こんな東京の外れにもあった梵寿綱建築!板橋区高島平・西台駅前「ルボワ平喜」

板橋区

早稲田大学近くにある「ドラード早稲田」や代田橋にある「マインド和亜・ラポルタイズミ」といった珍建築群を続々東京に建てた「日本のガウディ」の異名を持つ建築家・梵寿綱の物件を地道に巡っている当取材班ですが、東京の外れも外れ、都営三田線西台駅の近くにも同氏の建築物があり以前から気になっていたが、西台なんて地の果てにそうそう行く用事もなかったゆえ、今頃になってようやく足を運んできたのだ。

東京都内に数ある梵寿綱が手掛けたビルの中でも、西台駅西口改札に程近い板橋区高島平一丁目の高島通り沿いにそびえるこちらの「ルボワ平喜」というマンション。外観からすると奇抜さの欠片も感じさせないフツーっぷりで、ごく普通の高層マンションにしか見えないんですが…

よくよく見ると一階部分の店舗の上から何やら親指のような巨大なオブジェが見えるのである。今時で言うところのSNS的な「いいね!」の親指の先でしょうか。

「ルボワ平喜」は11階建ての賃貸マンションである。梵寿綱建築があまりに前衛的すぎるのでつい年代を忘れそうになってしまうのだが、ここも昭和52(1977)年築と既に40年近い年月が経っていることになる。数ある梵寿綱建築の中では割と初期にあたる作品だ。外壁の緑色の部分に草花をあしらったレリーフも刻まれているが、これもいちいち模様が異なる。芸が細かい。

建物横側には同じ緑色のレリーフが壁一面にびっしりと描かれている。池袋や早稲田や代田橋などにある同氏のビルと比べるとやはり土地柄を考慮して地味めのデザインになってしまったのでしょうか知りませんけども。

南池袋「ルボワ平喜」の兄貴分でした

高島通りに面する側の一階部分は店舗テナントとなっている。その一番左側の店舗がビル名にもある酒屋「平喜屋」となっている。見た目にはごく普通の酒屋でしかないが、池袋や板橋区を拠点とする酒卸業者で、ここは平喜屋の板橋支店という扱いだ。

そう言えば南池袋公園の近くにあった梵寿綱建築も全く同じ「ルボワ平喜」という名称のビルである。池袋のそれもやはり同じ平喜屋の物販倉庫となっていて明らかに兄弟の関係である。

高島通り側にマンションのエントランスがある。さすがにこの部分は梵寿綱らしい怪しい世界観が凝縮された佇まいとなっている。中央に円形のホール、両サイドの壁で囲んだ一画だけが年代を帯びて程良い色合いになった赤煉瓦が積まれている。ここがマンションの玄関口でなければ、もはやファンタジーRPGの世界にしか思えない。

池袋のルボワ平喜にも「斐醴祈:賢者の石」といささか中二病掛かった作品名がつけられているが、西台のルボワ平喜には「秘羅禧・鎮守の杜」という作品名が付けられている。建築年代的にはこちらの方が2年ばかり早い先輩格ということになる。

傍らには何ら合理的な用途を成さない謎めいたオブジェが顔を覗かせている。70年代建築特有のなんでもアリ感が随所に盛り込まれている。

足元にある「1977春」の文字が刻まれたタイルは一般的なビルで言うところの「定礎石」にあたるものでしょうかね。もう40年も前に建てられたマンションなんですよ。21世紀は永遠に70年代という時代の勢いにはかなわないのだろうか。

マンションのエントランスにお邪魔する。円形のホールは右側に集合ポストがあって左側に住居エリアへ続く共用部分へ通ずる。マンションというよりどこかの教会のような雰囲気すらあるのは頭上のステンドグラスが施されたはめ殺しのガラス窓のせいか。

そんな西台駅前の「ルボワ平喜」、賃貸物件サイトで出ているのは広めのワンルーム(約43㎡)、全面リノベーション済の物件が家賃8万4千円、という相場なので代田橋や早稲田なんかに比べたら相当お安い板橋区プライスとなっている。梵寿綱建築と下町暮らしがお好きな方はいかがでしょうか。


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