【千代田区】日本最大の古書店街「神保町」を歩く(2009年)

千代田区

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神保町書店街をうろうろしていて気づいた事はないだろうか。一風、ビルが立ち並ぶオフィス街のように見えて、所々に近代化とは無縁のレトロ建築が残っていることに。そんな建築物の数々に目を留めると神保町の街歩きにおける面白さがまた一つ増えること請け合い。

専大前交差点南側の集英社ビルに隣接する、うなぎの今荘。昭和8(1933)年築。神保町にあるからあまり思い浮かばないのだが、よく見ると遊郭チックな建物である。

その東側にある中華そば成光。建造時期不明。古い中華料理屋というのはもっと店全体が油ギトギトになっているものだが表を見る限りは意外に小奇麗。

靖国通り神保町交差点と専大前交差点の中間に位置する、映画・演劇関係の古書を扱う「矢口書店」が入った建物は昭和3(1928)年築。すなわち築80年。

他の建物も挙げるとキリがないくらいにレトロ建築が残されている神保町エリアだが、先にも述べたように戦時中に米軍が「歴史的・文化的に価値の高い書籍が集まる神保町は空爆禁止区域に指定」としたため、戦災を免れている事が大きな理由である。

白山通りに入ると日本最古の予備校として開かれた「研数学館」のビルが立派に建ち続けている。ここも昭和4(1929)年築で築80年以上の建物だ。

大学受験生の減少を理由に2000年に予備校事業を停止しているが現在も財団法人として存在し、事務所が置かれている。建物南側はなぜか「居酒屋和民」になってしまっているが、日本有数の文教施設の風格も居酒屋に間借りさせてしまっては形無しではなかろうか。

「研数学館」の建物がある白山通りを東に入ると「カトリック神田教会」。昭和3(1928)年築。国・登録有形文化財。こうして見てみると神保町界隈のレトロ建築には昭和初期の建物が非常に多いことが分かる。

近年では耐震偽装やら乱開発やら問題も多く、ひたすら営利主義的で無味乾燥なコンクリート建築が溢れかえり、街並みが没個性化していくばかりの日本。

なぜ人はレトロ建築に魅せられるのか、それは現代建築の貧困的発想では思いつかないデザインと、80年以上経過しても色褪せず生き続けているレトロ建築の力強さに人々が心惹かれるからであろう。

レトロ建築というとまた違うが、神保町の路地には古めかしい民家が沢山残っていて、今でも生活の息吹を感じる。

神保町のある「千代田区」と言えば都心も都心、あまりにオフィス街化しすぎて土地高騰のため住民票人口はわずか45,000人少々という全国的にも珍しい区だが、その45,000人の暮らしは今もなお続いているわけで。

古書店街・神保町と言えばすっかり文教地区だと思ったら、駅前交差点の裏通りには凄まじくオンボロ建築のゲームセンターが澱のようにこびりついて残っていた。…レトロ建築というかレトロゲームセンターだなこれは。

そのゲーセンの名は「ゲームコーナー ミッキー」。あの世界一版権の高い某ネズミの名前を店名に用いるとは今どきのセンスではないぞ。

この佇まいからするとスペースインベーダーが大ブレイクした以前から存在していたかのようなボロさである。古書店街・神保町の中にあってこの場所だけはまるで異界。しかも驚くのはこのご時勢にあって全ゲームオール50円をいまだ貫いていることである。まさに東京最後のパラダイス。

ちなみに現在はパチスロコーナーが徐々にスペースを広げている模様。

店の裏手に回ると、建物のボロさがさらに伝わります。一体いつからこの場所でゲームセンターを営業しているのだろうか。まったくもって謎である。

※ゲームコーナーミッキーは2013年3月で閉店してしまいました。


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