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漫画家赤塚不二夫が愛した街・西武新宿線「中井」駅周辺のくたびれた街並み

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神田川に妙正寺川、石神井川といった川沿いの低地を縫うように走る西武新宿線沿線の街並みはひたすら地味で、21世紀の現代においても“小さな石鹸カタカタ鳴った”ようなリアル「神田川」(by 南こうせつとかぐや姫)状態のくたびれた街並みばかりが連なるイメージしかないのだが、そんなイメージ通りの街があるとしたら、高田馬場から二駅先にある「中井」だろうか。

という訳で西武新宿線中井駅前へ。各駅停車しか停まらないローカル感全開の駅だが、西武新宿線の準急以上の電車は鷺ノ宮まではノンストップである。駅の頭上を山手通りの跨線橋が走っているが、駅自体は隣の下落合同様ド平面、駅前にはかったるい踏切がある後進路線らしい佇まい。それでも最近西武新宿線も漸く地下化工事(中井-野方間約2.4キロ)が進められており現在は中井駅も駅改札だけが地下化している。

それに中井は都営大江戸線も走っている点で他の街とは違い優位性を感じられる。大江戸線の駅もすぐ近くにあるっちゃあるのだが、西武鉄道の駅改良工事にも関わらず両者の乗り換えの利便性は全く考慮していない。乗り換えには地上を歩かされる羽目になる。

そして中井駅前で最も象徴的な光景と言えば、駅前一等地に深いコンクリート護岸の妙正寺川が流れており、さながら駅前人工渓谷とも呼べる光景を見せている事である。隣の下落合とか、あとは沼袋や鷺ノ宮といった駅前も蛇のように流路をうねらせる妙正寺川が同様に流れている。治水対策もあっていずれも親水遊歩道のような呑気なものは一切置いていない。

中井駅前にある二つの商店街

隣の下落合駅前は商店街すらない惨憺たる光景を見せていたが、こちら中井の駅前は決してそんな事はない。大江戸線の駅もあるという事で人通りもそれなりに多く「中井商友会」「中井商工会」と似たような名前のパッとしないネーミングの2つの商店街が駅周辺に広がっている。

とは言え中央線沿線などと比べるとやっぱり地味な感じなのは否めない。独身世帯には使い勝手の良い個人経営の定食屋や松屋だの日高屋だのといった外食店舗が割と不自由しない程度にはある。あと徒歩5分強の位置に地下鉄東西線落合駅もあるので、実は鉄道路線が3つも使えるという地味に便利な街である事も付け加えておこう。

西武線沿線ではお馴染みの地味な中華料理チェーン店「福しん」の店舗も中井駅前一等地に店を構えている。総じて住民の単身世帯率の高い街に「あなたの街の食卓です」と堂々アピールする「福しん」があるんですが、どの店舗もU字カウンター席がデフォルトなのでご家族連れ向けではない。

中井と言えば外せない大漫画家赤塚不二夫

駅前商店街の一つ「中井商工会」の垂れ幕にも描かれている昭和の漫画「天才バカボン」のバカボンのパパのイラスト。中井の街を語るには外すことができない昭和の大漫画家・赤塚不二夫が長年過ごしてきた街として有名なのである。2008年の没後も中落合一丁目にフジオ・プロダクションが現存している。

パチンコ屋の壁にまで天才バカボンのイラスト(初代や元祖ではなく平成天才バカボンの方ですが)が使われる街、中井。

とは言え最近の平成生まれにはバカボンのパパを見せてもピンと来なさそうなジェネレーションギャップを感じる昨今ですが、やっぱりアレですか?今時の腐女子とか言ってる連中には「おそ松さん」出さないと駄目なんですか?

そんな赤塚不二夫が生前愛し続けていたという洋食屋「ぺいざん」はバリバリの現役。永井荷風が死ぬ間際まで京成八幡駅前の大黒家のカツ丼を食い続けていたように、赤塚不二夫にとっては行きつけの店だったらしいんですが、西武線沿線沿いってこんな感じの昔ながらの渋い佇まいの「街の昭和な洋食屋」が平気で生き残っている上に常に店の中が繁盛しているのである意味凄い。

そのメニューの数々を見るも、肉と揚げ物中心でガッツリという所も「昭和の洋食屋」の特徴と概ね共通している。有名過ぎるお店故に既に「例のまいうー」来訪済みという事でしたので、とっとと先に参りたいと思います。

それにしても、ぺいざんの真向かいの居酒屋「狭山」も外観が渋すぎて泣ける。赤塚不二夫が「天才バカボン」のヒットでブイブイ言わせていた時代と殆ど街並みが変わっていないのではなかろうか。

路地を抜ける手前の角にある寿司屋「白雪鮨」も店の玄関先に枝垂れ柳が植えられていてこれまた渋い。中井駅周辺で最も雰囲気の濃厚な、非常に小さな飲食街である。

さらにぺいざんの数軒隣にある居酒屋「権八」の店先も赤塚不二夫熱が未だ以てアツいんですが…

死後もここまで愛され続け、タモリや様々な芸能界の人物とも繋がりの深いそれほどの大漫画家って、漫画やテレビアニメが国民的娯楽だった昭和の時代ならまだしも、数あるサブカルの表現手段の一つでしか無くなり漫画家アシスタントが薄給過ぎてブラックだと噂される現代の日本に果たして登場するんでしょうかね。

忘れちゃいけないんですが中井は染物で有名な街なんです

今時「西武新宿線の中井」と聞いてもマイナー過ぎて何の事やらといった所だが、神田川や妙正寺川が流れる中井から落合にかけては、昭和初中期の時代に一大染色産業地帯として栄えていた過去がある。現在もその歴史文化を絶やさぬようにと毎年2月には妙正寺川にカラフルな反物が掲げられる「染の小道」というイベントも開催されている。

また街ネタレポートが長くなりそうなので続きは次回に持ち越します。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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