さいたま市岩槻区いわくつきアウトロード (1)

首都東京は人口飽和状態にあって土地が無いなどとはよく聞く話だが、それも埼玉という隣の土地の存在を考えると嘘のような話だ。とっくに埼玉は東京のベッドタウンとして開発されまくっているが、それも鉄道が走っている街に限った話で、ちょっと街を外れると笑ってしまうくらい広大な田畑が続く田舎臭い風景に巡り会える。
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我々はたまたま訪れた越谷市と岩槻区境にある広大な田園地帯を見る機会があった。越谷駅からバスに乗ってベトナム寺院「南和寺」を見物、それからトトロ公園を見て浦和美園駅まで徒歩で回ろうというルートの途中だ。
東京23区至近にありなおかつ政令指定都市となったさいたま市だが、街外れにはひたすら地平線まで続く田畑が残る。まだまだ土地が余りまくりである。


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越谷市側にあるしらこばと水上公園、南和寺から外れると住所はさいたま市岩槻区に変わる。この付近は終戦直前まで本土決戦に備えて急ごしらえで整備された越谷飛行場の跡地。公園から南側に伸びる道路沿いには工場が連なっているが、そこが滑走路跡で、そこから外れると見事な田園風景が現れる。
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この付近は田圃に混じって未整備の区画が随分残っている。雑草まみれの土地に出来た溜め池。突貫工事で作られた飛行場は結局一度も戦闘機が飛び立つ事なく終戦を迎えたという。
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一部はよく分からないガラクタや廃棄物処理場、ゴミ捨て場になっていて鉄柵で囲われている箇所もあって色々と怪しい。
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やっぱり不法投棄が後を絶たないらしく行政による注意看板も置かれていた。この付近は工場かガラクタ置き場か田畑しかなく人の住んでいる民家は近くにはない。
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昼間でも人通りがない田圃のど真ん中。拉致られても誰にも助けを呼べそうにない。
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田圃の向こうを見渡すと、そこには建設中の東京スカイツリーの姿が綺麗に見える。周りがこんなド田舎な風景なのにどれだけ東京に近いのか、ある意味新鮮な風景だ。
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公園西側の車道と交わる辺り。不自然に道路が封鎖されているが金網を破って侵入された形跡がある。夜中はさぞかし地元ヤンキーの遊び場になっているのだろう。
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鉄柵に囲まれ封鎖されているのは何の為だろうか分からないが、車道から見える位置にはまんべんなく「カードでお金」「車でお金」の広告が貼りつけられていた。これぞ埼玉の原風景。
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その先も延々と田畑が続いていた。際限なく膨張を続ける首都東京の人口をカバーするべく、この土地もいずれはアパートやマンションが立ち並ぶ時期が来るのだろうか。
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田圃の向こうに見えるドーム型の建物は2002年日韓共催ワールドカップの時期に作られた埼玉スタジアム。言わずと知れた浦和レッズのホームグラウンド。試合が行われる時にはレッズサポが殺到し熱狂する傍らで、都市と農村のせめぎ合いが繰り広げられている。
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車道に沿って歩くと国道463号バイパスに出るが、そこに至るまで殆ど民家が存在しない。
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合併されてさいたま市の一部になってしまったが、この場所は人形の街「岩槻区」。とはいえ南の外れにあるため東武野田線岩槻駅や市街地へは遠い。
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国道寄りの地帯に差し掛かると何やら怪しげな工場が増えてくる。日曜にも関わらずガチャガチャうるさく稼働している工場の敷地を通りがかると、数人の外国人がスクラップされた鉄くずや自転車の部品、ガラクタなどを仕分けしているようだった。
浅黒い肌の外国人労働者は中東系だろうか、近くには家族と思われる親子連れが軽自動車の中で父の仕事の終わるのを待っているかのようだ。知られざる東京辺縁地帯における多国籍社会の一端を垣間見た気分だ。
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スクラップ工場の前をさらに進むと、高圧鉄塔の傍らに夥しい数のカラスが乱舞している光景を目の当たりにした。カアカアと泣き叫ぶカラスの多重奏は異様そのもの。
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一体何の工場があるかと思って覗き見たら、墨田区でも見かけた豚革なめし工場だった。伝統的に墨田区の一部でも操業を続ける工場が残ってはいるが、やはり業種が業種なので広い土地を求めてか郊外に移転した工場もある。やはりこの工場でも外国人と見られる男達が働いている。
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思えばこの辺りの土地が辛うじて首都東京の都市圏の最も縁に位置している場所であることを感じさせられる。
何もない田園風景と土着の農家が続く田舎、それがオールドサイタマだとすると、そこに東京から流れてきた工場や人が住み着き変容した街がニューサイタマである。都心に通勤する事はないが、こうした場所で住んで働く人々も広範な意味での埼玉都民と言える。
まだまだ東京辺縁地帯は強欲に人々を飲み込み膨張を続ける事だろう。

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