記事を人に教える

お台場・羊蹄丸「青函ワールド」で見る青森駅前の情景 (2)

記事を人に教える

【キュレーションメディア等、他サイトへの記事中の文章・画像無断転載厳禁】

2011年9月末に休館する「船の科学館」の別館として長らく展示されてきた青函連絡船「羊蹄丸」の内部に作られた異空間、昭和30年代の青森駅前の情景をリアル過ぎる再現度で表現した「青函ワールド」。
30-766.jpg
民放テレビ局の軍門に下り、今やお洒落でメジャーな観光地となったお台場の片隅に残っていた強烈な再現空間は、船の科学館の休館という形で見れなくなってしまう。羊蹄丸の譲渡先を探している段階で、譲渡先が見つからなければ解体を含めて検討するとの事で、再開の実現すら消える恐れもある。
これだけの珍物件が何事もなく消えてしまうのは非常に勿体無いし歯痒いので、少しでも「青函ワールド」のヤバさを知って頂くべくレポートを公開する。


30-755.jpg
昭和30年代の青森駅に着くなり見かけるのは、重そうに荷物を担ぎながら連絡船へ急ぐ親子の姿。年端も行かぬ子供ですら親の仕事に駆り出されるのは当たり前。
30-756.jpg
青函ワールドのリアル過ぎるマネキン人形に恐怖すら覚える。担ぎ屋の母の苦労がにじみ出ております。
30-757.jpg
昭和30年代の青森駅の一角には、この担ぎ屋の仕事を自由に体験出来るコーナーがある。ベンチに置かれた泥棒みたいな唐草模様の風呂敷包みは3つ並べていて右から40キロ、60キロ、80キロ…今どきの男でも無理っぽいです。昭和の人、強すぎ!
30-758.jpg
思えば青森駅長を名乗る張り紙にあったこの説明書きにも「青函ワールド」を作った人間の執念とも思えるオーラが垣間見えている。
「昭和三十年頃・かつぎ屋のお母さん達が家族をささえるために、骨をきしませながら背負ったお米です。あなたには背負うことが出来ますか!!試して下さい。」
あなたには背負うことが出来ますか!!と面と向かって言われると、背負える自信ないです、精神的に重いです…ひ弱な現代人が調子に乗って真似するとギックリ腰を起こす恐れがあるので、慎重にどうぞ。
30-760.jpg
青森と北海道の間を大量の米などを積んだ荷物を担いで渡り、売りさばいて生活資金に替える「担ぎ屋」のオバハンは非合法的な存在ながらも多数居た。底辺層が生きていく為の手段としては有効だったのだ。
30-764.jpg
今も青森県の雇用状況は深刻で、失業率は沖縄県に次いで高い。既に東北新幹線が新青森まで開通した今、若い世代は軒並み東北を捨てて上京する流れがさらに強まり、人口流出が加速するだろう。
30-762.jpg
今さすがに青森ではいなくなったが、韓国の釜山と日本の対馬や下関、および大阪民国の国際フェリーターミナルとを結ぶフェリーにはポッタリと呼ばれる同様の運び屋が多数おり、生活物資などに紛れて闇タバコや地下銀行の現金なども不正に密輸している。
30-754.jpg
駅のベンチにどっしり腰を据えながら握り飯を頬張る担ぎ屋のババアもまたリアル。肥満気味の身体に加えて頬に米粒をつけてみっともない姿を露わにしていた。
30-759.jpg
駅構内の売店の再現。キオスクじゃなくて「鉄道弘済会売店」になっている所が今とは違う。売っている品物も昭和30年代のそれと全く同じものを再現したそうだ。
30-763.jpg
映画のポスターに加えて色々な種類のポスターが貼り出された掲示板も。こういうのもどこで入手して持ってきたものなのか不思議に思う。下手な映画のセットよりも精巧に作られている。
30-765.jpg
商店街の看板と、青森の保養地・浅虫温泉にある温泉旅館の看板。隅々まで芸が細かい。中年以上の青森県出身者は一度見に来る事をお勧めしたい。
30-767.jpg
さらに駅構内のレストラン。レジカウンターも昭和30年代そのまま。マスターが困り果てた顔付きをして後ろを振り返っている、その先には…
30-768.jpg
カレーを途中まで食べた挙句呑んだくれてテーブルに突っ伏して眠りこけてしまった酔っぱらいのオヤジがいた。徹頭徹尾一貫して暗い陰を感じさせる人物描写が多い。
30-769.jpg
そして青森駅から夜行列車に乗って上野駅へ向かう上京者の家族。何故か左目に眼帯をつけた紳士的ないでたちの父親と暗い表情の母親、そして窓ガラスに鼻っ柱をベッタリ付けて外の景色を見つめる貧乏臭そうな子供。ワケありな一家のようですよ。
30-761.jpg
最後に青函連絡船に乗って、誰かに別れを告げるかのごとくデッキから身を乗り出す女性の姿。凍えそうなカモメ見つめ泣いていそうな、どこか悲壮感漂う女性。北海道という新天地でどんな人生を送るのか…もちろんバックに流れるBGMは「津軽海峡冬景色」。
昭和の大フィクサー笹川良一氏亡き後の日本財団の傘下団体で施設を管理する「日本海事科学振興財団」も、年間3000万円掛かるという羊蹄丸の管理を続けるのが難しいといった状況で、事態は深刻だ。
ともかくこれだけ再現度の高い「青函ワールド」は9月末で見納めになってしまう事が決まっているので、とにかく少しでも見たいと思ったら行くべきである。入館料も特別価格で200円になってるし。お台場の船の科学館へ急ぐべし。
参考記事
「船の科学館」9月末で休館 再開は未定 羊蹄丸は譲渡先募集へ

津軽海峡冬景色/能登半島
石川さゆり
テイチク (2005-12-07)
売り上げランキング: 15346
青森産りんごサンつがるA大玉16個5K箱入
株式会社 山文白戸
売り上げランキング: 4391
The following two tabs change content below.
東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
タグクラウドから記事を探す
DEEP案内編集部のnote

知ってました?DEEP案内編集部のnote

ネット上で大っぴらにするのはちょっと憚られる内容の記事は「DEEP案内編集部のnote」で書く事もたまにございます。全て100円からの有料記事となっておりますので興味のある方のみご利用下さい。

記事を人に教える

トップへ戻る
Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.