池袋と埼玉を結ぶ東武東上線、他の私鉄沿線よりも場末感きっつい下町縦走鉄道な訳だが、とりわけ成増駅までの東京都内各駅はどこで降りても下町風情が素晴らしい。特に好きなのが東武練馬駅前の昭和な商店街なんですが、今回ご紹介したい物件がまたありましてですね…
またやってきたのが東武練馬駅南側にある旧宿場町沿いの「きたまち商店街」である。板橋区のイメージが強い東武東上線だがここだけ練馬区北町…練馬だけに「馬」のイラストが描かれた商店街のプレートも目立つ。地名の由来の一つに「馬を訓練する場所があったから練馬」とかいう安直な説があるらしい。
同じきたまち商店街沿いに「北町楽天地」という戦後のオンボロ飲食街もあるが、そこからもうちょっと上板橋寄りに行った所にその気になる物件の入口が現れる。両脇の店が公明党ポスターだらけなのが妙に気掛かりだが、なんとこんな場所に「アーケード商店街」が!
しかもこのようなベタな電球とネオンサインでゴッテゴテに彩られたアーチ看板まであるという始末。その名も「北町アーケードショッピングセンター」である。
早速足を踏み入れてみよう。この広い東京都区内でも関西や九州とは違い全蓋式アーケードを備えた商店街はなかなか見当たらない。東武東上線沿線では板橋区大山にあるハッピーロード大山商店街くらいしか思い浮かばなかったのだが…
入口右手にある「中華料理幸楽」はこのアーケード街の中でも昼間から営業している街の大衆中華料理屋である。ラーメンと丼物のセットメニューが750円(消費税増税前の価格)で食えるコスパの良さはさすがだが、目の前に「ぎょうざの満洲」もあるし、「福しん」にクリソツな「手もみラーメンジロー」もあるし、近くには同じ読みの「佼楽」という渋い中華屋もあったり、東武練馬はなかなかの大衆中華激戦区である。
そんな食い物屋の真正面にペットショップがあるという緩さも東武練馬クオリティ。古風な店構えの「練馬ペットセンター」は小動物と熱帯魚を取り扱う。それはいいのだが、店先の通路の中央にまで陳列棚を置くという堂々とした営業スタイル。これで誰も文句を言わないところがまた緩い。
その通路の真ん中の棚の上に売り物の「うさぎ」が置かれているというのがまた面白いですね…ここが東南アジアのどこかだったら同じテンションで「食材」として売られていそうな感じですが、日本でうさぎは愛玩動物ですのでね。はいはい。
まあ、アーケード街の入口に中華料理屋とペットショップがあるのは分かったが、その奥に何があるか見てみるとですね…スナックばっかりやん!
そして場所柄だろうか、さっきからこの「スナック雪国」の前が昼間っからお爺さんののど自慢会場になっている。
周りの店も突き当りにあるこのスナックもみんな場末の酒場天国。やっぱり東武練馬は夜に一度ちゃんと来てみたい。公明党ポスターの多さからしても、常連になると「折伏」されたりしないんでしょうか。
一応ながら「ショッピングセンター」と名前の付いた商店街だったのだが、よく考えるとここではペットショップくらいしか買い物をする場所が無い事が分かった。買い物できないショッピングセンター…それはまるで生ける廃墟・ピエリ守山(旧バージョン)を思い起こさせる。
昔はヤンキーの溜まり場になっていそうな感じだったゲームセンターらしい店の残骸。とうの昔に廃業しているっぽく、今では年金暮らしの爺さん婆さんの溜まり場である事は先に挙げた「北町楽天地」同様の事だろう…
北町アーケード自体もそれほど規模は無く、L字型の通路を50メートルちょい進んだだけで終了となる。どうやら昭和50(1975)年頃に出来たらしく、古び加減からしてもその時代のものだろうなとは思っていたが、やっぱり東武練馬はレトロ好きにとっては東上線沿線でも頭一つ分抜けてる街だと思う。