと街が漂白されていく様を見る事ができよう。

いまや麻布十番商店街も犬連れセレブが優雅に買い物する空間といったイメージの方が近くなってしまった。東京一極集中の波が押し寄せ、複雑な変化を遂げる都心の下町をもう少し歩き回ってみよう。

「セレブタウン」とやらで成り上がりDQNに大人気のエリア、六本木ヒルズを眼前にひかえる麻布十番界隈を引き続き散策し続けるとしよう。

麻布十番商店街を外れ、元麻布方面に行こうとするとまたしても急坂を通っていかなければならない。

元から起伏の激しい土地であったという理由もあるが、麻布界隈に存在する坂に名づけられた名前には「暗闇坂」という曰くありげなネーミングのものもある。かつては樹木が覆い茂り名前の通り真っ暗闇で見通しの悪い急坂だったと言われる。

しかし、そのオドロオドロしい名前とは裏腹に今ではどこが暗闇やねん!とツッコミたくなる程開けていて高級住宅街にありがちな急坂の風景が広がるのみ。坂を登ると元麻布の高級マンション群が見える。

坂の途中にはオーストリア大使館の建物もある。坂の上からは麻布十番商店街に続く下り一本道が眺められる。なかなか絶景。

暗闇坂を登りきった先には高級住宅街元麻布のシンボル「元麻布ヒルズ・フォレストタワー」の頭でっかちのけったいな形をした超高層マンションがそびえ立つ。とりあえず東京山の手で「ヒルズ」と名前の付く建物は総じて成り上がりDQNセレブの巣であると見て違いないだろう。

麻布十番三丁目の一角から善福寺を通して眺める元麻布ヒルズ・フォレストタワー。

「六本木ヒルズ」以降成金DQNが多く棲むようになって根っからの地元民の間で軋轢が生じているそうで、元麻布ヒルズが出来た時もこの善福寺からの眺めを見る通り、景観破壊であるという地元の抗議の声があったそうだがそれでも成金タワーは建てられた。

ちなみに善福寺前には日本最初のアメリカ公使館宿館跡があったことを示す石碑も建てられている。ペリー提督が横浜に来て「開国シテクダサイヨ~」と迫った頃から、この界隈には外国人に関わる施設が作られていたわけだ。

再び麻布十番商店街に戻り、今度は中国大使館方面へ抜ける路地を歩く。救世軍というキリスト教系の宗教団体の建物がある路地だ。

こちら側は地味な低層住宅や古びたマンションばかりが並びまったく高級感が漂ってこない。しかもよく見ると六本木五丁目に移転した後廃墟同然の姿を晒す「麻布保育園」の建物があったりして意外に気味の悪さを見せ付ける。

その背後には「六本木ヒルズ」。

やたら坂の多い元麻布三丁目界隈。「狸坂」という、これまた曰くありげなネーミングの坂が出現する。道行く人を化かす狸がいる坂、との言い伝えから名前が付いた。見るからに山だらけの場所なので夜中に来るとマジで狸が出そうな感じがするが…

ここを登ると元麻布ヒルズ方面に抜けられる。

さらに中国大使館方面に歩いていくと、まるで見捨てられたかのように存在する仕立て屋と思しき古びた民家兼店舗の一角に出くわすなど、なかなか味のある景色が見られる。

仕立て屋の建物があまりにボロかったので、気になって横から見たら、殆ど崩壊寸前のようなオンボロ建築だった。隣の空き地にも最近まで同様にあばら家があった。

ここから先は中国大使館にも近いのでやたら警察の見張りがあるなど結構物々しい雰囲気になる。この辺りも結構色々ネタがあるのだが、麻布十番のエリアではないのでまた次の機会にでもレポートしよう。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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