【川崎市】川崎臨海部・池上町に残る不法占拠地帯コリアタウン「群電前」探訪 

川崎市川崎区

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「池上町・群電前」にはおよそ500世帯が住むと言われている。その殆どが木造低層住宅やボロアパートの住人であり、多くは戦前に日本鋼管の軍需工場建設の労働力としてこの土地にやってきた在日コリアンの子孫であると思われるが、近年は在日コリアン以外の普通の日本人、それに東南アジア系の外国人労働者も混在するようになってきたともいう。

細く入り組んだ路地は消防車も入れないため、ひとたび地区内で火事が起こるとどえらいことになるだろう。どう見ても消防ホースが届かない場所がある。それでも地区全体が丸焼けになるような事態は今のところ無いようだが。

池上町にアパートがやたら多いのは「ウトロ」や「伊丹中村」には無い特徴である。あまり生活の臭いはしないのだが、やはり住人は居るようである。干してある洗濯物を見ていても男の一人住まいばかりのようだが…

放置された廃冷蔵庫に書かれた落書きがいかにも下町スラム的センスで哀愁を漂わせる。

昼間訪れているからこそ普通に歩きまわれるものだが、これが夜になるとさぞかし不気味な風景に変わることだろう。あくまで不法占拠された土地の上にある「村」なので、行政が積極的にインフラ整備をやるはずもない。それは関西のウトロや伊丹中村にも言える事である。

池上町は集落自体の規模も大きく、まるで迷路のようである。殆ど公に知られる事もなく川崎重工業地帯の底辺を生きる人々とともに脈々と流れていたこの地区の歴史を刻む古いバラック住宅群は次々と主が消えて廃屋に変わりつつある。

今の日本でこれだけバラック家屋が密集している都市集落を見られる場所は池上町以外にない。トタン板の外壁に原色系のペインティング。まるでアジアの発展途上国みたいだ。

細い路地のど真ん中に一軒だけ「道飛館」という焼肉屋がある。ここが池上町内に現存する数少ない飲食店である。今の日本で肉を焼いてタレを付けて食うスタイルの「焼肉」の発祥となった店の一つと言われている。場所柄や歴史性を見てもここがまさに在日コリアン文化のルーツといった趣きである。

道飛館の店先には干し肉らしき物体が吊るされている。昔から続けられてきたであろうマイノリティの食肉文化の一つ。昔の日本人が食わなかった内臓肉をタダ同然で手に入れてホルモン焼きが作られ、保存食として干し肉が作られたのである。

焼肉屋の前を通り過ぎると、池上町の南端となる桜堀運河に面した道路に出る。池上町からすぐ南側一帯には日本鋼管(現JFEスチール)の広大な敷地が見える。この周辺には、川崎港を一大工業都市に変えた「セメント王」こと明治の実業家・浅野総一郎に因んだ「浅野町」「浅野駅」をはじめ浅野家の扇の家紋に因んだ「扇町駅」など現在でも随所に浅野財閥の痕跡が見られる。

ここにも「道飛館」の看板がさりげなく置かれている。こんな場所に焼肉屋があるなんてよほどのマニアが現地民でしか知りえないことだ。もっとも最近はネットで噂を聞きつけた物好きな人間がわざわざここまで食べに来る事が増えているようで。

それにしても、ドラム缶に貼り付けられた看板が印象的すぎ。

「不法侵入・ゆすり・たかり・恐喝・押売り 見たり聞いたら 川崎臨港警察署暴対本部へ」

どこの世界でも貧困と差別の中から暴力は生まれる。暴力団等の非合法勢力とも背中合わせに生きてきた地区の歴史を物語るかのような看板である。

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