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2020年東京五輪開催で消えそうな団地「都営霞ヶ丘アパート」は都心の限界集落だった

莫大な資金を投じて行われたしぶとい招致活動が功を奏して2020年開催のオリンピックは東京に決まった。1964年以来56年ぶりの東京五輪開催決定の知らせは日本の首都東京の存在感を再び世界に示す事になるのだろうが、その華々しい話題の一方で「消えてしまうもの」がある。

それは千駄ヶ谷駅にも程近い、国立競技場の南側一帯に存在する「都営霞ヶ丘アパート」だ。昭和39(1964)年に開催された東京五輪を前に、一足早い昭和36(1961)年頃に建設されたというかなり年季の入った都営団地である。この団地が2020年の東京五輪に向けて8万人収容、総工費1300億円を掛けて建設される「新国立競技場」の予定地に入っており、団地の住民は取り壊しに伴う立ち退きに迫られているというのだ。

いわば「五輪に生まれ五輪に散る」運命にある都営霞ヶ丘アパートを訪れた。計10棟ある中層棟ばかりの団地は建設当時にはシャレオツな最先端の住まいだったのだろうが今となっては究極的にくたびれている。こんなド都心で原宿や表参道のような現代的シャレオツ最先端ゾーンが徒歩圏にある都営住宅、周囲から見るとかなり浮いている。この辺りは前の東京五輪で千駄ヶ谷の連れ込み旅館街が潰されたり、心霊スポットで有名な千駄ヶ谷トンネルが掘られたり色々あった土地なのだが…

この団地がある「新宿区霞ヶ丘町」は、団地を除いた町域全てが国立競技場や神宮外苑に含まれているため、霞ヶ丘町の人口446人(2010年時点)はすなわちこの団地の人口そのものと考えられる。築50年近くなので見た目の老朽化もなかなか厳しい所まで来ているのは明らかだ。しかも住民の半数以上が66歳以上の年金受給世代。

実際に住んでいるのも老人ばかりで「限界集落化」しており毎年のように住民が「孤独死」しているのが発見されるらしい。結構な規模の団地だとは思うが全くもって生活感には欠けている。一方で隣接する国立競技場ではジャニーズ系ユニットのライブイベントが開催され大音響の音楽が鳴り響いている。もはやこの団地が存在する空間そのものが世代の壁に囲まれた別次元と化していた。

団地のベランダを一目見ると、洗濯物も干されておらず空き家と思える部屋が3~4割くらいある事に気づく。残った住民も高齢化の末に居なくなる事もあるが、立ち退きが決定した場合の移転先の団地というのは未定との事。同じ新宿区のマンモス団地「戸山ハイツ」も巨大な老人ホームと化しているが、あの辺の空き部屋でも紹介されるのかも知れんね。

古い団地にはつきものの給水塔もある霞ヶ丘アパート。その真下は児童公園だが、案の定遊んでいる子供の姿はない。再びの東京五輪開催に伴う立ち退きは時代の流れで致し方ないものだと思えるが、一部の反五輪運動団体がいつもの調子で都営住宅の住民の立ち退きに猛反対している。

明治公園側の区画にも「かすみ児童遊園」という小さな児童公園が整備されているのだが、遊ぶ子供も居なくなると手入れが行き届かなくなるもので雑草まみれになって明らかに使われていない。

今となっては団地の住民はただ静かに余生を過ごしているばかり。団地の敷地内は住民の細やかな楽しみであろう自家栽培の野菜や果物が植えられていて季節柄柿の実が鈴なりに実っていた。

周囲から孤立するかのように存在する都営霞ヶ丘アパートだが、6号棟の1階部分は下駄履き店舗が入居する商店街となっていた。しかしこのただならぬ終末感。テント屋根もベリベリに剥がれて骨組みまで錆びまくってます。黒いビニールテープを張り合わせただけのようなヘタクソな文字でコカコーラの看板に「外苑マーケット」と書いてあるのが見える。

さらに外苑マーケットの上の6号棟住居部分。長年の生活がよくにじみ出ている。ベランダに建て増ししていたりする辺りが尚更DIY感漂っていて素晴らしい。ベランダ側に勝手にトタンやサッシまで取り付けて居室スペースを増築しているお宅まである。

都営霞ヶ丘アパート住人御用達、気になって仕方がない「外苑マーケット」だがその看板もレトロ過ぎて涙が止まらない。「フレッシュ!野菜・果物」というのがまた心の琴線を刺激する。全然フレッシュじゃないですがこの空間。数百メートル離れた所に一応スーパーはあるようなのだが、ご老体な住人にとって日常的な買い物はなるべく身近にある所で済ませたいものだ。

現役営業中の青果店、「市場の日」実施中で野菜や果物がお安くなっているようです。昔ながらの手書きの張り紙も昭和を今に引きずる独特の哀愁を漂わせている。

昔は看板の通り肉屋や魚屋、クリーニング屋まであったようだが、次々廃業してしまったのか我々が確認した限り営業しているのは入口の八百屋一軒だけだった。まるで地方の限界集落にあるショッピングセンターのそれと同じテンションだ。こんな風景が東京のど真ん中にまだ残っているんですよ。東京五輪開催の2020年までには十中八九見納めとなりそうなので、気になる人は早めに見に行きましょう。

※追記:霞ヶ丘アパートは2016年中に解体工事が行われ現存しないようです。ちなみに過去に遡りますが、当団地の住民を名乗る者からメールやフェイスブック上で当記事を削除せよと脅迫めいたクレームが来ましたが、当方は意味不明な要求には一切屈しません。確かに団地の住民であって何十年その場で暮らしていても、そこは都有地であって、一個人の私有地ではない。

限界集落
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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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